ヴィスワヴァ・シンボルスカ 『終わりと始まり』を近ごろまた、毎日のように持って歩いている 『瞬間』が、枕もとに置いておきたい一冊なのに対してこちらは、開くことがすこし怖い詩集わたしにとっては、ずっとそう それでも、何度でも開いて、なんて雄弁な…

ネイリストさんのところへ行った帰り道本屋に立ち寄ると、欲しかった本がひっそり置いてあった 気がついたらAmazonでは在庫切れになっていて、ほかのオンライン書店を探そうと思っていたところ実物を見て買うことができるなんて、と開いてしばらく見とれ、迷…

金木犀の季節 今年は、たしか先々週のある日からいっせいに金木犀が香りだしたそれから数日は空気そのものが匂い立って、いつもの道が塗り変わったようだった なにを着たらいいかわからないとぼやきながら、薄く軽やかな秋色のブラウスで歩くまだまだ生温い…

半分休みの水曜日事務所へ出かけ、ゆったりデスクワーク 取引先への連絡などをすべて終えてとりあえず買ってきた缶からマグにコーヒーを移し、ソファがわりにすることにした寝椅子に座るそういえばこれ、工芸学校でもよく着ていた服だ、と作業着が変わらない…

重なるにわか雨で葵祭の行列が延期になった、きょう 一日の仕事を終えて、緑の葉が光る並木道を歩くずいぶん日没が遅くなり、日々享受する景色は、きらきらと明るいものになった 雨上がりの土の匂い、夏の形に近づいている雲葵の季節の瞬間瞬間は、小さなわ…

ストックホルムを訪れるたび、かならず立ち寄る本屋がある これまで、たくさんの時間をここで過ごしてたくさんの本をここで買ってきたスウェーデン語がどんな段階にあっても、あらゆる時や場所につながるようなこの本屋は本を、言葉を、自分自身を楽しむ術を…

新しく借りた、小さな事務所の鍵を受け取り喫茶店でホットケーキを食べて自分の店を開ける時間まで、桜並木を歩く 6年目も終盤にして、ちょっとした変化大学を卒業するともう“門出”はないと思っていたけれどこういうささやかな船出は、わたしにもある 店の鍵…

静謐な佇まいに惹かれて手に取ったハン・ジョンウォン『詩と散策』 驚き、という表現が正しいかはわからないけれどこの本に出会って三日、消化しきれない感情が、ふつふつと湧いてくる本当に心を揺さぶられるものと出会うと、狼狽えてしまって、説明ができな…

『わたしは』と、月が言いました。『前にポンペイの話をしてあげたことがありましたね。あれはいきいきと生きている都市の列のなかにおかれた、都市の死骸です。だがわたしは、もうひとつ別の、もっとめずらしい都市を知っています。それは都市の死骸ではな…

山茶花の季節大通沿いの、背の低い植え込みも、あざやかに花をつけている オンラインショップの仕事の合間に、美容室へ祝日で父がめずらしく家にいたので、贅沢に送り迎えをしてもらう 家に着いた瞬間、はい、1500円になります、と言われたので笑って、父を…

お盆休みウィーク積み上がるデスクワークと雑事を片づけようと意気込むも、増える速度のほうがはるかに早くてどうにもならず、さらに積み上がる きょう一日をまるまるパソコンの前で過ごし、お問合せなどお客さんに関わる部分は、なんとかかんとか追いついた…

編み物のクラスのため、出かける普段は月に一回なのだけれど、先月ぎっくり腰で出られなかったので、振替 首まわりを全部編み直した姪のセーターを先生に見せ、よく頑張ったねえと労ってもらういくつになろうとも、どんなに些細でも、時間をかけてやったこと…

屋根に叩きつける雨に不安になって上げていないブラインドの隙間から、外を覗く暗く不穏な空の下、ベランダが朝靄の湖のようにぼんやり光る 昔、朝方に友人に叩き起こされ、霧がかかる狭山湖に連れて行かれたことを、ふと思いだすあの頃は、ドライブに行こう…

ヴィスワヴァ・シンボルスカの晩年の詩集このところで、出会えてよかったと、もっとも強く思ったもののひとつだ ここはいま九時三十分。なにもかもが本来の場所に収まり礼儀正しく和している。谷には小川が小川として流れる。小道の姿の小道が永遠から永遠へ…

ヒルマ・アフ・クリントのドキュメンタリー映画が日本でも公開されるのを前に、本を読み直し始めた もう三年近く前だろうかアーランダ空港の売店のような本屋で、ひときわ目立つこの本を見つけたグッゲンハイムでの展示が話題だったので、名前は知っていて興…

目の前のことに集中すべく、ぐっと力を入れて立つ、金曜日 今週もまだ、お客さんは戻らず確定申告の準備をしながら、在庫の整理をするまるでカラクリ屋敷のような店 昔、東京で働いていたときも店の在庫をあらゆる場所に置いていたなあ当時は、什器として使…

昨年末に出たばかりの、スティーヴンソンの子ども詩集を自分の店の書棚にも この詩集のなかに、もともと原詩がとても好きだった、“鏡の小川 Looking-Glass River”という一篇がある風が水面を撫でたのか、カワウソや魚があらわれたのかふと、波紋が連なって、…

二週間ぶりの休み 夏のような気温と、秋らしい光と風に戸惑いながらしばらく来れていなかった小径を歩くシオンなど、野菊があちこちに咲いていて、それだけの時間が流れたのだと、ぼんやり納得する やわらかく深い、薄紫の花びらに思うのは“追想”という花言…

いつものカフェで偶然出会った、熊井明子のエッセイにふっと、トルーマン・カポーティの逸話が出てきた パリで、コレットの部屋を訪ねたカポーティは彼女のペーパーウェイトのコレクションに釘づけになった気づいたコレットは彼に、白バラが沈んだ美しいひと…

ペール・ペッテルソン『馬を盗みに』パヴェーゼやヤンソンと並び、この季節になると読みたくなる本でこの頃、原書もあわせて、またすこしずつ読み直していた 原題はノルウェー語で、Ut og stjæle hester老境にさしかかる主人公が孤独を抱えて移住した土地で…

石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』ルシア・ベルリンを目当てに買った6月号の「群像」で夢中になって読んだ作品 その後、芥川賞の候補作になっていたことを知らず(!)受賞のニュースを聞いて、今月単行本になっていたことを知った 細かく書き込み線を重ね…

深夜に取っていた、自分のちょっとした勉強の時間を早朝に移してみている 時差の関係で、夜にそれなりに仕事をしなくてはいけないのでずっと完全な夜型で過ごしてきたもののなんとか、変えられるところから変えないといけない、と不味すぎる薬を飲む生活を経…

いただきもののレモンのお菓子とともにウェブショップの仕事 在庫を確認し、品出しをして、メールを送る再入荷したばかりのレターライティングセットは、フェイクレザーのケースをひとつひとつ組み立て、中身を収めてメーカーさんの名前が入った薄紙で包む …

関西の状況があまりにも良くなく、空き時間が増えている、わたしの店 17時でも、まだまだ明るいその後予約が入っていないのをいいことに閉め、ひとときの散歩へ 新緑は、きょうも眩しいという以外に形容しようがないほど眩しい 人生の置きどころをなくしたよ…

詰めの作業をしながら、好物のバスクチーズケーキ まだ、これからというところもあるけれどきょうは、ひとつの仕事の小さな一区切りちょっとした贅沢だ 今度は、15日までの確定申告9割がた終わっているから、なんとかなるだろうけれど2月末からほぼそのまま…

『グレーテルのかまど』の再放送8月の『100分de名著』に合わせてなのだろうけれど『モモ』に出てくる“金色の朝ごはん”がテーマで思わず見入ってしまった 金色の巻きパン、かがやくバターとはちみつマイスター・ホラがポットから注いでくれるチョコレート い…

パリ・レヴュー定期購読している雑誌は、これと、TATEの機関誌だけだ リディア・ディヴィスの、80年代のエッセイなぜ、ノートに細切れの文章を書くのか、という根源的な問いに、どっぷりと沈む 衝動、にまさる理由はないにせよ文章を推敲しながら、ほんとう…

古い版のドリトル先生ノーフォークを旅したとき、ノリッジという町の路地裏にある古本屋で、買ったもの 棚の低い場所にあったこの本をしゃがんで、丁寧に見ていたとき、イギリスの初夏らしい通り雨がやってきた 石畳を弾く水の音開け放していたドアから、ざ…

包み紙やらなにやらを本のカバーにするのが好きだ フェルナンド・ペソアの詩集にはポルトガルのお菓子屋さんの紙をかけている彼の国らしい、青い色 飄々としたペソアはざあっと吹き抜けていく風のようにわたしを、瞬間だけさらってくれる ペソアを知らなかっ…

月が出る鐘は消える通れない小路あらわれ 月が出る陸にかぶさる海はてしのないところで心臓は孤島の感じ 満月の下オレンジを食べる者いないみどり色の氷のような果物を食べる どれも同じ百の顔月が出るポケットの中でしのび泣く銀貨 長谷川四郎訳『ロルカ詩…