
百花繚乱のバラのそばで、
ひっそりと息をひそめるように咲くウツギ
今年は、きゅうに暑くなったせいか
多くの花が駆け足で、一斉にやってくる
たしかに華やかなのだけれど、
この気候のせいだとわかっているから、薄い恐ろしさが消えない
片付けても片付けてもどうにもならない店を
整えながら、半年先のことを思う
この6年、風向きの変わるたびに
棚の上のものを押さえるようにして、どうにか続けてきたけれど
また、あらゆるもののコストについて
根底から考え直さなくてはいけない
だけど、悔いを残さない、というのは
いまのわたしにしかできないことなのだ、きっと
もうすこし前のことだけれど
不思議と、なにもかもが澄んで見える日があった
どうしてだったのかは、わからない
ただ、緑が濃くなった桜並木も
川にかかる橋のうえからの夕暮れ空も
どこからか聴こえる管楽器を練習する音も
わたしをひゅんと追い抜いていく自転車の背中も
くっきりと輪郭をもって、美しかった
横断歩道を渡りながら、ふと横に目をやると
まっすぐ続く大通りの先に、小さく京都タワーが光っていた
子どものころは、怖かった白いタワー
再放送されていたアニメ『ガンバの冒険』に出てくる、
イタチの“ノロイ”を重ねていたからだ
夜には、タワーに見つからないように、車のなかで隠れていたな、と
何年ぶりかで思いだした
時間をつなぐような大通りに、連なる車のヘッドライト
タワーは、あの頃のままの姿で、そこに立っている
抽象的でも、残しておきたい断片
後から読み返すと、きっと過渡期の自分がいる
ひとつひとつ、雑にしないでおこうと思うほどに、
より慌ただしくなる、5月
力を入れると手のなかで潰れてしまうかけらを、
諦めきれずに、持っている






