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世は三連休

梱包などもさることながら、
今週はとくに、デスクワークの量が凄まじい
いただいたバターサンドを齧りつつ
ひとつずつ、リストの項目を消していく

デスクから見える、中庭の小さな空と
遠くでひびく笑い声

ふと、意識が
自分自身から離れるような感覚に陥る

 

イギリスは、引きつづきロックダウン中
願っても願っても叶わないことばかりで
いまだ底が見えない

直接的、間接的にコロナの煽りを受けているわたしの仕入れは
ここに来て、春より納期がめちゃくちゃに
取引先のなかには感染してしまった人もいるので、
とにかく、みな無事なら、それでいいんだけれど


そんな情勢の中、
新しい取引先からの荷物が、ようやく日本の検疫を通った
8月からずっと手がかかっていたので
ただただ、ほっとした

しかし、荷物の詳細情報を見ていたら
14個口という記載があり、もはや笑うしかない
14!?!?

 

近ごろは、以前の倍量近い仕事を抱えながら
店を閉めていた春のような、閉塞感がある
ひと月先の想像もつかず、外には相変わらずほとんど出ず
きょうの苦さを口の中で転がし、なんとか小さくして暮らしている

だけど今夜は、恋人と喋り、
そのあと友人3人とビデオ通話で喋って
精神が息を吹き返したような気がした
きょうも彼には、働きすぎ、休めと言われたけれど
本当に、もうちょっと休んだほうがいいんだろうな

全然器用にできないわたし
喋りたい人がいるというのは、それだけで心づよい


明日は、すこし時間をつくって
デスクとバックヤードを片付けたりもしよう
余裕がなさすぎて、全方位ぐちゃぐちゃなので
まずは形から

まあ、14個口の荷物が届けば、
またぐちゃぐちゃになるのでしょうが、!

今年最後のオーダーは、今週が山
すこしでも、すっきりとした頭で

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郵便物に感じる、季節

11月も3分の2が過ぎ
きっと、あっという間に12月がやってくる
そうなったら最後、きっともう瞬きをする間に年末だ

あまりの忙しさに、不安になる
わたしは、ちゃんと、
わたし自身を乗りこなせているのだろうか、と

 

キャンセルが出て、空いていた時間
届いたばかりの書籍を、店の棚に収めていたら
今度は冗談みたいに大きな箱を抱え、DHLさんがやってきた

開けてみると、箱の中にさらに5つの箱があり
それぞれの重さを考えておらず、詰め物もしていないので
箱によってはひしゃげて半壊状態だった
わたしの大好きなあの人は、いつもこう
これくらいは織り込み済みなのさ


大きな箱をたたみ、小さな箱を端から開けて
何がいくつ入っているかを、数える
どの取引先が相手でもやる作業だけれど、この場合は特別
税関を通すため、全体の数と合計額だけは彼女が出しているけれど
柄などは、オーダーとは全然違う数が適当に入っているので、
その内訳をわたしが数え、彼女がその数で詳しい請求書を作るのだ

最初は、こらこら、と思ったものだけれど
今や、予測不能の開梱作業がただただ楽しくなった
ちょっとしたロシアンルーレット


日本だと考えられないことだけれど、
実際こういう感じでやっていると、困ることはそう多くない
それより、おおらかな彼女がわたしは好きなのだ

それに、たとえばティータオルなんかは
実はかなりの割合が、元々うちのためのデザイン
軽やかに融通をきかせてくれて、作ってくれている

全部、彼女だから、できること
わたしも一緒に、おおらかにいられればいい


わたしの役目は、
作っている人とお客さんの間の、緩衝材になることでもある
それは、単純に言えば、お客さんの分のリスクを背負うということだけれど
そう単純に言い切れない喜びが、ちゃんとある

彼女と仕事をしていると、そういうことを思う
楽しいんだよ、どんなときでもね

 

さあ、荷物が次々に届いて
店じゅうがワサワサ、凄まじい散らかり具合だけれど
明日も、お店に立つ

どうか、お客さんにも楽しんでもらえますようにと
ひっそり願いながら

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スウェーデンの、森のなかの工芸学校
一年のコースを修了するすこし前に、
授業の一環で、先生がとある古着屋に連れていってくれた

湖のほとりをずっと車で走って
たどり着いた、一軒家
家はぽつぽつとあるけれど、ほかに店はないような場所で
その地方らしい壁をした、異様に大きな家だった

中に入ると、一階にも吹き抜けの二階にも、所狭しと古着
状態もよく、デザインも心をひかれるものばかりで
比喩ではなく、頭がくらくらしたのを覚えている
課題で、特定の年代の服を探してくるようにと言われたものの
浮き足立ってしまってどうしようもなかったな

多くの国の多くの町で、古着屋を訪ねていても
あそこより魅力的な店にはその後出会ったことがないし
そもそも、あの店より商品数の多い古着屋をわたしは知らない

たった一度訪れただけだから
もう、夢を見ていただけという気もするけれど


そのとき買ったワンピースは
工芸学校の修了式で、はじめて袖を通した
それからは普段の日にも普通に着ているものの、
今の仕事場があるビルのレセプションもこれで出たし
ちょっとだけ特別な、節目を見守ってくれる服だという気がしている

きょうは、姪の七五三
やっぱり選んだのは、このワンピースだった
わたしなりに、気持ちの入った服で出かけたかったのだ

あの店を訪れたときには
想像すらしなかった、きょう

 

時の流れについて考えることが、苦手、というか
わたしは正直なところ、ちゃんと考えることができない
だって、こういうことに真っ正面から向き合って
どうして正気でいられるんだろう

だけど、三歳になった姪を前に、
重ねてきた歳月のこと、この先のことを思わずにはいられない
時間は、きっといつまでもわたしの味方にはならないけれど
彼女の成長を見られるなら、それを覚えていられるなら、と


“時は十分すぎる時間をかけて
移ろうことを知るべきである

我々は天から授かった力によって
遠い記憶を眼の前に感じることが出来るのだから”

今年出会った、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を
何度でも繰り返す


この道に、ぎっしりと記憶を敷き詰めるようにして
きっと、すこしずつは、強く

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発送、撮影、開梱と
やるべきことが山積みの、今
クリスマスのディスプレイに手をつけた

ハロウィーンが終わればクリスマス
この慌ただしさは、どうにも好きになれないけれど
キラキラした季節のディスプレイを考えるのは好きで、
毎年、とくに気合が入る


一旦まっさらの状態にして
バランスを見ながら考え、テーブルを埋めていく
ほんのちょっとのことで一気に雑な印象になったり、
バラバラとまとまりのない雰囲気になるので
ディスプレイは、もっとも気を遣う、難しい仕事だと思う

だけど、いちばん実感を持てる仕事でもある
ここにいて、店を持っているという実感
つねに試されているのだという、実感

商品数がとにかく多い、うちの店
だからこそ、ワクワクするね

 

イギリスでは、またロックダウン
取引先は今のところどこも休まないようだけれど、
メールの端々から、困惑している様子がうかがえる

8月頃までにオーダーした現行のもののうち、今届いているのは半分ほど
さすがに例年よりだいぶ遅いし、トラブルも増えている
クリスマス関連のものも、実は一部が届いておらず
まずは、あるものでディスプレイをすることに

ま、これが最後のクリスマスなわけでもあるまいし
期日をどれだけ過ぎようが、いずれ届けばいいと思っているけれど
この状況が、今年の混乱を物語ってはいるな

誰もが思い通りにいかないことばかりで
誰も答えを持たない、2020年

 

今週は休みがなくて、明日も朝から仕事
夕方くらいにはすこし自分のための時間を作りたいけれど、
果たしてどうだろうか

落としどころを見つける訓練
すこしずつ、きっと、上手くなる

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史上もっとも散らかっている仕事場に
計4箱、約1000枚のグリーティングカードが届いた

わからなくならないうちにと
パッキングリストを見ながら、在庫表の数量を変えていく
彼女のカードを愛するあまり、とにかく種類が多くて
ひとつひとつ数字を打ちながら、ちょっと可笑しくなってしまう

店頭に並ぶと、小さな一角なのにね
雑貨店の仕事は、いつだってこんな風


このカードを作っている人へ、メールを書きはじめる
彼女のお母さんの庭と、うちの近くの紅葉のこと
店に来てくれた、彼女のファンだというお客さんのこと
それから、またイギリスで始まる、ロックダウンのこと

すっかり長くなったメールの最後に
荷物を受け取ったよ、ありがとう、
全部数え終わったらまた連絡するね、と書き添える
わたし達の間では、業務連絡はほとんど文通のついでで
そういうやりとりに、ほっとする

いつも荷物に数枚入れてくれる、おまけのカード
姪が生まれたときには、妹にも
女の子が生まれたときに使うカードを贈ってくれたっけ

やさしいスミレの絵柄に、
今年は会うことができなかった彼女を、思う
つぎにあの柔らかな笑顔を見られるのは、いつだろう

 

いよいよ11月
わたしには、棚卸など、一年の総決算の始まりを意味する
12月の末が期限のことも、この仕事量でひとりでは
長い期間ですこしずつやらなくてはいけないからだ

今年のまとめを始めると、
嫌でも、荒波の中を漕いでいた店の状況が見えてしまう
数字ひとつとっても、涙なしには見られない迫力があり
よく今こうしているなと、他人ごとのように感心する

曲がりなりにも経営をしている人なので、
甘っちょろいことばかり言っていられないんだけれど
それでも、うちも取引先もどこも倒れなかった、
それは本当に、奇跡のようなことだという気がする


この店が好きだから、と
この半年で、何度言ってもらったかわからない
そうして支えてくれたお客さんにはどれだけ感謝しても足りないし、
その分わたしも、しっかりと大きなオーダーをすることで
取引先の支えになれていたらいい、
そして、それが結局お客さんの得になればいいな、と思う

やるべきだと思うことを、前向きに、シンプルにやる
ずっと心に留めていることだし、何度も書いてもいるけれど
折にふれて、何度でも言葉にしたい

これから、どんな日々が続いても
けして、忘れることがないように

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店のオープン前に淹れた紅茶を
数分の時間が空くたびレンジにかけて、
一日かけて、飲む

最良の方法ではないことは、わかっているけれど
慌ただしいなかでの最善ではあり
どうしてもやめられない

細切れの時間を愛おしむ
スパイス・ティーの季節

 

きょう、11月1日は、休み
こんこんと眠り、午後は古本市へ出かけた
毎年何があっても行っている夏の古本市が中止になり
この秋の古本市を、本当に楽しみにしていたのだ

ひとつのブースで、ロルカ関連の本を何冊も見つけた
わたしも愛する詩人、フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
おお、すごい、と驚きながら洋書コーナーへ歩いていくと
そこにはスペイン語の本が積んであった

ああ、誰かの本だ、と気がついて
ちょっと切なく、そして、襟を正すような気持ちになる
ロルカの本のところへ戻り、一冊一冊吟味して
評伝をレジに持っていった


わたしの蔵書の行く先について、
ときどき、考えることがある
とくに、膨大なスウェーデン関連の資料のこと
一世紀以上前の貴重な古書もたくさん持っているけれど
スウェーデン語やその他北欧言語のものも多く、
当たり前だけれど、日本には読める人が少ない

もしもわたしが、ここからいなくなるようなことがあれば
ロンドンの母校に寄贈してほしいと、いつも言っているものの
本当にそうしてもらえるだろうか

そんなことを思いながら、
手にとったロルカの評伝
どうしてここにあったのか、本当のことはわからなくとも
わたしが生きている限りは、大切に持っていようと思う

 

10月は、とにかく
時間の感覚がなくなるほどに働いた
週に一日、半日休みが取れるかという状態ではなく
夜でも休めるか休めないかという感じだった

だけど、こうして全力で仕事ができるのは、
とくにこの状況下では、もちろん、ぜんぜん普通のことではない
わたしの店だって、いつまでこうしていられるかわからず
ありがたさを噛みしめながら、日々働いている


このまま走りつづけたい
そう、ますます気持ちを強くした、10月

とにもかくにも、乗り切って
新しい月だ

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果てのない青空に抗えず
積み上がる仕事を置いて、外へ

そっと通っていくやさしい風
まだ昼間なのに、夜のように秋の虫が鳴いている


今年2度目の盛りを迎えた、バラ
春は、ちょうど店を閉じているときだったか
現実と幻の境界がどうにもあいまいで、
どんな言葉にも繋がらないような靄を抱えていた

いまは、あのときより
自分の輪郭がハッキリはしている
そのかわり、我を失うような忙しさではあるけれど

 

真っ白の一角にひかれて近づく
アイスバーグ、ドイツ作出、という看板の文字を
思わず、Iceberg、と口のなかで繰り返す

近くで写生をしていた中学生が、目の前を
鮮やかな水色に染まった筆洗を抱えて歩いていく
青い花のないバラ園で、この色ということは
きっと、さっきまで、空を描いていたんだろう

筆洗と制服のシャツ、赤いタータンチェックのスカートが
しばらく、残像のように、白いバラの中に浮かんでいた


ベンチに座って
耳を澄ませ、目を閉じる

夜中まで働く日が、また続いているからか
手をとめていると、不安になる
だけど、すこし休まなくちゃ

また目を開けると、夢のようにバラが咲いていて
ふわふわと心もとない

 

昨日今日は、たくさんのマグカップを送り出した
実物を見たことのない方も、
どうか気に入ってくれますようにと、強く願いながら

わたしの気持ちなど、乗せないほうがいいのかもしれないけれど
やっぱり、特別な商品
気軽な会話でごくあっさりと、作ることが決まった場面を
生き生きと思い出す


このさわやかな空気も、光も
一緒に包んで、届けられたらいいのにな

そう思うほどの、澄んだ秋晴れの日に
この仕事ができて、よかった