藤棚で雨やどりきょうは、さすがに蜂も休みなのか、ゆっくり花を眺めさせてくれる 公園では、近所の子どもたちが、濡れないよう、藤の下に自転車を動かしていた当の本人たちは、雨に打たれながらキャッチボールなぜか、投げるときの掛け声が“まいどー!”で笑…

桜の花がほとんど終わり、わたしの散歩コースも、静けさを取り戻した 二日ほどすべてを霞ませていた黄砂も、きょうは落ち着いている今年は早くから咲いているシャガが、まだしゃんとして、風に揺れていた ほとんど誰もいない川べりこの辺りの水は、とくべつ…

抜けるような青空と、夏のような陽気まだ花が咲いている川辺を、上を向いて歩く 明るい黄色の体をしたメジロが、囀りながらひょいひょいと桜の小枝を渡っていったブルーグレイの嘴はスズガモだろうか、流れに逆らわず、揃ってゆったりと川の水にのっている …

もはや春を超え、初夏のような空気のなか上着を脱ぎ、日傘を閉じて、ほとんど人のいない桜並木を歩く 静かに咲く花は、ふわふわとあまりにも儚くて迫力にも似た切なさがある毎年見ていても、慣れることがない存在感 桜の写真にかぎって、そこになにも写って…

ひととおり、店での事務作業を終わらせて買い物に出かける日曜日 例年より二週間ほども遅れて咲いた白木蓮が、足早に去っていこうとしているいつもはもうすこし遅い枝垂れ桜は、ソメイヨシノを待たずに、もう咲きはじめていた 紙みたいに白い鳥が、ひらひら…

行ってみたかった丹波篠山へ京都からのドライブ 江戸時代の面影の残る街並みと、盛りだくさんにものが置いてある店々を巡り古い建物を改装した宿に泊まって、土地のものをいただいた夜の街はどこまでも静かで、宿にはテレビがなく、思い出したくないことは、…

祝日の水曜日窓を叩く雨と、3月とは思えない寒さに心が折れきょうでなくてもいい仕事を放り出して、半休に 再読をはじめた本の行間に、この本はそういうものにしよう、と普段はしない書き込みをする狭い行間では、hとmとnとuがほぼ波線の自分の字大学でスウ…

確定申告に目処がついた瞬間、仕事に勉強に趣味にと駆けずり回る 結果、毎日電池が切れたように眠り、目の下のくまがとにかくすごいもうちょっとゆっくりすればいいんじゃないの、とは思うけれどやりたいことがすっかり溜まっていたのだった きのうは、ベル…

今年の、春のはじまりの日はいつも通り店に立つ、なんでもない日 午前の早いうちから母を誘って、馴染みの喫茶店へ出かけたスコーンとフルーツサンドのセットをぺろりと食べて、気合いを入れ直し、元気に仕事へ お隣のお菓子屋さんが、お誕生日おめでとうご…

朝、窓を開けると暗い空からぽてぽて無数に落ちてくる、みぞれ あわてて予報を調べ、きょうの商品撮影は諦めて、急遽あす行くはずだった病院へこの天気では、予定を入れ替えなければどうしようもない いつもの薬をもらいに行った病院は、これまでに見たこと…

“出張後の営業”という期間を終え、その日の夜からオンラインショップを開けたら瞬く間に、水曜夜の今になった スウェーデン、イギリス、そして日本で買った本が廊下に積み上がっているこれまでほぼ手をつけられなかったやるせなさと、これから一冊ずつ読んで…

出張後、最初の営業を終えてひと息ついた、きのう異様に早い時間に、取引先からのメールが届いた タイトルを見て、右手のカップを落としそうになる慌ててメールを開けると、冒頭にこのお知らせをどう書くか、百万通りも考えたけれど、簡潔な、理解しやすい説…

ロンドンから、今度は中央アジアを突っ切って京都へ帰ってきた イギリスの後半は、誰かに会って、また会って、という数日あちこちのディーラーさんを訪ねてヴィンテージ品を仕入れひとつ新しい取引先が決まりかねてからの取引先の方とプライベートでランチに…

カムデン・タウンでの仕事が、少し早く終わり運河沿いを歩いて、カップケーキの店へ 二度目の大学生活を過ごしたロンドンは、北を中心に、比較的広いエリアの土地勘がある歩ける距離かどうかや、近道、バスルートだけでなくどの道が歩いていて気持ちがいいか…

休暇、最後の目的地はスペイン側のバスク地方、サン・セバスティアンなにも考えずに散歩がしたくて、以前にもいちど訪れたこの町へやってきた 海辺では、砂浜にゴールを置き、コートを描いて子ども達がサッカーをしていたかわるがわる張り上げる声が、波の音…

海辺の保養地、ビアリッツの海岸グレーの風景を前に強風に吹かれていたら、みるみるうちに空が晴れ、光が広がっていった 遠くの白い灯台と、紋を作りながら打ち寄せる波遊歩道を歩いていた人たちはみな足を止め、ただじっと青く変わっていく海を見つめていた…

朝、狭いホテルの部屋から出ると曇り空と、ぬるく強い風慣れない街の匂いに面食らう 通勤らしい足早な人たちの流れに逆らって特有の心ぼそさをつかまえるそう、パリへ来たのだった 昨日のストックホルムからの移動は、当初予定していた直行便がキャンセルに…

会いたい人に会うために小さな地方の町へ バスを降りると、名前を呼ぶ声緑のロングコートを羽織り、雪をかきわけて走ってきた友人と思いっきりハグをするなんといっても4年ぶりの再会だ 画家であり、デザイナーでもある彼女とは、7年前のちょうど今ごろ、展…

朝8時、降り立ったストックホルムは、マイナス15度という気温 機内持ち込みにしていたリュックから防寒着をつぎつぎ出して、重ねるこれくらい寒いところをまとまった時間歩くのは、さすがに結構ひさしぶりだ 大きなスーツケースを二つ引いているとミトンでは…

年末年始を働き抜いて一泊二日の旅へ 吹き飛ばされそうな強風のなか、砂丘を歩き、湖をぐるりと一周した寒い寒いとぼやきつつ、よく歩きまるで社員旅行のようだと笑いながら、いわゆるリゾートホテルで土地のものを食べた ほかに乗客のいない、小さな遊覧ボ…

年内の店舗営業をきょう、終えた とはいえ、本来明日までの棚卸はまだ手をつけた程度だし元日からは諸事情でオンラインショップを開けるだから、来週のわたしは休みどころか朝も夜もなく働くんだけれどそれでも、総まとめの心持ちにはなるというか、今年はこ…

事務仕事のクリスマスイブ 合間にケーキを受け取りに出かけようとしたら母が一緒に来るというので、それならとカフェに寄り、お昼にホットサンドを食べたケーキを交代で持ちながら、何度も美味しかったと言う母にじゃあまた来ようかと笑う 積み上がる仕事で…

冬になると、きまって『雪の女王』が読みたくなる 登場人物が、それぞれの役割を果たしながら生き生きとしていてもう大人になって随分経つというのに、時間を忘れて没頭してしまうアンデルセンの童話のなかでも異彩を放つ、骨のある冒険譚 主人公のゲルダを…

背の高い木のシルエットが際立つ雲ひとつない夕暮れ 隣を歩いていた母が中学のとき、文集の表紙のために、こういう冬の木の絵を描いたことがあるわ、と言ったふと現れる、わたしがこの世にいなかった頃の母の記憶には、物語の入り口のような引力がある ロン…

ネイリストさんのところへ行った帰り道本屋に立ち寄ると、欲しかった本がひっそり置いてあった 気がついたらAmazonでは在庫切れになっていて、ほかのオンライン書店を探そうと思っていたところ実物を見て買うことができるなんて、と開いてしばらく見とれ、迷…

6年間、店で履いていた靴をついに手放した ちょうど10年前、2013年の6月末にパリのレペットで買った靴セールで1万円ほどだったけれど、それでも、留学生だったわたしには大きな買い物で勿体なくてぜんぜん履けなかったその後、店をはじめてから、ここなら汚…

きゅうに寒くなった昨日今年もこれが着られるのが、うれしくて仕事へ行く前に記念撮影 2018年に、ユトレヒトの古着屋さんで買ったニットあの店はまだあるんだろうか、とふと思って調べてみたら今もその場所に存在しているみたいだったいつか再訪したいけれど…

この秋、ずっとそのことを考え続けていた仕事を昨日、無事に終えた とくにこの二週間は、店の仕事も忙しかったこともあって眠る時間を十分に取れない日も多かった詳細は省くけれど、成果物、というか中身が誰かに想像してもらうにはあまりに特殊だったので、…

はじめての島根県 出雲大社にお参りし、灯台で太陽が沈んでいくのを眺めた出雲の民藝館や、松江の県立美術館、鳥が見られる公園へも出かけていった 宍道湖はおだやかで広くすっきりと晴れ渡ったところも、眠たげに曇ったところも美しかった水辺への憧れは、…

金木犀の季節 今年は、たしか先々週のある日からいっせいに金木犀が香りだしたそれから数日は空気そのものが匂い立って、いつもの道が塗り変わったようだった なにを着たらいいかわからないとぼやきながら、薄く軽やかな秋色のブラウスで歩くまだまだ生温い…