山茶花の季節
大通沿いの、背の低い植え込みも、
あざやかに花をつけている

オンラインショップの仕事の合間に、美容室へ
祝日で父がめずらしく家にいたので、贅沢に送り迎えをしてもらう

家に着いた瞬間、はい、1500円になります、と言われたので
笑って、父を待っている間に買ったケーキの箱を差し出した
紅茶を淹れて、高校サッカーの決勝を観ながらおやつ
穏やかな午後だ


むかし国立に高校サッカーの決勝を観に行ったとき
隣に座っていた女の子が、お姉さん寒い?よかったらどうぞ、と
ブランケットを貸してくれたことを、ふと思い出した

よく走る小柄な選手を、いいやつなんです、と教えてくれた
太陽のような笑顔の彼女は、いまどうしているかしら


きょうは、色々なことをぐるぐると考えてしまい朝まで眠れず、
そのうえ目覚ましをかけ忘れて、いつもよりすこし遅くまで寝てしまった
ショップの梱包があったので、相当慌てたのだけれど
夕方17時の出荷には余裕で間に合い、結果オーライ
こういうこともある

ままならないことばかりでもないんだよ、
きっとね

 

先週は偶々、続けて、本屋についての記事を読んだ
ひとつは、神保町にある洋書専門の古書店の話
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230106/k10013937441000.html
もうひとつは、イギリスのチェーン、Barnes & Nobleの話だった
https://gigazine.net/news/20230105-barnes-and-nobles-turnaround/

店で5年半、書籍を販売している者として、
どちらも、おもしろく、そして重い記事だった
わたし自身、本を売るという一点では当初からずっと迷いはないものの、
本当にやりたいことと実際の運営の間には距離が生じることもあり
なにが譲れないかを慎重に考えては、落とし所を見つけているからだ

どちらの記事の本屋にも、眩しさを感じながら
わたしが大事にしていることを、重ねた


うちの書籍の売上は、正直、店舗全体からすると微々たるもので
さらに正直に言ってしまうと、そもそも、
小さな店舗向けの今の仕入方法では、大きく利益を出すことは難しい
買ってくださる方はちゃんといるのだけれど、それでも難しいのだ

だけど、前向きに考えると、
雑貨をメインに販売しているからこそ、今の本棚を維持できる
対象をイギリス・北欧・ドイツ関連の文学作品に限定するかわりに、
その井戸の中では、どこよりも広く深い知識を持って、細やかでありたい
それがオープン当初からのわたしの願いで、
今も変わらずそれを持ち続けていられるのは、この形だからだ
店にとっても、わたし個人にとっても、
書籍を置くことによって得られる利益は、単純な売上だけではないし
雑貨があるからこそ、本棚に興味を持ってくれる方も多い

ただ、実はうちは、これでも相当うまくいっている事例で
(そして、それはわたしが努力しているからというわけでは決してない)
このまま維持ができれば意味がある、と言えるのは、だからこそだとも思う
理想を持ち続けることの、なんと困難なことか


実は、わたしが店をはじめた当初、
棚には、貴重な古本もたくさんあった
ゴールウェイで訪れた、Charlie Byrne'sという書店に憧れ、
イギリスやスウェーデン古書店などを巡って、丁寧に集めたものだったけれど
結局ほとんど売れなくて、自分のコレクションにしてしまった

古本は古本として割り切って、
もっと売れるタイプの本を仕入れればいいとわかってはいても
わたしは、自分の意志を曲げることができなかったし
本棚のスペースには限りがあるので置き続けることもできず、
日本語で読める文学作品を、よりたくさん並べることを選んだ
そのことを悔いてはいないけれど、
神保町の古書店の、届くべき人に届く、という話は
読んでいて、ちょっとほろ苦いものだった

まだ諦めてはいないのだけどね
いつか、店がもっと成熟したら、小さくてもああいう棚をまた作るんだ


わたしは、いま自分を、
“本屋”と呼ぶことができない
どれだけ多くの本を読み、仕入に時間を使い、お客さんに紹介していても
やっぱり、本だけを売っている人たちへの礼を欠いていると思うから

だけど、うちを“本屋”と呼んでくれる方たちがいて
だからこんな風に、悩みながら、バランスを取りながら、やっていける
そのことも忘れずにいたいと、
こうして、機会があるたびに、強く思ったりする

ばらばらとまとまらない話になってしまったけれど、
とにかく、すくなくともお客さんには失礼のない棚を作りたいものだ

 

 

それはそうと、神保町のお店のほうの記事に登場している
『チャリング・クロス街84番地』
わたしにとっても、家にも店の棚にも置いている、大好きな本です
すべての、本を愛する人