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飾る場所もないけれど、
いよいよ額装しようと出してきた、リトグラフ

2012年に、ヴィクトリア&アルバート博物館が
1930年代の“High Street”という本を復刊したとき、
Eric Raviliousの挿絵のリトグラフも復刻して出した
そのうちの一枚

ラヴィリオスは、イギリスのあちこちの美術館に作品が収蔵されているので
それで知って、とても好きになった画家だった
画集を集め、デザインした食器などの資料を集め、
この本も、このリトグラフも、迷わず手に入れた


その後、ラヴィリオスのお孫さん家族と仕事で出会い、仲よくなるなんて
学生だったあの頃は、もちろん、想像もしなかった

行く道はそれなりに長く、
こういう信じられないことも起こりうる

 

どう進んでいけばいいのか、
ただ、途方に暮れる日もある
何を書くこともできず、呆然と過ごす日もある

わたしは本当に、今日も、明日を待たなくてはいけないのか
そうも思うけれど

それでも、続く道は今のところそれなりに長く
明日も、大なり小なり、なにかが起こるのだ

 

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スーパーで買った、ちょっと下を向いていた水仙
夜になった今、すっかり元気

ビューローに飾っているから、書き物をしていると
むせるような香りが漂ってくる
ちょっと強すぎなんじゃない、とも思うけれど
愛おしくも、思う


きのうのことを思いだしながら
二日分の日記を書いて、ベッドに入る
そういえばきょうは、珍しくほとんど仕事をしなかったな

おやすみ、わたしの小さな日常、
目が覚めたら、二月だ

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長く出しっぱなしにしていた文庫本を
本棚の定位置に戻そうと、手に取ると
かすかな音がして、何かが床に落ちた

ストックホルムからタリンまでの、フェリーのカードキー
一瞬で、フェリーの丸い窓と、灰色のバルト海の印象に
心を攫われる


なんでも栞にしてしまう
半券、レシート、ショップカード、ナプキン
落ち葉、押し花、洋服のタグ、お菓子の包み紙
挿んだものは、そのままにして
こうして、ときどきタイムカプセルのように開ける

いまは、外で本を読むことがほぼなくなってしまい
こういう、本当になんでもなくて、
でも楽しみに思っていたことができなくなった
そのうち寂しいとも思わなくなり、習慣自体を失ってしまうのでは、と
考えると、胸がひやりとする

先々週、ひさしぶりに青空の下で本を読んだけど楽しかったな
すこし暖かくなり、状況もよくなったら、もっと川辺で読書をしよう
栞にできるものは、葉っぱくらいかもしれないけれど


このカードキーが挟まっていた本は、東山魁夷のエッセイ
先月、仕事関連で本のセレクトをさせてもらう機会があり
その候補にあげたうちの一冊だった

強く意識して何かを選ぶとき、
わたしはいつも、写真のことを思い出す
正確には、写る部分と、その枠のそとにあるもののこと

棚に戻しながら、
この本のことも、きっといつかどこかで紹介したい、
そういう機会をもらえるようにまたがんばろう、と
すこしの罪悪感とともに、思った

 

いよいよまた、仕事が目まぐるしいターンに突入
ここから一週間ほどは、朝も夜もなくなる

加えて、いよいよ本格的に展示会とオーダーのシーズン
1週間前のゆとりはどこへやら、メールボックスがもう修羅場だ

でも、今度こそ、今年こそ
ちゃんと自分自身の、仕事の、そして生活の手綱を持つ
わたしはまだ、振り落とされたくはないんだよ

きょうはとにかく、眠れるだけ眠って
また、あした

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いっときはほとんど編み進められていなかった、姪のセーターも
やっと、仕上げの段階に入った

今夜は、パーツを縫い合わせる作業
平に置いて、もくもくと作業をしていると、
やっぱり、氷の森で民族衣装を縫っていた頃のことが過ぎる

当時はロンドンが恋しくて、
手を動かしながら、Coldplayの昔のアルバムをよく聴いてたな
いつだってないものねだり

 

月曜から、仕事に戻っているけれど
今週も店は閉めたままなので、いつもより時間に余裕がある

毎日早く起き、デスクワークの前に自室の片付けや掃除
もとが惨憺たる状況だったので、まだまだなものの
休み初日からやっていたら、まあ、すこしマシにはなってきた

それなりのゆとりを持てるというのは、こんなに良いものかと
朝、目が覚めるたび、新鮮に感動してしまう
これまでどんな働き方をしていたのかという感じだけれど、
とにかく、色んなことを軌道に乗せるため、必死だったのだ


そもそも今週は休業する予定ではなかったし、
小さな店をとりまく状況は、これ以上ないほど悪いことに変わりない
この先のことを考えると、心がざわつくけれど
そのざわざわは、今は聴こえないふりをしている

きっと大丈夫と、信じて
まずは、自分にエネルギーを蓄える時間をあげたいな

 

今年の冬は、本当に洋服を買わなくて
結局、古着の綿ニット一着だけだった

だから、と思ってセールを見ていたはずが
画面上を彷徨って最後に買ったのは、七分袖の花柄ワンピース
こんなに冬が好きなのに、
わたしも実は、春を心待ちにしているんだろうか


これを着るころには、どうか
もうすこし事態が収まっていてほしい
去年の春のことを、思い出しても平気なくらいに、
穏やかな日々になっていてほしい

叶わないかもしれないけれど
願うくらいは、いいでしょう

 

 

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冬らしい、やわらかな青空
パン屋さんでスコーンを買い、散歩へ


“雪月花”、“一筋”、“和歌の浦”、“御所桜”
さまざまな名前の、まだ蕾の椿を眺め、
その名前をつけた人たちのことを、思う

いったいどれだけの時間を、椿とともに過ごして
どんな思いで名づけたのだろう、と

 

きょうは、すこし荷物を出すほかは、休み
まさに嵐のようだった仕事に、
ようやく目処がついたのだった

そもそも、年末年始もちゃんと休んでいないので
こういう穏やかな休みの日が、ひさしぶり
もはや何をしていいのかわからず、
早朝から、机に向かって三日分の日記を書き
部屋を片付けはじめ(はじめただけで片付いていない)
本を携えて、外に出た

灰色のベールのようにかかる思いを
そのときだけでも、そっと、上げられたような
澄んだ数時間だった

 

今週はもともと冬休みの予定だったけれど
来週も、引きつづき店を閉めることにした

そもそも予約制で、今月に入ってからお客さんは大幅に減っているし
予防的措置というところで、状況が上向けば再来週にはまた開けるけれど
それでも、補償もないのに閉める、というのは
それなりには痛い決断だった

わたしを疲れ果てさせているのは、
何よりこういう、無数の小さな決断なんじゃないかと思う
最善を選ばなくちゃと気負いすぎなんだろうか


まあでも、今は
自分で自分に休みをあげたんだと、思いたい

明日は、友だちにずっと書けなかったメールを書いて
本を読んで、勉強をして、姪のセーターを編んで
ピアノを弾いて、観れていなかったDVDを観て
それで、眠れるだけ眠るんだ

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とにかく寒い、この数日

仕事場は言わずもがな、
いつもはわりに暖かい自分の部屋までもが、寒い
2年前に編んだ靴下を、いつになく切実な気持ちで履き、
父の故郷の雪深い町のことを、ぼんやりと思いだす

年末年始には、屋根にうっすら積もった日もあったけれど
今回は、京都は雪にならないな、と
ほんのすこし寂しさを感じる、身勝手


この靴下を編んだのは、
ロンドンからアムステルダムまでのユーロスター
アムステルダムから、ユトレヒトアイントホーフェンへ向かう電車でだった
オランダは、どの町へ行くにも近かったけれど、
ちょっとの時間でもちまちま編めるのが、靴下のいいところだ

ロンドンの馴染みの毛糸屋さんで、糸を買って巻いてもらい
それで、編みはじめたのだった
いま思えば、すべてが贅沢
あんな日々は、果たして戻ってくるんだろうか


こういう状況になって
移動が自分のなかで果たしていた役割の大きさを、思う
駅のカフェで買ったコーヒーを手に、朝靄や夕闇の車窓の風景を眺め
本を読んだり編み物をしたりする時間が、
スマホで仕事をする時間でさえも、好きだった

出張中は、いつも慌ただしかったけれど
だからこそ、ただ流れていく風景に、心が安らいだ
そのせいか移動中は、考えなどがまとまることも多かったし
その空間、時間の効用を信じて、
自分のなかでの帳尻を合わせる計算に入れていたような気がする

移動にかわる何かを見つけないととは、思っているのだけど
移動は移動なんだから、かわる何かなんて見つかるはずがないよねえ
どうしたものか、そう言いながら、困りつづけている

 

いつものことといえば、いつものことなんだけれど
土曜夜から、仕事が殺人的な忙しさになった
昼夜を問わず端から目の前のことをやっていても、終わりは見えず
すこし余裕ができるまでに、まだ3日くらいはかかりそう

でも、こうして家でできる仕事があるというのは、本当にありがたい
普段は、ある程度人と会う仕事をしているわけで、
この状況下では、冷静になって諦めなければいけないことが多いのだった

ともあれ、がんばりどきを、がんばる
これがひと段落ついたら、冬休みだ

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店の、わかりづらすぎるお正月飾り
これはこれで、けっこう気に入っているけれど


ディスプレイを直しながら、
ふっと、火が消えたように、暗い気持ちになる
去年の6月に営業を再開してから
こんなに静かな日は、これまでなかった

窓から、凍えるほど冷たい、強い風が吹き込んでくる
そういえば、次のお客さんもキャンセルになったんだった、と
気がついて、閉める


気を取り直し、コーヒーでもいれよう、とドアを開けると
そこに、ちょうどやってきた大家さんがいた
美味しい柿の種とチョコレートを持ってきてくれていて
この寒さだというのに、のんびりと立ち話

他愛無い話でも、なんとなく落ち着いて
行き場のない気持ちを、飲み込む
持つべきものは大家さん


わたしの業種でも
昨年からあんなに懸命にやってきたのに、と思うのだから
飲食業の方々などは余程だろう

一人ひとり、違う苦しみを抱えている
みんな大変だから、なんて、ない

誰かのために、自分のために
つねに最善を考えなくてはいけない
その重たさよ

 

母は、簡単な手術をして
またすこしずつ、ものが食べられるようになった
一昨日、遠くの病院の寒い待合で待った4時間は永遠のようで
この気持ちを一目一目に乗せたくないと思うと、編み物ができず
目を思いきり見開いてiPadに向かい、全集中で仕事をしていた

あれもこれも、というこの頃で
すこし先のことさえも、怖くて想像ができないけれど
きっと良い方向に向かっていると信じて、ただ行くしかない


先のことはと言いながら、これから3月頭ごろまでわたしも繁忙期
春夏のオーダーだ

個人の苦しさをなんとか切り離して
今月はオンラインで行われる展示会を、楽しもうと思っている
誰よりわたしが楽しまないと、いいものを届けられないから

誰かに楽しんでもらうため、
やるべきだと思うことを、前向きに、シンプルにやる

去年から、ずっと繰り返している言葉を
しっかり心に留めて

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2021年、最初の営業日

自分で編んだセーターで、店へ
これを着ると、なんとなく背筋が伸びる

北と東の窓を開け放しているので、
あまりの寒さに、震えながら一日を過ごしたけれど
やっぱり、店に立つ時間はいい


わたしのお正月休みは
母の持病が悪化し、休みどころではないという感じ
元日の昼間、母が病院に点滴に行っている間、
ひとり家事をする、キッチンとリビングは
ちょっと耐えがたい、押し潰されそうな静けさだった

夜には、大晦日までに終わらなかった棚卸
食道に問題があるので今はなにも食べられない母を、数分置きに宥めながら
リビングで、ひたすらにパソコンと対峙するはめになったけれど
自分の内側と戦わなければいけなかった昼よりは、
ずいぶん穏やかな時間だったように思う

去年も、この時期は自分が熱を出し、母も入院して大変だった
来年のお正月こそは、なんの心配ごともなく笑っていられますように、と
一年後のことを考える、一年のはじまり

 

毎年、いちおう一年の目標を口に出してみたりしているけれど
結局、あまり変わらずに同じことを言っている
人にも自分にも誠実に、ごまかさず、手を抜かない
きちんとしようと思えば思うほどに、深みにはまる目標だ

それに加えて、今年は、とにかくちゃんと休むこと
去年はとくに夏以降は、ほぼ休みの日もなく狂ったように働いたので、
今年は周りの人の声に耳を傾けて、心配をかけず、休むときは休む
自分のことも、周りのことも、本当に大事にしたい

あと、仕事はもちろん、勉強したいことも色々あるから全部やりたいな
今だって、途方に暮れることばかりだけれど、
心に灯る火が消えてしまったようだった日々は、2020年に置いていく


なにか母でも飲めるものを買おうと
耳にイヤホンを突っ込み、ひとりコンビニに出たときの
煌々とした月を、きっと何年たっても思い出す
街もわたしもくっきりと映す、泣きたいくらいに明るい月

夜を歩く
もっと平然と、なにもかも、忘れずに抱えて