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長く出しっぱなしにしていた文庫本を
本棚の定位置に戻そうと、手に取ると
かすかな音がして、何かが床に落ちた

ストックホルムからタリンまでの、フェリーのカードキー
一瞬で、フェリーの丸い窓と、灰色のバルト海の印象に
心を攫われる


なんでも栞にしてしまう
半券、レシート、ショップカード、ナプキン
落ち葉、押し花、洋服のタグ、お菓子の包み紙
挿んだものは、そのままにして
こうして、ときどきタイムカプセルのように開ける

いまは、外で本を読むことがほぼなくなってしまい
こういう、本当になんでもなくて、
でも楽しみに思っていたことができなくなった
そのうち寂しいとも思わなくなり、習慣自体を失ってしまうのでは、と
考えると、胸がひやりとする

先々週、ひさしぶりに青空の下で本を読んだけど楽しかったな
すこし暖かくなり、状況もよくなったら、もっと川辺で読書をしよう
栞にできるものは、葉っぱくらいかもしれないけれど


このカードキーが挟まっていた本は、東山魁夷のエッセイ
先月、仕事関連で本のセレクトをさせてもらう機会があり
その候補にあげたうちの一冊だった

強く意識して何かを選ぶとき、
わたしはいつも、写真のことを思い出す
正確には、写る部分と、その枠のそとにあるもののこと

棚に戻しながら、
この本のことも、きっといつかどこかで紹介したい、
そういう機会をもらえるようにまたがんばろう、と
すこしの罪悪感とともに、思った

 

いよいよまた、仕事が目まぐるしいターンに突入
ここから一週間ほどは、朝も夜もなくなる

加えて、いよいよ本格的に展示会とオーダーのシーズン
1週間前のゆとりはどこへやら、メールボックスがもう修羅場だ

でも、今度こそ、今年こそ
ちゃんと自分自身の、仕事の、そして生活の手綱を持つ
わたしはまだ、振り落とされたくはないんだよ

きょうはとにかく、眠れるだけ眠って
また、あした