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年内最後の営業日
一度はお店に出したけれど、
どうしても諦めきれなくて、引っ込めてしまったブローチを
自分のために買って、帰る

一年を、なんとか乗り切った自分への
ささやかだけれど大きな、贈りもの

 

今年は、言わずもがな
輸入業には大変な年だった
ヨーロッパへ行くことができない分、日本での仕事量が増えたし
新しい取引先を決めることも、とても難しかった
取引先の状況も、もちろん安定せず、
爪先で一寸先を探り探り、なんとか歩くような感覚だった

店舗は、春にふた月休業することになり
再開したあとも、予約制を続けることになった
当然、売上には大きく響くわけだけれど、
それよりなにより、店の敷居が高くなってしまうことが辛かった

だけど、振り返れば、
お客さんとの時間が、わたしを支えてくれていたように思う
誤解を恐れずに言ってしまえば、“不要不急”でしかないうちの商品を
必要だと言ってくれる人たちがいて、
丁寧にその魅力を説明できることが、うれしかったな
お客さんのあたたかさに救われた一年

四日だけ休んで、また店を開けるわけだけれど、
次は来年かと思うと、それなりの感慨がある
2020年が、終わるのね

 

12月は、店とは関係ないところで、自分の根幹を揺るがす出来事があり
毎日生きた心地がせず、正直ほとんど記憶がない

本当に目の前の、そこにあることに集中して
それでなんとか喋ったり、笑ったりしていた
まるで、自分が自分でないようだったけれど、
自分の危うさと、あらゆることへの強い思いを見たひと月でもあった

ここから、良いほうに向かうといいな
そうなるように、ちゃんとがんばったり、
ちゃんとがんばらないようにしたり、できるようになれるといい


来年が、どうか良い年であってほしい
どうか、自然にたくさん笑える年になってほしい

大切な人を、思いきり大切にすることが許される
そういう年に、なってほしい

重たい願いだけれど、
本当に、ただ、そう思う

 

さて、もう一年が終わったみたいな雰囲気だけれど
わたしは明日も、棚卸
今年の後半は、年末年始にはじまったことじゃなく、異常なスケジュールで
こういうのはこれで絶対最後にするぞと心に誓っている

ひとまず、無事にというかなんというか、
晦日を迎えられることに、感謝
あとは雪だなあ、しんしんと降っているけれども朝にはどうなるんだろ

これ以上何事もなく、
2021年を迎えられますように

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臨時休業の、12月24日、木曜日

実は、クリスマス・イブだからというわけではなく
来週の月・火を臨時営業にして、今週は余裕を持ちたかったからだけれど
いろいろな人のことを思うこの日に、
いつもの木曜よりゆっくりできるというのは、いい

 

夕方には、すこしの時間だけれど
妹と姪がうちにやってきた

姪は、ケーキのいちごだけをぺろりと食べて、追加を要求し
わたしと母が大きな靴下いっぱいに用意したお菓子を全部、
大事そうに別の袋に移しかえ、絶対に持って帰ると言った
その瞬間、手放したくないものに全力な姪が、
今のわたしには、なんだか眩しかった

それにしても、先日からツリーの飾りを、なぜか次々窓側に移し替えるので
なんで見えないほうに飾るのか、不思議に思っていたけれど
今日よくよく話を聞いてみたら、サンタさんが来るから、ということだった
窓から来るサンタさんに見てもらいたいのかな

もちろん、生まれたときからずっとそうなんだけれど、
姪には、姪が見ている広い世界があるんだね


店が明日からセールで、その準備もあるので
結局、仕事をしている時間の長い日だったものの
それなりのイブらしさ

妹から、プレゼントにもこもこスリッパをもらっちゃったしね
イブや当日に、誰かにこんな風に贈りものをもらうのは
けっこうひさしぶりのことかもしれない

 

 

A Charlie Brown Christmas
もう10年以上も前から、クリスマスといえばこれ
今年もなんだかんだで、しっかり聴いた


クリスマスには、毎年
これまでに出会ってきた人たちのことを、考える
あちこちの国、あちこちの町で
それぞれの人生をまっとうしている人たちのこと

今年は、とくに、こんな年だったから
ヨーロッパどころか、年に数回訪れていた東京も、とてもとても遠かった
会いたい人たちには当然会えなかったし
会いたい気持ちすら、わたしは、
それぞれの状況を考えれば考えるほどに、なかなか言葉にできなかった

だから、より強く
それぞれの幸せを、願う
一瞬でも長く、苦しさから逃れて、
あたたかい部屋で眠っていることを、祈る

独りよがりだったとしても
ただ、どうか、と

 

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わたし以外に誰もいない、静かな店
外の大通りを走る車の音を、背にして
朝からデスクワーク

最近は、休みといえば水曜に取れるか取れないかで
日曜はかならず、仕事をしている
まあ、でも今は、このリズムでもほぼ困ることはないし
仕事場のあるビルもしんとしていて、これはこれで結構いい


ひとつひとつ注文を確認して、メールを送りながら
納品書を印刷し、付箋に注意事項を書いて貼り、配送方法ごとに分ける
この作業だけはぜったいに集中が必要で、
だから、音楽もかけないことにしている

それでも、100件に1件ほどの確率で、間違いは起こってしまうけれど
だからこそ、すこしでも減らすべく、芽を摘まないと
元来そそっかしいんだもの

それに、こうして集中する時間も、
実は、結構好きなのかもしれないな

 

昨日は、いろいろなことが重なって
ずいぶん、気持ちが沈んでいた

そんな中、ドイツの取引先から、荷物
オーダーした商品の第二陣と、わたし宛のクリスマスカードが入っていた

カードというには長い、手紙のような文章を読みながら
いつもメールでも話しているのに、と、思わず微笑む
彼も、わたしが身近な人たちに話すように、
わたしやうちの店のことを、ちょっと誇らしく話したりするのだなあと
そんなような言葉を読んで、うれしくて
気づいたら、胸のなかの暗い靄は薄くなっていた


その作家さんと最初に会ったのは、昨年の5月
彼は、ちょうどその少し前に日本まで足を運んで、あちこちに営業に行き、
全部、断られてしまったそうだ
だから、わたしからの突然の連絡を
まるで贈りもののように感じたと言っていた

わたしも、彼には申し訳ないけれど、
彼の、日本ではじめての取引先、そして友人になれたことを
本当に幸運だったと思っている
ベルリンに着いたその日に直感のまま送った、一通のメールが
こんな風に未来をつくるなんてなあ

いつか必ず、日本のもっと大きな店が彼の作品を扱う日が来る
だから、わたしがこの国でいちばん見る目があったでしょう、と
笑って話しながら、応援しつづけたい
そう、あらためて

 

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この季節らしいかわいい箱
ドイツの郵便局のオリジナルかしらと、よく見ると
たしかにそうだけれど、月の表情は手描きだ
ますます、捨てたくなくなっちゃうじゃない

クリスマスを前に
ふわりとあたたかさに包まれるような、ひととき

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雪がちらつく、底冷えの京都

愛用の作業着を
今季はじめて着て、仕事場へ


メンズの綿ニットで
スウェーデンの古着屋で買ったもの
厚すぎず動きやすいし、
でも暖かくて、綿だから長時間着ても痒くならない
よほど邪魔なときは袖を折ってしまうけれど、
サイズが大きいところも、気に入っている

森のなかの工芸学校にいた頃、
友だちがメンズのニットの袖をざっくり折って着ているのを見て
サイズが合わないと諦めていたけれど、これでいいんだ、と思った
それからは、こういうものを探すのが楽しみのひとつ

このセーターは、学校にいた頃はまさに作業のときに着ていて
今は、出張中、たとえば倉庫のような寒い場所で
長時間ものを探すときによく着ている
洒落た服ではないけれど、
わたしの生活とともにあってくれるものだと、思う

 

先週から新しい商品をあれこれと出している、うちの店
例にもれず、お客さんに愛してもらえるかと不安になっていたものの
わたしの予想などまったく意味をなさなかったほどの反響があり、
ここに来て、過去最高の忙しさを更新した

まさか、10月最初のてんやわんやを超えてくるとは思わず
正直、ほんとうに驚いた
起きている間ずっと作業していても、普通に終わらないので
なるほど、このあたりがわたしの限界なんだな、とひとり納得している
こんな生活してていいんだろうか


だけど、そんなことより
たくさんの方の手元に届いてくれるのが、嬉しい
わたしは、一度扱った商品は、取引先が作ることをやめない限り扱いつづけるので
いつも、慎重に、そして絶対の自信を持ってものを選んでいるけれど
それと、お客さんが選んでくれるかどうかは、まったく別の問題だ

選んでもらえること、楽しんでもらえることは
ぜんぜん当たり前じゃなく、とてもありがたく特別なことで
だから、今はがんばりたい


きょうは遅くまで、根を詰めて梱包をしたから
明日はすこし、休める時間があるといいな

自分のこともきちんと大切にする、というのが
2021年の目標かしらね

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慌ただしさここに極まれり
師でもないというのに文字通り駆け回る、師走

取引先のお姉さんが今回も荷物に入れてくれた、チョコレートで
目と舌に甘い刺激

 


 

この季節になると決まってかける、Diane Birch
ロンドンへ行く前の冬に出たデビュー・アルバムは、
当時、英語の勉強をしながらよく聴いていた

窓がちゃんと開かなかったけれど、
冬の光はあたたかかった、東京の部屋を思いだす
二人がけのソファ、大きく引き伸ばした海の写真
休日によく焼いていたスコーン、中学生から使っていたCDプレーヤー

このアルバムは、その後移り住むことになった、
ロンドンやルンドでも、この季節になるとカフェなどでよくかかっていた
だから、たくさんの冬の印象が混ざっているんだけれど、
やっぱり、いちばん強いのは、あの部屋の風景

 

きょうは、あれやこれやと隙間なく仕事があって
だけど、手を動かしながら、考えていた
目の前に集中してばかり、自分の要望ばかりだったわたしには、
これまで見えて、聴こえていなかったであろう、多くのもののこと

軌道修正をすることだって、全部自己満足で
それでも、もっと聴きたい話、聴きたい声がある
ほんとうは、具体的な話だってしなくてよくて
明かりが消えると、星空が浮かび上がるみたいに、
自分の声を小さくすると浮かんでくる、“なんでもない時間”が、きっとある

たったそれだけのことなのに、本当に怖い縁に立たないと気がつけなかった
なにより、自分の鈍さに絶望してしまう


そうして、とくに求められていない反省をしているわけだけれど、
いつか、そんなことを意識しなくても、心地よく居られるように
良いいつも通りを、ゆっくり作り直していけたらいいな
そう言葉にすると、薄っぺらくてビックリしちゃうけども

とにかく肩の力を抜いて、
まずは、誰より自分のために


正解なんてどこにもないけれど
だから、これから時間をかけて、もっと考えたい

2020年もあとわずか
ひとつ深呼吸をして、先へ行く

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2020年の手帳の表紙が好きで、本当に好きで
作ってもらったトレー

立体的な青い花々が、美しい
面積の広いカップやお皿をのせると、トレー自体の印象は弱くなって
そんなところも、いい

どれほど雑事が多くとも、
日々宝物が増えるこの仕事を愛すよ


このサイズのトレーは、実は今回は4種ある
ひとつは、別の大きさでとても人気があるシリーズの、この形
あとの2種は、これを手掛けているイラストレーターさんが、
このために新しく描いてくれた

なにか希望はあるかと訊かれたので
ひとつは夜の風景をテーマにしてほしい、
でも気にしないで今描きたいものを描いて、と答えた
そうして、彼女が持ってきてくれたのは、
誰もいない霧の森と、夜の海に浮かぶ氷山だった

お客さんがどう思うかは、わからない
だけど、わたし個人は、
キャッチーではない、深みのある静かな絵を
彼女が遠慮せずに提案してくれたことが、なにより嬉しかった


全種好きすぎて、届いて即全種買い
誰よりも自分の店の商品を愛用するわたし、
トレーだけでも、いよいよ毎日どれを使うか迷うような数になってきた

迷うことができるというのは、
つくづく幸せなことだ

 

それにしても、今年はずっと彼女と喋っていたから
向こうに行けなくても、スウェーデン語がまったく錆びなかった
むしろ、日本語で雑談をしながらスウェーデン語で別の内容のメールを書く、という
これまでわたしの頭では不可能だと思っていたことができるようになり
(リビングで仕事をする機会が増えたものの、母にずっと話しかけられるのだった)
意外なところで、ちょっとした脱皮を果たしたような気がしている

なにがどう作用するか、わからないものだなあ
って、感心している場合でもないんだけれど、
ひとつでもできることが増えるというのは、まあ、いいこと


こういう毎日だけど、か、だから、か
すこしでも、いいことを探したい

あまり振り返りたくない一年を
ちょっとだけ、甘く

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仕事場の小さな冷蔵庫
忙しさにかまけて放っていたら、
庫内のすべてのものを容赦なく凍りつかせるマシーンと化した

もちろん、これが原因だろうな、と
右上の冷凍室をだいぶはみ出してついている氷を眺める
覗き込んだまま、さてどうしようかとひととおり思案し
地道に取るしかない、と、当たり前の結論に至った


アイスピックで、縁のほうから氷を砕いていく
もはや簡単には砕けないような大きさなので、
薄く削れてしまい、はらはら剥がれ落ちる
慣れてくると、ちょっとした固まりがとれるようになり
なんだか嬉しくなって、冷たいかけらを手に取った

トーベ・ヤンソン『島暮らしの記録』の中の
氷解けのシーンを思い出す
解けるときの、雷鳴、あるいは砲撃のような音
風が吹くと重なり合い、落ちて砕け、
隊列をなして、“路面電車とも大聖堂とも太古の洞窟とも見紛うばかり”、
色や形を変えながら壮大に流れてゆく、氷のさま


そんなことを呑気に考えながら、つっついていたら
なんの前触れもなく、残っていた氷が全部ゴトッと落ちた
驚いて、塊を拾いあげ、じっくり検分
窓のほうに向けると、縁がすこし透けて美しい

そういえば、今冬はまだ、大きな氷を見ていない
毎年、寒い国の寒い地域にかならず出かけていくけれど、
今年はそうもいかないから、見ないまま終わるのかもしれない

そう思うとすこし切なくて
手のなかの塊が、ちょっといいもののような気がした


いや、まあ、こんな風に長々書いているけれど
ただ冷蔵庫の霜取りをしただけなんですけれどもね
よくこんなに氷が育ったものだ

これで、牛乳やらお茶やらが凍らなくなるといいな
先週くらいから状況が悪くなって、ほんとに困ってたのよ

 

それにしても、師走
霜取りも、大掃除がてらで丁度いい

毎年よく働いている12月だけれど、
今年は、とくに忙しくなりそう
一気に来年に突っ込んでいく感じになってしまうだろうか

もう休みに入ろうとしている、イギリスの仕事相手からのメールに
wishing you a very Merry Christmas and a Happy New Year、の文字
今年最初のメリークリスマスだ


大変な一年だったから
最後の月は、全てを大事にフルパワーで駆け抜けたい
いつもそんな風にいられるわけじゃないけれど、
このひと月なら、きっとできるでしょ

まずは、明日
背筋を伸ばして、お客さんと、荷物を迎えよう