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きのうのこと
来週でオープンして三年だからと、お花をいただいた

多分、今年はまだ、どこでも三周年には触れていなくて
だから、本当に驚いた
わたしにとっては、新しい場所へと踏み出した大切な日だけれど
もちろん、ただの小さないち雑貨店の記念日にすぎないわけで、
覚えていてもらえて、こうしてお祝いをいただくなんて、
とてもとても信じられないことだ

あたたかさに触れるたび
わたしは何かを返せているかと、不安にもなるけれど
やっぱり、ただただありがたい


ものを選んで買うのが、仕事なのだから
バイヤーには、誰でもなれる
“センス”なんて、雲をつかむようなものだと思っているし
わたしは自分自身には、ずっと自信がない

だから、長い時間と多くの言葉を使いたい
生真面目でありたい、と、思う
それを万人にわかってもらえるなんて、考えていないけれど、
それでも

 

先週届くはずだった荷物は
結局、今週も届かなかった
いちど、ロンドンの税関を通らず送り主に戻り、
再度出したものの、またスタンステッド空港で止まったからだ

荷物が戻ってしまったとき、取引先のお姉さんは
よくわからないけど“なにか”が足りなくて戻ってきたみたい、
こんなに京都に行きたいのにわたしが中に入ってなかったからかも、
なんて、お茶目に言っていたけれど
どうも、詳細なインボイスの添付を忘れたことが原因だったらしい
しかも、原因を究明せずとりあえず送り直したらしくて
当然また空港で引っかかったというわけなのだった

こらこら、と思う反面
おもしろさが先に立って、とりあえず笑ってしまう
どうしてこうなるんだ

彼女のこういうところ
実は、わりと、いや結構ほんとうに好きかも


なぜか、イギリス国内の折衝をわたしがやって
荷物は、無事、正しいルートに乗った
これで、来週の頭にはちゃんと届くはず

中身は、たくさんのポーチで、
うちのために作ってくれた小さなサイズのものもある
修正点がちゃんと修正されているか、不安も膨らむけれど
すごく、すっごく、楽しみ
ずっと持ち歩いている、サンプルで作ってもらったものはそれとして
もう一柄くらい、欲しいな、、、


わたしだからできることって、なんだろ
何百回も、何千回も、自分に投げかけてきた問いに
まだ、答えはないけれど

惜しまなかった手間が、形を変え、
誰かのもとに渡るなら
少なくともいまは、十分なのかもしれない

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今年の春夏の一枚、と言えるほどよく着ているブラウスを
きょうも、着る

いつもと変わらないメイクを
いつもと同じように

好きな曲をかけて、頭をからっぽにする
いつもの15分


パッケージを見るのは好きだけれど
わたしは化粧品を、あまり持っていない
気に入ったものをひたすらに使い続けるタイプだし、
そもそも、メイク映えしない自分の顔にうんざりしていて
なかなか冒険しようという気が起きないのだった

だけど、たまに新しいものを投入すると、
やっぱり、気持ちが上向いたりする
つくづく不思議なものだと、思う


道具を置いている、1940年代のトレーには
実は、商品としては売れないくらい、大きな染みがある
それをわかっていて、買い付けた

整理に使っているのは、どれもヴィクトリア女王の時代のガラスで
120年から150年ほど前のもの
こちらも、単体で使えば気になる大きな傷があったりする

ここをこんな風にしたのは、
この仕事をしていてよかったと思える場所にしたかったからだ
お店へ行く前に、かならず立つところだから、
わたしの仕事だからこそ手もとにあるもので、美しく飾りたかった

どこまでも、自分のための
等身大の場所

 

店のための雑務をやりながら
オンライン展示会を眺めている、このごろ
だけど、どうしても、これでものを探すのは難しい

それでも、きょうは一社、
取引をしてみたいと思える会社を見つけた
商品が紙ものの“ギフトセット”なので、どうしようかと悩みつつ
まずは自分で使うべく、ふたつのセットを買ってみる

ケンブリッジの、夫婦ふたりでやっているらしい会社
会ってみたかったな、どんな人たちなんだろ


あらためて、展示会がないことに愕然とする
実際にものを見て人に会うと情報量が桁違いに多いというのは
ブースを構える側にとっても同じこと
パートナーになるかもしれない人たちと直接会えるというのは、
こちらのことを知ってもらって信じてもらう、最大の機会だ
それを失うというのが、とにかく痛い

とはいえ、次に行けるのはいつかわからないわけだし
どうしたらこちらのことが伝わるかしらと思案中
身一つでやってきたわたしが、もっとも大切にするべきは
なにをどう伝えるかということだと思うから


苦しみながら、すこしずつ、先へ

苦しさをごまかさずに
時間をかけて考えて、進むこと

 

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どうしようもなく続く雨
ブラインドを上げても暗い部屋で、
ブランケットと一体化する、休日

昨夜編み終わったショールの糸始末を放りだし
買い置きしていた綿の糸で、作り目をはじめる
近所の買い物用の、伸びる編み地のエコバッグ
迷わず、ラベンダーとミントグリーンの組み合わせを選んだ

そういえば、サフラジェットの色だ、と
わたしに戒めをくれる、大切なブローチと並べる
かつて、イギリスで闘った人たちの色

 

それはそれとして
ラベンダー色は、そもそも直近のマイブーム
もともと好きな色ではあるけれど、以前に増して目がいく
冬までこの熱が続いていれば、セーターも編みたいな

ほかに小さなブームと呼べるものは
ゼーバルト、MIU404とその主題歌、
それからヘンデルパッサカリア(を、ハープシコードの音で弾くこと)
なんということもない、書くこともなかった、最近


だけど本当は、こういうのも、
何年後かにも覚えていたいことなのかもしれないね
最近は、“絶対に覚えていたい”と“絶対に忘れたい”の間に
意識がいかなくて、ぼやけてしまっていたけれど

自分のためだけに書く
是非はともかく、なんだかんだで、
わたしは結構そうしてきたように思う

 

ふわふわと、そんなようなことを考えて
また、たくさんの文章を書いては消す

核心に迫るものは、見られない場所にそっと仕舞って
休みの夜が更ける

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ぽっかりと空いた17時台
降りつづく雨と冷房で、わたしの場所は肌寒い

机の上のアイスコーヒーはそのままに
お湯を沸かし、スパイス・ティーの箱を出す
20センチほど開けてある窓にふと目をやると、曇っていて驚いた
部屋の中と外で、差がありすぎるのだ


最後のひとつだったティーバッグにお湯を注ぎ
蒸らしている間、今度は買い置きの箱を探した
雨があがればまた夏に逆戻りとわかってはいても、
身体が冷えると、わたしはこれが飲みたくなるに決まっている

いつもは、一年か二年に一度訪れるパリでまとめて買っているけれど、
もしかしたら、今度は取り寄せないといけないかもしれない
たかだかティーバッグなのにとは思うものの
これは、わたしにとっては数少ない、
“替えのきかないもの” の、ひとつ

 

大きく息を吐いて
一通のメールを書きはじめる
ベルリンにいる革作家さんへ、オーダーと近況のメール

彼とは、多いときは毎週のようにやりとりをするので
近況報告というには話が細かいけれど
直近のことを丁寧に聴き、語って
さっぱりと互いの状況を気遣い、仕事の幸運を祈り合う、
こういう友人関係ならではのメールに、いつもほっとする


いまのわたしは
朝昼夜を問わず、一日中、断続的にメールやメッセージを書いている
それはもう、わたしにはただごとではない数で
どうやってなんとかしているのか、自分でも不思議だ

もちろん効率的にやらないと、こなせないけれど
それでも、なるべく、心のあるメールを書ければとも思う
革作家さんとのメールは、わたしにとって
そのチューニングのような存在なのかもしれないな

目の前に来た球を、ひたすらに打ち返す
すこしこれが緩まないと、ウェブショップも始められないわけだけれど
いつまでも続くようにも思えるこの生活の終りは、さて

 

今週の雨は、京都でも不安になるほど
とくに水曜の朝方は、非常時に近い様相だった

この数ヶ月を経て
気持ちが脆くなってしまっているのを感じる
先が見えない自分自身を思うことも、
誰かが疲れ、傷ついているところを見ることも
感染症に関することだけで、もうたくさんだ

どうか、これ以上降りませんようにと願いながら
とにかく、明日もお店

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降りしきる雨のなか
スーパーで花を、3束買い
自分の店まで歩く

花を包む透明のビニールに、水滴がついて
持ち直すと、弾け飛ぶ
なんということもない、いつもの道だけれど
すこしだけ心愉しい


給湯室でビニールをはずし
一輪挿しの撮影で飾る分を、分ける
あとは、ばさっと大きな花瓶へ
次の営業日まで間があるので、家に持って帰るのだ

たくさんある私物の一輪挿しの中から
いくつかを選んで並べ、分けておいた花を飾った
写真を撮るというのもあるけれど、
それ以上に、生花がそばにあるのは嬉しい

側にばらばらと花を置いたまま、パソコンに向かう
静かな、仕事の月曜日

 

昨夜は、仕事で明け方にいちど起きなければならず
その後寝直したら、悲しい夢を見た

ひとつのことを誰かに許したら、
たくさんの人がやってきて踏み荒らされる
そんなような夢

ある人が、わたしのところにやってきて
こんなことになるとは思わなかった、申し訳ない、と言った
大丈夫、本当に怒ってないの、と答えたわたしの声は
ぞっとするくらいにやわらかく、甘かった


わたしは、悲しさの濃淡のなかで生きていて
今は、怒りの感情は存在していないわけではないけれど
悲しみのある種の形としてだけ意識しているように思う

夢の表層
言葉にすることのない思いが、
焼いているホットケーキの、ふつふつした固い気泡みたいに
割れて、あとをつけていく

 

仕事を終えると、もう夕方
そのまま持ってきた花瓶を、部屋のいつもの場所に置いた

3束で1000円ほどの花は
ロンドンで通いに通った、フラワー・マーケットを思わせる
いつも10ポンド札を握りしめて、むこう2週間の花を考えていた
怒号に近い声が飛び交うマーケット


水があがったからだろうか
心なしか、花は、買ったときよりも元気だ
わたしにも、元気をわけてくれる

今は、これでいい
静かに、そして、できればすこし愉しく

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予約のお客さんがいない時間、というのが
今週は、ある

ふたつの窓をいったん閉め、
給湯室のポットに水を足し、スイッチを入れ
シュー、という音を背にして、グリーティングカードを手に取る
うちには、誕生石と誕生花、そして星座のカードがあって
なんでもないことだけれど、月はじめには、
いちばん前に置くものを、そのときに合わせて替えることにしている

7月、8月、9月、10月
蟹座、獅子座、乙女座、天秤座
これからやってくる、季節


淹れたコーヒーを啜りながら
ティータオルのラインナップを見直し
発注する柄を決めて現物を並べ、写真を撮った
その作家さんはカタログを作っていて、品番も大体つけているけれど
そもそも、うちのために作ってもらっているものは載っていないし
柄名や番号で頼むと全然違うものが来たりするので、写真のほうが確実なのだ

レスターにある、彼女のアトリエへ行ったときには、
わたしより柄の名前を覚えてるのね、と、目をまるくされたっけ
たった一年とすこし前の話

あのときは、来年の春か夏にまた来るね、
ここでこれをいくつって言うのがいちばん早いから、なんて笑っていた
こうなるとは、さすがに夢にも思わなかったよ

日本にいても、注文はできるけれど
やっぱり、彼女に会いたいな

 

店の音楽ライブラリも
そういえば、夏に向けての変化などなかったなと思い立ち
ちょっと考えて、Call Me By Your Nameのサントラにある
Sufjan Stevensを2曲、足した
いかにも夏という曲を、趣味が偏っているわたしはほとんど知らない

 

 

店でかける音楽は、実はそれなりに注意深く選んでいて
映画で使われている曲は映像の印象が強いので、避けているけれど
儚い夏を思わせるこの曲は、特別

最近は営業中、窓を開けていたから
大通りに面しているここでは、音楽がぜんぜん聴こえなかった
窓を開けない贅沢というのも、あるんだね


ふわふわと、そんなことを考えていたら
作家さんから、すぐにメッセージが返ってきた
レスターも、イギリス全体もストレスがたまってる感じよ、
多分この国にはもっといいリーダーが必要、多分ね、という一文に
ウィンクの顔文字がいくつもついていて、笑う
いつものわたし達だ

さりげないやりとりを、何気ない瞬間を
焼きつける、毎日

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茅の輪をくぐる

例年、混んでいる神社だけれど
今年は人もまばらで、皆が軽装
茅の輪の前にも、列はできていない


水無月の夏越の祓する人は
千歳の命延ぶというなり

黙唱しながら輪をくぐるわたしの後ろから
忘れちゃった、なんて言うんだっけ、と母の声が聴こえ
説明書きの看板を指しながら、思わず笑ってしまう
最後の一回を忘れて先に行こうとするし、
これでは、彼女の分までわたしが願っておかないといけない

ひとがたを書いて息を吹きかけ
せっかくだからと短冊も書く
この流行り病で、わたしの向こう数ヶ月、
ひょっとしたら数年は、結構めちゃくちゃになったけれど
それでもこういう機会に願うのは、唯一、皆の健康だけだ

どうか、健やかに

 

京都では、また感染者数が増え
知事が、ただ“気をつけなさいよ”と言う会見をするに至った

先週までは、うちの店も予約が詰まっていたけれど
今週、来週分は、まだ随分余裕がある
普段から通ってくれていたお客さんが、ある程度落ち着いたのと
外出は控えめにするという人が、また増えているからだろう

ここに、尽きない悩みを細かく書くつもりはないけれど
あれも困った、これも困ったという感じで
最良と思う手すらも問題だらけ
だけど、傷のないプランなど元々ありえないわけだし
とりあえず、冷静に選択をしつづけるしかない


日曜と月曜は休日
今週は、それをおおむね守った

四月以前には、とても無理だったこと
それが曲がりなりにもできるようになったというのは、
とにかく、良かったと思おう

波乱万丈だった上半期を超え、やってくる半年を
すこしでも、ゆとりを持って受け止められたらいいね