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降りしきる雨のなか
スーパーで花を、3束買い
自分の店まで歩く

花を包む透明のビニールに、水滴がついて
持ち直すと、弾け飛ぶ
なんということもない、いつもの道だけれど
すこしだけ心愉しい


給湯室でビニールをはずし
一輪挿しの撮影で飾る分を、分ける
あとは、ばさっと大きな花瓶へ
次の営業日まで間があるので、家に持って帰るのだ

たくさんある私物の一輪挿しの中から
いくつかを選んで並べ、分けておいた花を飾った
写真を撮るというのもあるけれど、
それ以上に、生花がそばにあるのは嬉しい

側にばらばらと花を置いたまま、パソコンに向かう
静かな、仕事の月曜日

 

昨夜は、仕事で明け方にいちど起きなければならず
その後寝直したら、悲しい夢を見た

ひとつのことを誰かに許したら、
たくさんの人がやってきて踏み荒らされる
そんなような夢

ある人が、わたしのところにやってきて
こんなことになるとは思わなかった、申し訳ない、と言った
大丈夫、本当に怒ってないの、と答えたわたしの声は
ぞっとするくらいにやわらかく、甘かった


わたしは、悲しさの濃淡のなかで生きていて
今は、怒りの感情は存在していないわけではないけれど
悲しみのある種の形としてだけ意識しているように思う

夢の表層
言葉にすることのない思いが、
焼いているホットケーキの、ふつふつした固い気泡みたいに
割れて、あとをつけていく

 

仕事を終えると、もう夕方
そのまま持ってきた花瓶を、部屋のいつもの場所に置いた

3束で1000円ほどの花は
ロンドンで通いに通った、フラワー・マーケットを思わせる
いつも10ポンド札を握りしめて、むこう2週間の花を考えていた
怒号に近い声が飛び交うマーケット


水があがったからだろうか
心なしか、花は、買ったときよりも元気だ
わたしにも、元気をわけてくれる

今は、これでいい
静かに、そして、できればすこし愉しく