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ふた月ぶりに会う恋人と
今度は、福井に行ってきた

恐竜博物館に行きたいわたしと
ドラクエウォークをエンジョイしている彼
主目的は違えど、旅好きには変わらない

ほどほどの気合で美味しいものを食べ、
のんびり観光し、あとは行き当たりばったり
わたしたちは、いつも、こう


金色に揺れるすすきと、銀色にうねる川
松林に響く鐘の音、カフェオレの湯気

繊細ではかなく
写真にも、動画にも、残しようがない
そういう一瞬に、たくさん出会った旅だった

 

市場で買ったカニクリームコロッケ
レンタカーに戻って、食べていたら
流していたミスチルのライブ音源で、櫻井さんが、
皆を音楽という乗り物にのせて
寂しさや悲しみや退屈からできるだけ遠い場所に連れていきたい、と
そういうようなことを、言った

ふと降ってきた言葉に、
音楽と、わたしにとっての彼の存在を重ねて
胸のあたりで温かいものが広がっていくのを感じたけれど
となりでやっぱりコロッケを食べていた彼には、
そのことは言わないでおくことにした


2010年代
そう括るのは、乱暴だとも思うけれど
2010年に、ちょうど、ロンドンへ渡ったわたしは
今年の年末は、やっぱり感慨深い

その10年を、離れた場所で、
まるまる、ともに過ごしてくれた彼に感謝している
普段は必要以上に寄り添おうとせず、
でも、今だと呼べばその明るさで、わたしを遠くへ連れ去ってくれる
わたしには、彼がこういう人だからできたこと、というのが
わたしひとりのことでも、本当にたくさんあるのだ

 

来年も、きっと、
ふたりで、色々なところへ行こう
わたしはいつも、ひとりで旅をしているし
彼もそういう人だけれど、
そういうひとりとひとりなら、一緒もけっこういいじゃない

なにもかも
あたりまえに続くことではないと、わかっている
それでも、新しい10年も
やっぱりこの人とともに、と、願う
2019年の、終わり

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お客さんがお裾分けしてくれた、小さなヤドリギ
ぜいたくして買った紅茶
クリスマスにといただいたお菓子たち
なんでもないイブに不似合いな凝ったケーキ
ちょうどクリスマスに届いたリングフィットアドベンチャー

クリスマスまで、毎日ひとつ
なにか自分がうれしいものを見つけよう、と
そんなことを考えてから3週半
まあ、当然、毎日特別なことが起こるでもなく
だらだらとした文章をただ書いていたわけだけれど、
それでも、やはりクリスマスへと向かう日々は
振り返ればけっこう美しかったように思う


とにかく、仕事をしないといけなくて
けれど、取引先から届くものに、端からわくわくした
(自分でオーダーをしたもののはずなのに!)
年末のご挨拶がてら、馴染みのお客さんたちが来てくださって
たくさん、気を遣っていただいた

最近は、この世は修羅、と
ふざけて(でも、本気で)言ったりしているけれど
この数週間は、たしかな手応えと、人のやさしさも感じている


--


クリスマスがくるたびに
思い出すできごとがある

もう6年も前
ポルトからロンドンへと戻る飛行機で
そのときの自分にはあまりに重い本を読んでしまい、
着陸で暗くなったからと、声を殺してこっそり泣いたときのこと

ルートン空港に降りると同時に
その日にかぎってまわりから、盛大な口笛と拍手が起こったのだった
機内放送でなぜかファンファーレまで流れて
なんなのこれ、どういう状況なの、と
もう全部がばかばかしくなってしまって、
気がついたらぼろぼろ涙をこぼしながら、笑っていた

そして、すっと静かになった瞬間、機長が放送で
“Good night, and of course, merry christmas” と、言った
その一瞬が、わたしには忘れられない


正直、人生は、しんどいことのオンパレードだ
それでもけして口にしないと決めていることが、たくさんあるなら、
ひとりで苦いかたまりを転がして小さくして、飲み込まないといけない
皆、きっと、そうなのだと思う

まわりの騒ぎと、機長のやさしい声
クリスマスに向かう、抗えないような人びとの意識の流れは
そのときぎりぎりの淵にいたわたしを、たしかに救ってくれた
くわしく理由を説明することは難しいのだけれど、
いまはこれでもいい、と、たしかに思わせてくれた


世界のどこかに
あのときのわたしのように救われている人が、きっと、大勢いる

クリスマスは、それを
ひっそりと信じて、願う日

 

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12/15
近ごろはなかなか休めない、日曜だけれど
青空に誘われて、散歩

めずらしく、お茶を飲む気分でもなく
ただ、落ちかけている葉を揺らす風や
綿毛を縁どる光をながめる

なにげなく角を曲がると、
山茶花の木が何本も植わっていた
艶やかな花と、冬の光が
この日の特別

 

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12/16
スウェーデンから届いていたマグ
ようやく全部開け、ひとつも割れていないことを確認した
マグの数のわりに箱が巨大だったので、驚いたけれど
開けてみたら納得の、完璧な梱包だった

このマグに出会ったのは
9月、ストックホルムを発ってタリンへ向かう、
わずか2時間前のことだった
だから、わたしはこれを作った女性にまだ会っていない

こういうことはめずらしく
不安でなかったといえば、うそになる
いくら作品が気に入っても、
作っている人と信頼関係を築けなければ、続かないから

けれど、わたしの直感は間違っていなかったな、と
やってきたマグのすばらしい出来を見て、あらためて

最初は、寒色系のものだけを買うつもりが
ふつうに暖色系のものも買ってしまった
わたしは本当にこのマグを愛しているんだよ

 

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12/17
去年も今年も欲しかったけれど、
わたしには使いこなせないだろうと諦めていた手帳
来年のものの柄があまりに美しく
思わず手を出してしまった

これを描いた人(取引先で、今は友人でもある)とは
2月にまた会えることになっている
今年は彼女とは2度会えたし、
ずーっとメッセージのやりとりをしていたな
来年も、密にいろいろな話をして、
一緒に楽しいことがたくさんできればいい

それにしても
2020の文字を見ても、まだぴんとこな
永遠に来年に届かない気すらするな

 

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12/18
近所のチーズケーキ専門店で売っている、おからクッキー
こんなのもあるんだ、と何気なく買って食べてみたら
驚くべき美味しさで手が止まらない

うす暗い定休日の店での仕事には
楽しみをくれるなにかが、要る

今週も、出入りはしていたものの
開梱やデスクワークに追われ、毎日仕事
これだけ働いているのに、
棚卸は進んでいないのだから、この雑務の多さよ

 

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12/19
たぶん、オープン当初から
ちょくちょくいらしているお客さんに
最近描いたという絵をプリントした、カードをいただいた

実は、デスクの誕生花の絵も
その方が描いて、くださったもの
うれしくて、ここにずっと飾っている

彼女はわたしのことを、おねえさん、と呼んでくれる
もちろん、よくある呼び名ではあるけれど
ふしぎと特別うれしい

誰かに幸せを願ってもらえることの有難さを、
カードを読んで、しみじみ、思う

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12/10
用を済ませるため街なかへ
やはりちょうど仕事が終わった妹と、合流
美味しいほうじ茶ラテのお店を教えてもらう

粉のように細かく挽いてある茶葉
これまで飲んでたほうじ茶ラテは何やったんってなるねん、という
妹の言葉に惹かれてついていったけれど
たしかに、これはほかとは別ものだった

こと食べ物や飲み物に関しては、
あまり冒険をしないわたしだけれど
妹に連れていってもらう冒険は愉しいものだ

 

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12/11
土曜に届いていた、ふたつの大きな箱
うす暗い店で、開梱を終わらせる

比較的大きなオーダーだったとはいえ、
今回は、うち8点も割れていた
ひとつひとつ写真を撮り、作家さんに連絡
ごめん超ごめん本当にごめん、という内容のメールがすぐに届き、
親しんだ彼女のまじめさに、ほっとした

大きな仕事が続き、忙しくなれば
制作も、パッキングも、効率的にやらなくてはいけない
それに、もともと割れ物だから、それだけでリスクは高い
よくわかっているから大丈夫、と、伝える

縁の金彩がないマグは、間違えて作ってしまったそう
入れておくからよかったら使って、と書き添えてあった
レンジにかけられて便利なので、仕事中にとてもよさそうけれど
使えば使うほど、次回これもオーダーしてしまいそうで怖い

 

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12/12
オープン初年からいらしている、素敵なご夫妻から
可憐、という言葉がぴったりの花束をいただいた
ずっとこうして来てくださって、お話できるだけでも嬉しいのに、
いつも気遣っていただいて、有難いやら申し訳ないやら

うちで買ってくださったものが、
お二人の棚や、食卓や、ジュエリーボックスや、
お仕事の場所にあるのだな、とふと思うと
それだけで、明かりが灯ったような気持ちになる
幸福な、ものの一生、というのを、
たしかに信じられるような気がする

きちんと、いい仕事をしたいなあ、と
お二人に会うと、いつも、思うのだ

 

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12/13
仕事前に、妹とおやつ
ピクニックをしようとお団子とどら焼きを買うも
雨で行き場を失い、仕事場の共用スペースで食べた
お隣さんや大家さんとワイワイ
たまにはこんなこともある

夕方の休憩には、いただきものの可愛い台湾のお茶を飲んだ
ぜいたくな一日だ

それはそれとして
また荷物がひとつ届き、仕事はひきつづき修羅場
2019年はまだまだ終わらない

 

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12/14
お店がとにかく混んだ一日
スタートこそ、ややゆっくりだったものの
その後、とくに17時前までは、目の回る忙しさだった

そんな中、スウェーデンから、巨大な箱が届いた
このひと月近く、輸入手続が大変だったものなので、
ついにここに来てくれて、うれしい

贈りものとして入れてくれた、お箸置き
ひとつに顔が描いてあって、思わず笑う
彼女はお茶目で、とてもチャーミングだ

こういう一瞬で
これまでの苦労なんて、吹っ飛んでしまうので
つくづく、単純でよかった、と思う



その日の自分への贈りもの、を書くつもりが
ほとんど、ふつうの日記

もっと気楽に日記を書いてもいいんじゃないか、と
最近は思っていたから
まあ、ちょうど良いのかもしれない


また新しい一週間
ちまちまと自分を甘やかしながら
逞しく過ごしたい

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12/6
前日にお客さんからいただいた、かわいい羊羹
ふっと空いた時間に、開けた

一緒にくださったカードも、もういちど開け
美しい文字に、惚れ惚れとする

わたしも、お習字に通っていたはずなのに
いったい、あの時間はどこへ行ってしまったのか、
好きな字を書けたためしがない

それにしても
こんな風に、遠くのわたしを気遣ってくれる方がいるのだなと
こういう機会があると、いつも新鮮に驚く
がんばろうと思うよ、本当に

 

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12/7
土曜らしい混み具合のなか
陶器でいっぱいの大きな箱がふたつ、届く

店内にも廊下にも置く場所がないので
とりあえず、共用スペースに積んでもらう
夕方に謝りに行くと、お隣さんは、
ふたつの箱がゆきだるまみたいと笑っていた

中身は、100個を超えるマグと、
それから、はじめて注文した小さなボウル
マグを愛用しているけれど、これもとても素敵で
自分にもひとつ、買うことにする
誰よりもこの店の商品を愛しているのは、
やっぱりわたしじゃないかしら

 

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12/8
悩みに悩んで買ったピアスが、イギリスから届いた
恐竜と天体とキラキラしたものが好きな子供が
大人になると、こうなる

値段が張るので、ずっと迷っていたわたしに
恋人は、半分ずつ出し合って片耳は俺がもらおう、
だけど、つける穴がないから貸してあげる、と
わけのわからない提案をしてくれた

それは丁重にお断りをしたわけだけれど、
決心がついたのは、あのやりとりがあったから
彼は、わたしがどうしても欲しいものというのを
きっと、よくわかっているのだった

 

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12/9
あまりに天気がよいので
仕事をいったん放り出し、河原へ

てくてくてくてく歩いて花屋さんまで行き
お隣さんと自分の店に、ドライの束を買って帰る

インフルエンザの予防接種を受けたせいか
熱が出て、身体が重い

きのう届いて、楽しみにしていた文學界
ベッドで読む、夜
読むものがありさえすれば、
体調の崩れは多少ならどうでもよくなるな

 

お隣さんと、立ち話
この2年を振り返ると、
あっという間だったような、ずっとここにいるような
不思議な気持ちだねと、話した

10年後には何してるんですかね、
こうしたいみたいな希望ってありますか、という言葉に
どうだろう、と、首を傾げる
こうして店をやっているのも、
いま自分の持てるものを最大限に生かせるのがそれだからで
わたしは、店を持つということに、
正直なところ、執着がない

わたしの“こうありたい”というのは職業ではなく、
自分が、簡単には得られない知識を持っているかどうかと
誰かに伝える場所がちゃんとあるかどうか、
そして、それが、
残そうと思わなければ残らない類のものを守って次に繋ぐ、という
巨大すぎる目標にすこしでも貢献するかどうかで
だから、そのときのベストを選択する、というのは
わたしにとってはもっとも誠実なことなのだ


“こうありたいっていう形があるなら
ラクするためにそれ崩しちゃいけないと思う、
これは自分にはいらないって思うなら意地をはったらいいし、
その意地のために手間ひまかければいいと思う”

2013年のわたしのツイート
いまも、変わらず、そう思っている

10年後も
きっと、そう

気持ちが落ち込む2週間を過ごして、12月を迎え
自分に何かをあげたいな、と思ったとき
ふと、スウェーデンデンマークの、
アドベントカレンダーが浮かんだ

ひとつひとつリボンがかけられた、小さな贈り物に
1から24までの数字がついている
誰かのために誰かが用意する、
ぜいたくなアドベントカレンダー

それで、今年は、クリスマスまで
ひとりでそういうようなことをやろうと決めた
まあ、自分を甘やかすための言い訳みたいなものだけれど、
それはそれで悪くない

 

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12/2
自分になにかあげられるものはないか、と部屋を見回し
9月に買って以来、勿体なくて着られていなかった、
コバルトブルーの綿ニットをおろすことに

今年買った長袖の洋服は、
これと、緑のワンピース、カーキのシャツ、
それから黒とチェックの切り替えワンピースの4枚
そういえば、ウールのものなどはまだ買っていない

 

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12/3
8月にオーダーしていた陶器が届いた
開けてみると、注文していないグレー地のタンブラーが入っていて驚く
どうも、小鉢とタンブラーを間違えて作ったらしい
これはこれでかわいく、愛おしくなり
ひとつ自分で買うことにして、お茶を淹れた

これを作った彼女は9月に、ニューヨークで、
女性のパートナーと結婚式を挙げた
送ってくれた写真は、美しく、そして彼女たちらしい、
明るく生き生きとしたものだった

 

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12/4
用事があり、仕事の合間に街へ
妹とも合流し、ロンハーマンのカフェでお茶をする

ひろびろとした席
レモンのタルトと、お皿に描かれた雪だるま

山積する書類から離れる時間を持てた、
風通しのよい一日

 

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12/5
自分へのなにかを
考える余裕もなく、仕事へ

すてきなお客さんから
ここすごく美味しいので、と、お菓子をいただく
お昼がローソンの納豆巻きだったためにお腹がすいていて
合間にしっかりとレモンケーキ

本当に、ぎゅっとしまった生地でとても美味しい
京都だけれど、知らないお菓子屋さん
行ってみたい店が、また、増えた

 

輸入手続と棚卸に圧迫される日々のなかで
自分にあげるものを、探して
自分でリボンをかける

それだけのことで、
いつもとなにが違うわけでもないけれど
すこしでも、よい12月になるように

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店を開ける直前
いつものように掃除機をかけ、ものを見回す

床に、剥がれたような、小さなガラスのかけら
まわりを見てみると、
カップのガラス部分が二箇所、ヒビが入って欠けていた


涙をこらえながら、カップを裏へ持っていく
とくに最近はよくあることだけれど、こういう瞬間は
商品だからしょうがない、と、思えない

1960年代の東ドイツから、
はるばる、海も時間も超えて来てくれたのに
壊れた瞬間に悲しんでももらえず
そのまま置いていかれるなんて、あんまりだ

先週も、これとまったく同じカップ
お客さんの手から落ちて、粉々になった
ちょうど、値札をつけ忘れていたのだけれど
割ってしまった方は、これがいくらのものなのか、
訊いてさえもくれなかった

もちろん、お金をいただくことはないから
どうか、もう少しだけ、ものとお店のことを考えてほしい
そう願うのは、我儘なんだろうか


こういう破損のことも、そうだけれど
勝手に商品のアップやわたしの机の写真を撮ったり
わかっていて営業時間外に来たり
訊くべきではない質問をたくさん浴びせたり
そういうお客さんが、いまは毎日、何人もいて
本当にまいってしまう

それよりもはるかに多くの方が、
やさしい言葉をくれて、笑いかけてくれていることを
つらいと、ときどき、忘れそうになる

忘れないように、と
繰り返し、繰り返し

 

眠ってもうなされて
暗いアドベント・サンデー

ろうそくに火を灯すように
また、すこしずつ、
ガチガチになってしまった心をほぐしていく

明日から、うんと愉しく
ぜんぜん簡単ではないけれど、
それでも、そうしたい、と思っている