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なにはともあれ、休む
そう決めていた日曜日

目覚ましをかけずに寝たのに
早くに、目が覚めてしまう
いやいや、なんでこうなるんだ


木曜のおやつに食べられなかったドーナツを
もそもそ、食べる
午後からはお天気が崩れるという予報を信じて、
歩きに出かけることにした

とりどりに紅葉して、
パッチワークのようになっている散歩道
美しさに気持ちが安らいだ一方で
秋が深まっているという事実を目の前にして
ちょっと怖くなってしまう

過ぎてゆく季節を惜しむ間もなく
走って、走って、走りつづけた今年にまとわりつく
なにかを零していないか、という
漠然とした、不安

 

先週は、狂ったように忙しい週で
ずっと、気をゆるめることができなかった

そんな中で
何通か、手紙や、メールをいただいた
とくにお手紙に関しては、
わたしは今、返事を書くことがむずかしい状態で
そのことを申し訳なく思う気持ちが強いのだけれど
それでも、うれしかった


こうして書いたものが、わたしの撮った写真が、
誰かのところに流れ着いているかもしれない、ということ
そして、わたしにはまったくそんな意識がなくても
だれかの生活に、すこしだけ、
なにかを足しているかもしれないということ

正直なところ、それは
とてもとても恐ろしいことでもある
単純に、わたしの意図と離れているからだ
わたしはどちらかというと、仕事で扱っているものの力のほうを
確実だと思っているし、信じている

だけど、それでも、わたしの存在が
なにかをはじめる、あるいは続けるきっかけになった、と
言ってもらえるのは、うれしい

はじめることと、やめないこと
そのふたつ、たったそれだけのことが、どれほど困難かを
わたしも、よく知っているから

 

店に立っていると
心を削られることというのは、やっぱり沢山ある

でも、今は、
わたしは、ここに立ち続けたいんだろう

嵐のような一週間を終え
そう、あらためて

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降り積もる仕事
根雪のように残りつづける仕事


通関業務と取引先
そして、お客さん
一通一通メールを書いて、送る

わたしが一日に受けとるメールの数は
ちょっと、常軌を逸していて
だから、いつも不安だ
返事が抜けないよう、日に何度も受信トレイを遡るし
送信ボタンを押すまえには、二度三度と読み返す
大事なものは、リマインダーに登録して、
夜にそれなりに時間をかけて、書く

なるべく、零れ落ちるものがないように
本格的に通販をはじめれば、
今どころではなくなるのかもしれないけれど

 

木曜から通関作業をしていた貨物に
ようやく、光
カップと小さなボウルを送ってもらったのだけど
作家さんの住所が変わったために、以前の検査結果が使えず
なんとか交渉をしていたのだった

事情を理解してもらい、書類を自分でフォーマットから作り
添付して、とりあえず、今回は輸入許可が下りることに
やれやれ一件落着、だけれど
これが通じるのは、おそらく次回くらいまでだろう


お客さんの口に入るものをのせる器は
とにかく、輸入にコストも時間もかかって
だから、こんな風になにかが起こると
もう、続けていけなくなってしまう

どうしようもないことだけれど
やっぱり、寂しい
来年までに、良い方法を思いつくかしら

 

今のわたしの毎日は
ほんとうに、こんな風で
9月には、いつかは落ち着くだろうと思っていたのに
仕事は増える一方

けれど、この忙しさは
得がたいこと、ありがたいことだと思う
わたしは後ろ向きなので、
店の好調を、いつまで続くかわからないと考えてしまうけれど
日々、こうして鍛えられていることで
これからやっていく体力をつけているのだと、思いたい

ひとまず、年末まで
そして、次の出張(と、3日間の冬休み!)まで
きっちり走り抜く

いつも、同じようなことばかり言っていて
そういう自分を好ましくは思っていないけれど
口に出すことで、気持ちをまっすぐに保てるような気がするから
今は、このまま

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仕事がまったく片付かず
日曜日も、返上

輸入手続の書類に疲れて
休憩を取ると決め、河原へ歩いていく
ちょっとくらい身体を動かさないと、
頭だってすっきりしない


桜並木が、赤や橙になっていて驚いた
季節は、わたしを置いて、
どんどん先に行ってしまう

そうでなくても
自分だけ、この世界にうまく乗っていないような
心ぼそさを、いつも感じているのに

 

つぎつぎ近づいては去っていく、ランナーたちを横目に
複雑な水紋を生む鴨たちを眺める

対岸の、土のテニスコートから
ぽこん、ぽこん、と丸くてしっかり重い音がする
ソフトテニスのボールを打つ音だ
中学校の校庭そのもののような、音


そのまま、河原を歩いて
すこし距離のあるパン屋さんへ行くことにした
パン屋さんだけれど、お菓子も絶品の、
秘密の、地元の店

母が好きなチュイールを2袋
ひと袋100円のメレンゲは、
妹の顔を思い浮かべて、3袋買い
大きな包みを抱えて、河原に戻る

歩くことが好き
ささやかな幸せが詰まった散歩道があるから、
わたしは、地元が好きなんだ

 

音楽さえも
最近は、聴く気分になれないことも多い
逃したくない新譜を見つけるべく、
SpotifyのRelease Raderをかけてはみるけれど
やっぱり気分がのらなくて、止めてしまった

ちょっと考え
かけたのはSimon & Garfunkel
わたしは、The Sound of SilenceとScarborough Fairの2曲を
聴きたくないと思ったことがないからだ


秋の淡い空と、うろこ雲に
音楽が、一瞬の跡を残していく

遠くから、ぽこん、ぽこん、と
まだ、ボールを打つ音がする

雑然とした仕事場へ
ずいぶんと凪いだ気持ちで、帰った

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金曜日
おやつ活動をするために、
妹と、のんびり近所のカフェへ

オープン時間の5分後に着いたというのに
長い行列ができていて、驚く
最近、ますます人気なのは知っていたけれど
いくらなんでもあんまりだ


ふたりで途方に暮れ
妹の発案で、果物屋さん併設の喫茶店に入る
こちらは、オープン時間をとうに過ぎているのに暗い
マスターらしいマダムに、やってますか、と声をかけると
2人がけの席をすすめてくれた

650円の美味しいフルーツパフェ
気さくなマダムは、帰り際、
寒いから暖まって行きなさいと、玄米茶を振る舞ってくれた

ちょっと雑で力の抜けた、
いい、おやつの時間

 

水曜に仕上げた、クリスマスのコーナーは
2日間でいくつかのものが売れて
すでに、当初とはちょっと変わっている
これも、ディスプレイの面白いところだ

出すのを忘れていた、来年のカレンダーを
空いたちょうどいいスペースに、置く
なんだか一気に年末感
いやいや、認めたくないけれど、
もうそうも言っていられないな


そろそろ、棚卸をはじめないといけないのだけど
そもそもこの数週間で届いたものが、
まったくデータベースに登録できていない
それなのに、来週再来週、
立て続けに大きな荷物が4つ来ることになっている

キャパシティへの挑戦
さて、わたしの運命やいかに

 

店に立ち寄ってくれた妹が
エッこれかわいい超かわいい、とアドベントカレンダーを指す
かわいいでしょ、◯◯円です、と伝えると
ほんまさぁ、と言いながらこちらに向き直る妹
わぁ怒られる、と一歩後ずさる

これ絶対そんな値段で売ったらあかんやつやで、と
やっぱり怒られた
妹は、いつもこうして
わたしのこと、わたしの店のことを心配してくれる

頑固なわたしはわたしなりに、
誠実かつ利益を確保できる価格を考えているのだけれど
お客さんの得を優先しがちなので、妹の叱責はありがたい
右から左に聞き流しているようでいて、
姉はいつもちゃんと聞いて和んでいます
和んでる場合ちゃうでって言われそうだけど


なんでもない昼下がり
姉妹の会話が、わたしの店にある

それだけのことが、
しみじみ、うれしいな

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輸入手続、片づけ、ディスプレイ
うす暗い店でひとり仕事に精を出した、二日間

わたしの店が入っている、小さなビルは
自営業ばかりが6部屋
階段を降り、給湯室にやってくる人の気配や
隣から漂ってくる、お菓子の焼けるいい匂いが
ふと、心に空間を作ってくれる

それにしても
もう、足もとが冷える季節なのね
9月の出張帰りからこっち、
瞬きしている間に過ぎた感じ

 

ディスプレイをしていると
いつも、思いだす人がいる

もう随分前に、こういう小さな店で働いていた頃
その店のディスプレイを担当していたのは、店主の恋人だった
都心の大きなインテリアショップでも働く彼女は、
おそろしく仕事のできる、おそろしく明るい人で
溌剌と、ウィンドウにひとつの世界を作りあげていた

わたしは、お店に立つときの姿勢や
梱包の方法なんかをその人から教わったけれど
ディスプレイは、結局、背中を見て学ぶという感じで
直接は習うことができなかった
でも、それでよかったんじゃないかと思う
彼女の理論を聞いたら、きっと、
それがわたしにとっての正解になっていただろうから


わたしが留学を決め、お店を辞めた頃
その人も、店主との別れを選んだ
その後どうしているかは、全然知らなくて、
でも、幸せならいい、と思う

笑ったときの八重歯や、きびきびとした仕草
場の空気をまるごと抱えて持っていく、話し方
わたしが圧倒されていた、彼女のままで、
ずっといてほしい

 

ひととおりディスプレイを終え
お世話になっている花屋さんに、電話をかける
大きなスワッグをひとつと、小さなものもふたつ、お願いした

配達はいつでも大丈夫です、と言うと
じゃあたぶん今週末くらいかな、
出来上がったらまた電話しますね〜、という返事
必要最低限の、でもほのぼのとしたトーンの会話が
なんとなく心地いい


電話を切って
クリスマスかあ、とつぶやく
忙殺されていて、会いたい人にも会えないわたしだけれど
それでも、やりたいことがあるんだよ

あとひと月半の2019年を
止まらずに駆け抜ける

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また、荷物が立て続けに3つ届き
デスク周辺に、足の踏み場がなくなった

届いた商品のシステム上の在庫数を変えるまで
ファイルに仕舞うことができない、納品書
気がついたら、バッサバサの束になっていて笑う

ひとりの人間がこなせる業務の
限界を見ている、最近

 

8月からずっと待っていた、
ロンドンのテキスタイルメーカーからの箱

開けてみると、注文したたくさんのポーチの上に
お菓子と、カードと、紙の包みが乗っていた
なんだろうとガサゴソ包みを開けると
いま販売しているものより、ずっと小さなポーチ

このメーカーは、インテリアテキスタイルが専門で
椅子の張り地などとして使うものを作っているので
布がそもそも厚く、柄も大柄だ
だから、小さなポーチには適さないかもね、と
9月にデザイナーと話をしていたのだけど、
彼女はその時に欲しいとわたしが話したサイズをしっかりメモしていて
こっそりサンプルを作ってくれていたのだった

全然大丈夫だよ、めちゃめちゃかわいい、とカードに目を落とすと
I think it’s lovely! と書いてあって、笑う
うん、かわいいね


ベルリンの革作家さんからの箱も
開けると同じように、商品の上にカードと包み
やっぱり、こういうものがあったらいいな、と以前話していたものを
作ってみてくれていた

サンプル作りは、もちろん、手間とコストのかかる作業で
だから、もらうたびにとてもとても感動してしまう
うちなんて、営業をかけるには小さすぎる規模の会社だから
あなたならどんなものが欲しい?と訊いてくれることも
わたしの答えを覚えていてくれることも
そして、こうして試しに作ってみてくれることも
全部が、ほんとうに特別に感じる


うちオリジナルの商品に
わたしはずっと、あまり興味がなかった
単純に、わざわざそうして差別化を図らなくても
わたしが取引をしている人たちはいいものを作っているので、
それを素直に売ればいいと思っていたからだ

今も、その考えは変わらないけれど
わたしの感性や考え方を信頼している、と口にしてくれる人たちが
意見を求めてくれることを、うれしいと思うようになった
気軽な、ちょっとした会話から、新しいものが生まれる
それなら、わたしの存在にも、すこしは意味があるし
彼らとそういう関係を築けているというだけで、
この仕事をしていてよかったと、思う


サンプル、正直大切すぎて使うのがもったいないんだけれど
使わないと意味がないので、思いきり使おう

仕事に埋もれる日々だけれど
こうして宝物が増えるなら、
明日もがんばれる気がするよ

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姪2歳の誕生日を祝うべく
妹夫婦の家へ

お昼寝後で劇的に機嫌が悪い姪を
ケーキの前に座らせ、みんなで必死に話しかける
カメラを構える大人たちに、容赦なくメンチを切る姪
もう笑いが止まらない

とりあえず、テレビでミッフィーを流し
なんとか、表情をやわらかくすることに成功
7人の大人より、ひとりのミッフィーなのよ


近ごろ、姪は
ずいぶん語彙が増え、なんでも意思表示をするようになった

姪に「あそんで〜」とのしかかっては
「なーい」(=やだ)「おもぉい」と断られるわたし
“妹に愛情を貢いでいる”と言っていた頃から
たいして進歩していないような気もするな

まあ、妹も姪も、かわいいものはかわいいんだから
もうずっとこうでもいいか


妹が、わたしのケーキをのせてくれたお皿は
10年もまえにプレゼントしたもの
うれしいし、なんだか感慨深い
ふたりとも、ずいぶん遠くへきたものだ

小さな頃からそばにある店のケーキを
とくべつ美味しく感じる、午後だった

 

妹は、たいへんな思いをして姪を産んだ
その日わたしは仕事で店に立っていたから、
病院に会いに行ったのは、生まれた後だったけれど
あまりの苦しみように付き添っていた母が動揺し、
泣きながらわたしに電話をしてきたときは
こちらも、妹に何かあったらどうしようと不安になった

その後、母が大きな病気をして、手術をした
わたし自身も、体調が思わしくない時期が長く
あたりまえの日々は、あたりまえには続かないことを、
あらためて、深く、感じることになった

だから、とにもかくにも無事に姪を産んだ妹と
とにもかくにも無事に成長している姪は、
わたしには本当にキラキラとして見える
もちろん、両親も恋人も、友人たちもそうだけれど
刻々と変わってゆく日々を経ても
誰かがあたりまえにここにいてくれることが、
どれほど、得がたく、尊い


つらいことも多く、疲れている最近だけれど
きちんと丁寧に、ひとつひとつの出来事を、
そして思いを、検分したい
目の前にある事実はどうして生まれたのか、
その人は、わたしは、どう思っていて、それはどうしてなのか
反射で言葉を投げるまえに、
必要なのか、それで本当にいいのか、自分に問いたい

いろいろなことがあるからこそ
そうして、穏やかな日々を、わたしがつくりたいと
強く、思うよ