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昨日のおやつは
いただいた、スウェーデン夏至のクッキー

添えてくださっていた、小さなカードを見て
わあ、こういう方だったのかと、知る
それならわたし、失礼じゃなかったかしら、と不安な気持ちと
もっとお話したかったなと、残念な気持ち
素敵な方だった

小さな小さな店だけれど
ここでの毎日は、こうして、出会いに満ちている

 

昨夜は、日記を書くメモを開けて
出てくる言葉をとりあえずぜんぶ文章にして、
そして、満足して、消してしまった

愚痴しか出てこない日もあるし
今、わたしは本当はこうなんだよ、と、
ひたすらに話したい日もある

けれど、その言葉を向けるのはいったい誰なのか、と考えたとき
もしかしたら向けたくない人に向いてしまうかもしれないこと、
そしてそもそも、誰か、というのは仮想のものだということに思い至って
まあ、それを押してまで書きたいわけでもないな、って

自由帳に、理路整然と文章を書いては
破り捨ててばかりだった小学生のころみたいだけれど
そんなものでしょう、きっと

 

きょうも
店には、やさしく流れる時間があった

わたしのつたない話を、
そして、対象への愛情を
聞いてくださる、方々がいた

気持ちが疲れていて、雑になりそうなときこそ
なにを大切に思っているのか
わたしなりに、どういうことを守りたいのか
突き詰めて、きちんと考える


急にざあざあと降って、上がった雨
なんとなく、不安な気持ちにもなったけれど
余分な熱を連れていってくれたようにも、感じた

簡単ではない日々の真ん中で
前向きに閉じこもる

雨の季節は
まだ、これから

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大好きな人たちに会うために
今年はじめての関東遠征

一月に行くはずだったけれど
恋人がインフルエンザにかかり中止になった、房総
リベンジを果たしてきた

 

彼との旅行は
いつも、とても気楽
海産物などへの情熱のある彼が、昼食と夕食の店を
カフェインがないと生きられないわたしが、カフェを探し
あとは、ふたりで行きたい場所をいくらか出し合って
のんびりと車で巡る

途中、なんとなく綺麗なところや
面白そうなところがあったら、適当に止まる
川だね、とか、浜だね、とか、そんな感じだけれど
その土地ではきっとあたりまえの、
何気なく、でも特別な美しさが、そこにはある


今回は、東京駅で拾ってもらって
レインボーブリッジと海ほたるでひとしきりはしゃいだあと、
富津、館山と走り、白浜のほうまでずっと海岸線を行き
二日目には、鴨川シーワールド
わたしたちはふたりとも、海辺と水族館が好きなのだ

吹きすさぶ砂嵐に大騒ぎをし(一日目は凄まじい強風だった)
さすが“端っこマニア”だなと笑われながら灯台を巡り
アシカやイルカやアザラシに、ふたりして目尻を下げた

いつもよりちょっとだけ温度の高い、
幸せな旅


海の近くの、古い家を改装したようなカフェで
ふたりでひとつのパフェを食べ終わったころ、
彼が何気なく、ほんとうに何気なく
「楽しいね」と、言った

ぽろっと、そんな言葉が出てきたのがうれしくて
胸がいっぱいになって、そのときには何も言えなかったけれど
わたしは、いつも自分なりの言葉で話してくれる彼の、
そういうひとことを、本当に信じているんだよ

 

そして、きょうは、大学時代からの友人たちと
いろいろな話ができた日

お互いの仕事の話もしたし
悩むよねっていう、話もした
もちろん、笑っちゃう話も

新聞社勤務、国家公務員のふたりと
留学を経て自営業のわたし
仕事も性格も好みも、三者三様で
むかしよりずっと、それぞれの人生の色が濃くなったけれど
それでもわたしたちはずっと、
こうして笑いあっている


もう新幹線に乗り込むという段になって
面白すぎる話がはじまってしまい、
ほとんど笑い崩れながら、手を振った

じゃあうまくすれば三週間後に京都に行くわ、と
さっきまで話にさえ上っていなかったことを、ふたりは言って
同じくほとんど笑い崩れながら、手を振り返してくれた


新幹線に乗り込んで、鞄を開けると
わたしが欲しがっていた、チョコミントの飴が出てきた

彼女たちと、むかし、ジブリ美術館へ行ったとき
やっぱり、売店で欲しがったけれど結局諦めたペンを、
こっそり買って、そっと鞄にいれておいてくれたことを
きのうのことのように思い出した

変わりつづけるわたしたち
それでも、変わらないやさしさ、
そして、共有した時間の記憶がある

 

海外出張が多く、自営業のわたしは
頻繁に東京へ行くのは、正直、なかなか難しい

それでも、ちょっと無理をして
半年に一度、かつて暮らしていた街へ出かけていくのは
恋人に、そして彼女たちに、どうしても会いたいからだ


わたしの人生に
ずっと、皆がいてくれることが、嬉しい

他のなににもかえられない
何気なく、でも特別な、美しい三日間だった

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ガラスの中のちいさな虹に
撮影をしながら、見とれる

ささくれだらけの毎日に、癒しをくれるのは
やっぱり、美しいもの


ふと、お客さんが途切れた時間
ばらばらと窓をたたく雨音に、聴き入る

雨が好きだ
たぶん、昔より、ずっと

 

コペンハーゲンにいる、ガラス作家さんと
静かに、青い色の話
klar blå、lysblå、kobolt blå、turkis
いま、彼女には、
数ヶ月前よりもたくさんの青がある

透明で、ほとんど水みたいなのよ、
だけどすこしだけインディゴが混ざってる、という
“クリアブルー”の説明を聞き
それは注文するわ、いま決めた、と言って笑う

ほとんど水みたい、と、繰り返す
美しいフレーズだ


すくえば海は淡く濁った塩水に変わり、
近づけば空はどこまでも透き通る

そう語る谷川俊太郎の詩が、とても好きだけれど
わたしは、懲りずに、青に憧れつづけて
手を伸ばしつづけている

 

今週の営業を終え、
明日からは、今年はじめて、関東へ行く予定

だけど、ちょうど、ずっと待っていた陶器が届きそうで
輸入手続の仕事が入ってしまった

通関や、検疫とのやりとりも自分でやっているわたしにとって
陶器の輸入は、時間と手間のかかる仕事
食品にかかわるものなので、なかなか大変なのだった


予定よりずいぶん遅れたものだから
無事発送の連絡が届いてほっとした気持ち、半分
旅先から電話とFAXのやりとりをするはめになることに
泣きたい気持ち、半分

うん、でもやっぱり
なにより、届いてくれてうれしいかも


ほかにも、持っていく仕事はたくさんあるし
完全なお休みには、ならなそうだけれど
それでも、ちょっとゆっくりしたいな

恋人と、大好きな友人たちと
おだやかな三日間を過ごすんだ

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包み紙やらなにやらを
本のカバーにするのが好きだ

フェルナンド・ペソアの詩集には
ポルトガルのお菓子屋さんの紙をかけている
彼の国らしい、青い色

 

飄々としたペソア
ざあっと吹き抜けていく風のように
わたしを、瞬間だけさらってくれる

ペソアを知らなかった頃
どう、暗い夜を越えていたのか、もう思いだせない

 

事物でわれわれに見えるのは事物そのもの
ある事物が存在するとき なぜそれとべつなものが見えようか
見ること聞くことが 見ること聞くことであるとすれば
見ること聞くことが なぜ錯覚することになろうか

本質的なことは見ることを知ることだ
考えることなく見ることを
見ているときは見ることを
そして見ているときは考えず
考えているときは見ないことを

アルベイト・カエイロ名義 『事物で』より

 
これ、詩っていうの、と
最初に読んだときには思わず笑ってしまった一節
ちょっとしたお説教のような、このあとには
でもこれができるようになるには鍛錬が必要だよね、という内容が続き
人間味があって、いい

考えることなく見ることを
考えているときは見ないことを

心に留めて精進いたします、先生

 

取引先からのメールやらなにやらを
見比べては悩んでいた、きょう
どうオーダーをするかというのは、いまだに難しく、
わたしなりの正解どころか
落とし所を見つけるのにも、苦労する

しかも、メーカーさんや作家さんによっては
もはや秋冬もののプレオーダー期間
いまのわたしに、クリスマスは難題すぎる

しかしですね
取引先が、じゃあひと月休むね〜、となったりするのが
これからの夏という季節
慌てないために動いておく、そのタイミングが、今なのだ


ようやく、大枠のようなものを決め
あちこちに宛てたメールをつくる
デンマーク語、ドイツ語、そして英語
仕事のメールだけれど、オーダーのことだけではなく、
最近の自分のこと、相手のことなど、
けっこう色々なことを、考えて、書く

使う言語のちがうわたしは、どこかちがう人間のように思えて
いくつもの名前を使い、何人もの詩人として生きたペソア
ふと、頭をよぎった


勉強してきた言語をこうして使える、というのは
ほかの世界に、比較的身軽に歩いていけるということでもあるし
想像を超える自分に会える、ということでもある

メールの先の相手のこと
そして、言葉とともに広がる海原を、思う
わたしなりの、よい、仕事の午後だった

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身につけていたアクセサリーが
机の片隅にたまっていく
あいかわらずの自分に苦笑

重い腰をあげて
この二週間の残骸と、開いたままのスーツケースを
すこしずつ、片づける
そういえば、ちゃんとした休みはひさしぶりだ


読む時間がなかった、定期購読のTateの機関誌
まだ四分の一も編み終わっていない、
夏のためのカーディガン

新しいスウェーデン語の先生にも
“出張から戻って落ち着いたら連絡する”と言って、そのまま
毎日、何十通というメールを書いているのに
とても大切に思っている友だちには
落ち着いた気持ちで、心をこめて返事を書きたい、と思うほど、
なにも書くことができないでいる

 

金曜日
大きく体調を崩して、店から逃げるように帰宅し
母が作ってくれた夕食を食べたら
なにも味がしなかった

最初は、鼻と喉の具合が悪いからだと思ったけれど
それにしても、おかしい
そう思いながら丸二日が経ち、
きのうはよく眠ったりして、身体はだいぶん元気になったものの
味覚はまだ、ほぼ戻ってこないままだ


金曜は、しんどい出来事があって
ひとつひとつは、たいしたことじゃないとわかっているのだけど
ずっと、こういうのはしんどい、と思っていたことだったから
疲労骨折のように、気持ちが折れてしまったような気がする

その日の夜のうちに
ふだん平日には連絡はとらない恋人に、電話に付き合ってもらった
それで、ずいぶん、心は軽くなったけれど
突然食べ物の味がまったくしなくなった、ということは、
やっぱり、生き生きと仕事をするわたしを見てほしい、と思うと
どうしても言えなかった


わたしは、ロンドンで休学する直前、
卒論を書いていたころにも、こんなことがあって
そのときは、なんで味が感じられないのかが本当にわからなくて
四川料理の唐辛子をそのまま齧り、体を壊したりしていたから
なんていうか、こういうタイプなんだな、と思う

とくべつ悲観するわけでもなく、
まあ、わたしはこうだから、そう遠くないうちに戻るでしょ、と思えるのは
あのときの経験があるから
いやいや、いろんなことが起こるね、本当に

 

忙しいのは忙しいけれど
仕事はほんとうに、愉しい
これまでに自分が得てきたものを使えているという実感があり
自分がこんな風にと思い描いたことが、すこしずつ形になってきたとも思う
素敵なものをきちんと選べていると自信も持っているし
なにより、有難いことに、たくさんのお客さんに支えてもらっている

だけど、こんなに愉しく、うまくいっているのだから
目を瞑らなくちゃいけないこともいっぱいあるよ、
もちろん愉しいだけじゃやっていけないんだからさ、と
この二年、じっと我慢してきたことが沢山、本当に沢山あるのは事実だ
どんな風に言われても、どんなに自分の時間をとられても、
誠実に答えたい、笑って受け流したい、とか
もし人の役に立てるならとか、思いつづけてきたけれど
そういうことは増えるばかりで、さすがにもう抱えきれず
どうしたらいいのかわからなくなっていた


本当はずっと気がついていたんだから
これを機に、ちょっと、バランスを見直そうかなって

これからもわたしは仕事のため、人のためなら目を瞑るし、
ちゃんと、ふつうに我慢もしたいけれど
自分のなかでちゃんと色々調整ができるような状態というか、
なんていうか、“正常”の範囲を出ないように
わたしがいつも、いつものわたしでいられるように
できれば、もうちょっとうまいことやりたいと思います

と、ゆるい決意表明のような

 

来週は関東に行く予定があるし
今週も、先週よりはだいぶ仕事が少ないはず
すこし、力を抜いて過ごしたい

それにしても
来週、房総半島に行くから、お魚楽しみにしているのになあ
それまでに、すこしは味覚が戻ってくれるといいんだけど

まあ、うん
お魚食べるぞ!ってなったら
その欲が勝って、一瞬で完全復活するかもな
そう、のんびりと構えたい

 

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午後いっぱい
ひとり、うす暗い店で仕事


経理、それからちょっと商品撮影をして
ディスプレイに手をつけた
そもそも点数が多すぎるうえ、制約が多すぎて
配置のバリエーションがない店内だけれど
角のテーブルだけは、季節ごとにそれなりに変えている

軸になるもの、そしてクロスを決めて、
合いそうなものを、持ってくる
しっくりこなければ、別のものと交換して、を繰り返し
組み替えて、なんとなくかたちにする

最後に、ガラスケースをテーブルに戻して磨き
コンパクトやジュエリーの入れ替え
それも、同じようにして、
少しずつ雰囲気をつくっていく


実はけっこう、骨の折れる仕事だし
わたしは、けしてディスプレイがうまくない
でも、この時間が好きだ

ひとつひとつのものを、時間をかけて眺め
たたずまい、存在感について、考えるということ
心が洗われる気がする

 

スピーカーで、ちいさく音楽をかけながら
最近、日程の関係でお断りした仕事のことを考える
もし受けていたら、なにか一曲、
“好きな曲”を選んでいたはずだった

 

 

人生で、とくに大切に思っている曲、というのは
わたしの場合、何曲もある
たとえばエミリアナ・トリーニのように
お店のライブラリにも入れていつもかけているものもあるけれど
たいてい、大切な曲というのは、聴きたくなったときに
そっと取りだして、抱え込むようにして聴く

だけど、この曲は、特殊で
いつも同じ場所、
関空か伊丹へ向かう車内で聴いている
こういう曲は、ほかにないんじゃないかしら

気負わない旅の匂い
そして、ぼんやりとやさしい希望の美しさよ


わたしの一曲
もしかしたら、これだったかな、と思い当たって
自分で意外だった

企画の趣旨で、こうして、意外な自分に会えるなら
受けてみたかったなあ、お仕事
日程ばかりはどうしようもないけれどもね

 

ちょっと、目を閉じて
思いを巡らせる

聴きたくなって、ライブラリを繰り
考えたけれど、やっぱりここではかけないことに決めた

僕が旅に出る理由は
だいたい百個くらいあって、と
かわりに、歌いだしだけ口ずさみながら、
百個で足りるかしらと、笑う


気持ちにささくれができていたはずが
なんだかいつもより、ちょっと幸せだった
穏やかなひとりの、仕事の午後

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季節の違うこの国に
無事、帰ってきた


水曜夕方に関空に降り
木曜は、開店前から開梱
そして、木金土と、気合いで働いた

木曜日は、再開初週にしては混まなかったのだけど
金土と、ピークの時間は、お店に入れない方が出てしまうほどで
終わってみれば、これまででもっとも忙しい週になった


わたしは、こういうことにはどうしても後ろ向きで
いつまでこうしてお客さんが来てくれるだろう、と怖くなるけれど
それはそれとして、本当に、本当にありがたい

たくさんのお客さんとお話ができて、
3週間ぶりの、お店での仕事を楽しんだ
よい週末だった

 

わたしに、何かができるとは思っていないけれど
初めていらしたお客さんが、わあ!と
歓声をあげてくださると、うれしい

いつものお客さんが、美しいものを見にきた、癒されにきた、
自分へのご褒美を探しにきた、と言ってくださると
とても、とてもうれしい


ここにも、たびたび書いているけれど
わたしは、ひとに喜んでもらうことに興味がない人間なのだと
ずっと、思っていた

けれど、いざ、自分でこの仕事をはじめてみると
お客さんの言葉というのは、
ほかにはかえられない、なによりのご褒美だ

 

怒涛のような3日を終えても
仕事は積もるばかり
想像以上にヴィンテージが動いているために、
帰ってきたところなのにもうディーラーとのやりとりを始め
現行の作家さんのもののオーダーを決め、進捗を話し合い、
膨大な量のお問い合わせに、返信をする

先週作家さんから届いた荷物は、まだ検品すらできていないし
持ち帰ってきたものの撮影もできていない
当然、店のディスプレイを変えるどころか、
プライスタグさえ、小さなものにはひとつもつけられていない
経理のことも、先週の分は全部放り投げたまま


なんとかなるのかしら、と、思うけれど
よく考えたら、こういう状況は今にはじまったことじゃなく
ずっと、完全になんとかはなってないな
そう気がついて、ちょっと気がらくになった

それでも店は、日々は、続く
きちんと順番を考えて、なんとか回るように、
そうやって、漕いでいく


大丈夫、と、思えるのは
ある部分では、自分の理想が叶っているからなんだろう

あとは、そう
小さな店にひしめくものたちのことが
わたしは本当に、全部好きだからね

 

とはいえ
すこしずつでも、疲れを取らなければ
集中力が落ちてしまって、なにかやらかしそう

さすがに疲れたなあ、と折れる気持ちも
もうすこしは大切にしないとな、と
ちょっと、思ったり