f:id:lumi31:20190611030321j:plain

 

包み紙やらなにやらを
本のカバーにするのが好きだ

フェルナンド・ペソアの詩集には
ポルトガルのお菓子屋さんの紙をかけている
彼の国らしい、青い色

 

飄々としたペソア
ざあっと吹き抜けていく風のように
わたしを、瞬間だけさらってくれる

ペソアを知らなかった頃
どう、暗い夜を越えていたのか、もう思いだせない

 

事物でわれわれに見えるのは事物そのもの
ある事物が存在するとき なぜそれとべつなものが見えようか
見ること聞くことが 見ること聞くことであるとすれば
見ること聞くことが なぜ錯覚することになろうか

本質的なことは見ることを知ることだ
考えることなく見ることを
見ているときは見ることを
そして見ているときは考えず
考えているときは見ないことを

アルベイト・カエイロ名義 『事物で』より

 
これ、詩っていうの、と
最初に読んだときには思わず笑ってしまった一節
ちょっとしたお説教のような、このあとには
でもこれができるようになるには鍛錬が必要だよね、という内容が続き
人間味があって、いい

考えることなく見ることを
考えているときは見ないことを

心に留めて精進いたします、先生

 

取引先からのメールやらなにやらを
見比べては悩んでいた、きょう
どうオーダーをするかというのは、いまだに難しく、
わたしなりの正解どころか
落とし所を見つけるのにも、苦労する

しかも、メーカーさんや作家さんによっては
もはや秋冬もののプレオーダー期間
いまのわたしに、クリスマスは難題すぎる

しかしですね
取引先が、じゃあひと月休むね〜、となったりするのが
これからの夏という季節
慌てないために動いておく、そのタイミングが、今なのだ


ようやく、大枠のようなものを決め
あちこちに宛てたメールをつくる
デンマーク語、ドイツ語、そして英語
仕事のメールだけれど、オーダーのことだけではなく、
最近の自分のこと、相手のことなど、
けっこう色々なことを、考えて、書く

使う言語のちがうわたしは、どこかちがう人間のように思えて
いくつもの名前を使い、何人もの詩人として生きたペソア
ふと、頭をよぎった


勉強してきた言語をこうして使える、というのは
ほかの世界に、比較的身軽に歩いていけるということでもあるし
想像を超える自分に会える、ということでもある

メールの先の相手のこと
そして、言葉とともに広がる海原を、思う
わたしなりの、よい、仕事の午後だった