何を書いていいか、という感じだけれど
このところの忙しさに、とりあえずは一区切り

忙しかった理由のひとつが、オンラインショップで
今回はちょっと、前例がないというレベルだった
まずなによりも、こうしていられることがありがたいとは思うものの、
それはそれとしてちょっと心配
間違いなく丁寧に届けることの難しさよ

まあ、でも
とにかく、乗り越えられたことを喜ばないといけないね
反省点は次に生かすべしだ

 

きょうは、仕事の前に
パフェを食べに通っている店へ
たぶんひと月半ぶりくらいなんだけれど、
もっとずっとひさしぶりに感じた

花粉症で荒れ果てた喉に
ジェラートやゼリーが、ひんやりと心地よい
お庭の枝垂れ桜は、もうちらほらと花をつけていて、
なんだか、突然、はるか遠くまで来たという気がした


その店の古いテーブルは
最近、わたしもお世話になっている家具職人さんが直したらしい
なんでも作ってしまうし、直してしまう、
魔法のようだと言うと失礼だとわかっていても
そう形容したくなる技術のある人

どこをどう直したのだろうと、テーブルを撫でて
わたしには想像もできないような記憶が、
この木目には詰まっているのかもしれない、と思いを巡らせる

森の中の工芸学校にいたときは、
あたりまえにそんなことを考えていた、というか
あえて意識するまでもなく、前提としてそういう敬虔な気持ちがあった
その感覚を忘れたくないなあ、と、思う

 

やっと、出張中の予定を本格的に立てていて
空き時間のなさに慄いているところ
とくに前半のイギリスが詰め詰めになりそうで、
どうなるか、ただただ不安だ

まだどう組んでいいかわからない予定がいくつもあるので
週末が過ぎてあちこちから返答が来たら、必死のジグソーパズルだなあ
ぎりぎりすぎるけれど、仕方ない

今回は休みを取ることは諦めモードだけれど
まあまあ、仕事だからこその旅だから


明日の営業を終えれば、日月はちょっと時間があるから
今度は、荷物の準備

出張前ならではの
このなつかしいバタバタを楽しむよ

 

届いたヴィンテージ品を開けていると
たびたび出てくる、解かれたクロスワードパズル
ディーラーさんを思い浮かべて
ふっと気持ちをゆるめ、また次を開ける

ゆるやかなネットワークにのって国境を越えるものたちに
思いを馳せる、瞬間


今年は確定申告を早く終えたというのに、
先々週から、また凄まじい忙しさ

身体も頭も、もう芯が疲れていて
いよいよ集中力が落ちてきた
かと言ってこの状況はいかんともしがたく、
間違ってはいけないときを絞って全力で集中するしかない

晴れだと、出かけられないことに落ち込み
雨だと、単純に気分が沈む
わたしにも、そういうどうしようもない心持ちのときはある


とにもかくにも、新しく届いた可愛いものたちを
無事に店に並べられてうれしいよ

なにもかも、けして当たり前のことではないと知っている今、
無事はなによりの結果だと思うのだった

 

ベルリンにいるはずの人にメールを送ると
なぜかパレルモから返事が届いた
親戚に会いに、週末だけの予定でシチリアを訪れたら
戻りの飛行機がキャンセルになって、滞在が5日も伸びたらしい

正直悪くないよ、ここには太陽があるから、という言葉に微笑んで
取引先としての自分を引っ込め、友だちとして返信を送る
仕事のことは、来週だっていいでしょう

いつかマルタから見た、海にとけるシチリアの輪郭に
友人の動画に映る、石灰岩の岩壁と青々とした海を重ねた


今どうあっても、あと二週間と三日後には、
わたしも、旅に出ることになる

この忙しなさを、美しい地元の春を、
ともあれ、楽しむこと

 

フォークリフトはないかと問われていた、件の荷物が
とにもかくにも、届いた

今回は、長方形のトレーに新柄が三種
一刻も早く見たくて、当たりをつけて開梱した
三柄三様、やっぱりどれも素敵で、
これまでの大変だったことなど全部飛んでいった


この絵を描いている人と、仕事をしていると
わたしでも、ここに居ることに、
すこしは意味があるのかもしれないと思える
美しいものを生み出す人を、微力でも励ますことができること、
ものを作って、好きだと言ってくれる人たちに届けられること

つぎつぎに浮上してくる問題も、
めちゃくちゃかかるコストも
仕事だからもちろん、きっちりと考えないといけないけれど、
心の底では大したことじゃないと思っているんだよ

わたし個人にとっても特別なものが、またひとつ
これは、ますますトレー選びに迷うようになるな

 

ぼんやりと見ていた桜の開花予想
あっ、と、きゅうに我に返る
4月のあたまから出張に行くということは、
桜が盛りのときに、日本を離れないといけない

仕事上、どうしてもこの日程しかなくて、
花のことは頭から抜け落ちていた
そもそも、航空券を予約したのは12月だったから
実感をもって4月を思うこともできなかったのだ


忘れようもないことに対して鈍くなり、
無事に、そして効率よく仕事をしなくては、と
これまでは最低限だったことに全ての意識が行ってしまう
それは、けして桜の話だけではない

ああ、それにしても
今までそのことに気がつきもしなかったなんて、ねえ
満開を逃すかもしれないこともだけれど、
なにより自分がそういう状態なのが悲しい

一日でも長く見られるように、早く咲いてくれないかしら、と
勝手極まりないことを願いつつ
まずは、今月咲くあらゆる花を愛でよう
好きな花ばかりの3月なのだから

 

3月は、毎年
多くのお客さんを見送るときでもある
転勤や卒業で、関西から引っ越してしまう、という方々

きのうも、長く通ってくださっている方から、
もうすぐお引っ越しされるというお話を聞いた
いただいたお手紙を読んで、しみじみと寂しくなり
見送るばかりというのも切ないものだなあと、すこしだけ思った

でも、見送ることができる、というのは
ここに根を張っていられるからこそで、
わたしにとっては特別なことだから


この店にいるのは、わたしひとりで
それに対してお客さんは、もちろん何百人もいる
だからお客さんのほうは、覚えられているとは思っていないみたいなんだけれど
実は、何度も来てくださっている方や、
たとえば店頭でもオンラインショップの備考欄などでも
あたたかい言葉をかけてくださった方のことは
びっくりするくらいに忘れないものだ

店主とお客さんという関係は、不思議でもあるけれど
だからこその心地よい距離感がそこにはあって、
だからこその会話も日々生まれているのだった


お客さんが連れ帰ってくれたものたちが、
それぞれの生活の片隅にあって、一息つく時間を支えているのなら
ただただ、うれしい

新しい街の新しい部屋で、
やさしい人たちに、よりよい日々がありますように

 

遠く高く透ける空に
ほとんど光のような山茱萸

梅の賑わいからすこし離れた場所にあるこの木を
毎年、ひっそり愛でている
春のはじまりの花だ


仕事場の共用スペースにあるベンチに
日本のあちこちに向けて旅立っていく箱たちを積む
日曜から、ずっと梱包に追われていたのだった

水を替えた三つの花びんと、淹れたばかりのお茶を近くに置いて
積み上げた箱の横に座り、タブレットで作業をする
お隣から、お菓子が焼ける匂いと、道具を片づける音

波に身をまかせるように、
陽だまりでゆらゆらした、午後

 

Vårvinter、直訳すると“春冬”ということになるのだけど
春と冬のあいだの季節をタイトルにしたプレイリストが好きで
毎年この時季になると聴いている
スウェーデンの森で暮らしていた年に作ったものだ

森の窓辺の印象もあるプレイリストだけれど、
それ以上に、オーランド諸島の風景を思い出すのは
イースター休みに出かけていったから
どうしてわざわざ、静かなところから静かなところへ行ったのだろうと
自分でもちょっと笑ってしまうけれど、
音楽と複雑に絡まりあった、やわらかな海辺の景色を思うと
あのときのわたしは、良い選択をしたんだろう


イースターで、どこもかしこも閉まっていた島は
ただただ、ひっそりとしていた
近くのホテルで借りた、足のつかない自転車を飛ばして
浮かぶ小さな島々を横目に、風をきり、喉を枯らして歌った

今オーランドには自分しかいないんじゃないか、というくらい
早春の島で、わたしはひとりで
そのことがなによりも爽快だったのを覚えている

 

 

プレイリストの一曲目は、Isbellsの“Billy”
これを最初に置いた理由はもう覚えていないけれど、
いまだに、聴くたびに涙を堪えている

“But now he’s ready, ready to
To leave, forgive, forget for good
And live his life like he never did before

So now he’s ready, ready to
To leave his pain, his pain for good
And show what he’s all about to the world”


冬から春へ
この季節が好きなのは、
春が持つ(とわたしは思う)、有無を言わさぬ勢いとその残酷さがまだ薄く
希望だけがほのかにあるような印象だからなのかもしれない

ままならない日々も、やりきれない思いも、
今なら、光にまかせて
音楽に溶かしてしまえるような気がするのだった

 

 

春のはじまりらしい、暖かい日
またひとつ、歳を重ねた


朝8時台から、友人たちがLINEやメールをくれて
通勤途中や仕事前に、わざわざ連絡をくれたのだなあ、と
ほくほくしたのも、束の間
急を要する仕事のメールも、届く

常軌を逸した量のトレーやコースターが、来週到着するので
物流会社から、どうしますかという確認
御社にて荷降ろしいただくことになりますが、
フォークリフトはございますでしょうか、とあって笑ってしまう
どこからどう見ても、個人事業主の輸入量じゃないものねえ

結局家を出るぎりぎりまで仕事
まあ、わたしらしい歳の幕開けだ

 

今年は、ちょうど誕生日が水曜だったので
休めるように、あれやこれやと手を回して、
アフタヌーンティーに出かけてきた

アフタヌーンティー自体、とてもひさしぶり
美味しいものを飲んで、食べる、というのもそうだけれど
天井の高い場所でゆったりと過ごせることが、なにより贅沢に感じた


最後に注文したお茶は、Morgentau、“朝露”という名前だった
さっぱりとさわやかな、でも繊細な味と香りで、
お茶の時間の終わりにも、歳のはじまりの日にも、ふさわしく思えた

ああ、あの年の誕生日はあの場所にいたな、と
きっと、何年かあとになっても思い返すに違いない
毎年この時期は忙しいから、あまり特別なことはしないのだけど
たまには、いいでしょう

 

“おめでとう”、“Happy Birthday”、“Grattis”
方々から届くたくさんのメッセージやギフトの宛先には、
当たり前なんだけれどわたしの名前があって
ちょっと不思議な気持ち

世界のあちこちで
この日、一瞬でも、わたしのことを思い出してくれている人たちがいる
そのことに、毎年胸がいっぱいになる

0時に電話をくれた彼は、お祝いの最初に
ずっとまっすぐに生きていてすごい、と言ってくれた
まっすぐかどうかも、それがほめ言葉なのかも、正直わからないけれど
けして器用ではないわたしにあたたかい目を向けてくれる人たち、
遠くからでも、ちょっと手を振ってくれたりする人たちに
ほんとうに心から感謝している


このところのわたしは、ご縁があって
ひとつ歳を重ねるごとに、ひとつ新しい経験をさせてもらっている
前の歳は、たくさんの人を前にお話をしたこと
その前は、雑誌に(わたしにしては)長い文章を書かせてもらったこと

だから、新しい歳も、
ひとつ新しい経験ができるようにがんばりたい
ちょっと具体的な目標

もちろん、お話も、文章も、
もっと頻繁になって続いていけばいいんだけどね
それはそれとして、自分から、新しいことにも挑戦します
わたし以外にはたいしたことじゃないのだろうけど、
それでもいいんだよ

 

 

きのう、美容室の前に15分ほど時間が空いて、立ち寄った本屋で
須賀敦子のアンソロジーを買った
底本になっている河出文庫の全集を全部持っているわけだから、
もちろん知らない話はないはずだけれど、
帯文を見て、誕生日に読みたいと即決だった

「人生ほど、生きる疲れを癒してくれるものは、ない」

過去から今に連なる自分自身を、
いやでも未来へ向かう人生を
迷ったとしても誠実に、できればまっすぐに
癒されながら生きていければと、願っている

 

事務作業の日々
今年度の確定申告もいよいよ佳境で、
今週は文字通り、目が回るような忙しさだった

いただいたお菓子でひといき
疲れた頭には、甘いものがなによりも効く

食べながら作業することはせず、可愛いパッケージを眺めて
お客さんとの会話を反芻したりする
ひとときの癒しの時間

 

うちの場合、確定申告のための作業は、
仕入れた商品のリストの補完と、棚卸からはじまる
現行品、ヴィンテージ、書籍、と三ジャンルに分かれていて
それぞれが、それはもうとんでもない数なので
ほかの仕事の合間を縫うだけでは足りず、たびたび夜中までやっても
それだけでたっぷり二ヶ月はかかる

今年度は11月、12月にぜんぜん時間が取れなかったうえ
リスト自体を新しくしたり、作業環境も整えていたこともあって
なんと、月ごとの仕入額の計算を終えたのはきのう
棚卸を完全に終えたのはきょう
いやいや、とんでもない長丁場だった


経費の計算は、今月の前半にすでにほぼ終えているから
あとは、これにカード会社や送金などの手数料を計算したものを合わせて、
申告書をあれもこれもつくるだけ
それはそれでまあ面倒なのだけれど、
正直、これまでを思うと何でもない仕事だ

水曜日が誕生日で、
火曜日にひさしぶりのネイルの予定が入っているので
あした、なんとか申告まで終わらせたいなあ
すっきりした気持ちで、新しい歳を迎えるべく
あと、ひとがんばり

 

天気予報を見ると
しばらく、暖かい日が続いている
春をほんとうに楽しみにしているのに、
冬が去ってしまうことに、足もとが揺らぐような不安を覚える

単純に、寒いほうが身体に合っているからか、
いまの気持ちに、冬が馴染んでいるからか


とはいえ
どうしたって、立ち止まるというわけにはいかないから

手のなかにあるものを掴んだまま、
さっぱりと前を向いて行けたらいい

 

雨の日曜日
強風に傘を持っていかれそうになりながら、
仕事の前に、花屋へ

ケースの一角から選んだ、パステルカラーの花々を
仕事場でカットして揃え、まるく束にする
とくに心得のないわたしだけれど、
明るい花に触れて、ああでもないこうでもないとやっているうちに
気持ちまで明るくなってくるから、不思議だ

ラナンキュラスデルフィニウムスイートピー
ただよう春の気配

 

四月から、新しく小さな部屋を借りることになっている
念願の、オンラインショップ用の事務所兼倉庫
本当に狭いスペースだけれど、
探し続けて、やっと最高の条件のところを見つけたのだった

昨日、店の大家さんと雑談していてその話になったとき、
大家さんがふと、楽しみやねえ、と言ってくれた
近ごろ色々なことがありすぎて、苦しいばかりだったので
それだけで、ちょっとうるっときてしまった

五年半、わたしなりに懸命に店を経営して、すこしずつ大きくしてきた
大家さんは、そのことをよく知ってくれている
わたしはもちろん仕事のうえではひとりだけれど、
心強いなあと、思う


どういう場所にしたいのか、よく考えて
思いきり楽しんで置くものを選びたいなあ
これからなんだから

それにしても、小物などを探していると
べつになくてもいいけれどあったらうれしい、というものの幅の広さに、
あらためて驚いたりもする
わたしが輸入したり、相談して作ってもらったりしているものも、
きっとこんな風に、誰かの毎日に登場してくれているのだね

仕事で関わった愛するものたちが、しっかり映えるように
視野を広く、いい空間を作りたい

そして、欲を言えば、
静かに勉強したいときに閉じこもれる部屋にもなればいいな
店の経営という道を選んだわたしだけれど、
これまで長い時間をかけて学んできたことを最大限に使いたいし
かわりの人はいないというくらいの知識をもって、
お客さんとより広い世界との橋渡しがしたい
それもまだまだこれからなのよ

 

夕方、馴染みのカフェへ出かけると、
外にまで行列ができていた
お正月明けからずっと、この時間は誰もいないこともあるくらいだったけれど
これからしばらくは、また混むことが増えるんだろう

店を持っている身としても、在住の身としても
京都ならではの人出に困ってしまうことは多々あるけれど、
それでも、このまちならではの賑わいが
外に出られない時期を経たいまは、愛おしい


あとひと月もしたら、桜が咲きはじめ
あらゆるところを人が歩くようになる

ひとときの、無秩序な夢のような季節が、
今年もまた、やってくる