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仕事場の小さな冷蔵庫
忙しさにかまけて放っていたら、
庫内のすべてのものを容赦なく凍りつかせるマシーンと化した

もちろん、これが原因だろうな、と
右上の冷凍室をだいぶはみ出してついている氷を眺める
覗き込んだまま、さてどうしようかとひととおり思案し
地道に取るしかない、と、当たり前の結論に至った


アイスピックで、縁のほうから氷を砕いていく
もはや簡単には砕けないような大きさなので、
薄く削れてしまい、はらはら剥がれ落ちる
慣れてくると、ちょっとした固まりがとれるようになり
なんだか嬉しくなって、冷たいかけらを手に取った

トーベ・ヤンソン『島暮らしの記録』の中の
氷解けのシーンを思い出す
解けるときの、雷鳴、あるいは砲撃のような音
風が吹くと重なり合い、落ちて砕け、
隊列をなして、“路面電車とも大聖堂とも太古の洞窟とも見紛うばかり”、
色や形を変えながら壮大に流れてゆく、氷のさま


そんなことを呑気に考えながら、つっついていたら
なんの前触れもなく、残っていた氷が全部ゴトッと落ちた
驚いて、塊を拾いあげ、じっくり検分
窓のほうに向けると、縁がすこし透けて美しい

そういえば、今冬はまだ、大きな氷を見ていない
毎年、寒い国の寒い地域にかならず出かけていくけれど、
今年はそうもいかないから、見ないまま終わるのかもしれない

そう思うとすこし切なくて
手のなかの塊が、ちょっといいもののような気がした


いや、まあ、こんな風に長々書いているけれど
ただ冷蔵庫の霜取りをしただけなんですけれどもね
よくこんなに氷が育ったものだ

これで、牛乳やらお茶やらが凍らなくなるといいな
先週くらいから状況が悪くなって、ほんとに困ってたのよ

 

それにしても、師走
霜取りも、大掃除がてらで丁度いい

毎年よく働いている12月だけれど、
今年は、とくに忙しくなりそう
一気に来年に突っ込んでいく感じになってしまうだろうか

もう休みに入ろうとしている、イギリスの仕事相手からのメールに
wishing you a very Merry Christmas and a Happy New Year、の文字
今年最初のメリークリスマスだ


大変な一年だったから
最後の月は、全てを大事にフルパワーで駆け抜けたい
いつもそんな風にいられるわけじゃないけれど、
このひと月なら、きっとできるでしょ

まずは、明日
背筋を伸ばして、お客さんと、荷物を迎えよう