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店に立ちながら、中庭に降りてくる雪を眺める
静かな一日

今週も、なにも上向かないままで、
きょうも途中に、お客さんのいない時間ができた
先週いただいていたお菓子を食べつつ、
昨年分の納品書の束を繰る

迫ってきている確定申告を思い
息を吐いて、また窓のそとに目を移す
バラバラに散ってしまいそうな気持ちを繋ぎとめる、
小さな場所のささやかな四季


雪は、音を吸い込むんじゃないかと
子どものころからずっと、思っていた
最近、それには科学的な裏付けがあり
雪の結晶は本当に空気の振動を吸収していると知った

頻繁に降る地域では、大変なことのほうが多いのだろうけれど
わたしには、音がやわらかくなる雪の日は、贅沢

 

どんなことを書けばいいのかも、もうわからないくらい
どうしようもない日もあるけれど、
たとえば、仕事の質を維持するために時間を積まなくてはいけないことも
自分なりに筋を通したいだけだと思っていれば、気楽だ

きょうは春に向けて、ヴィンテージの陶器を仕入れた
いろいろな時代のいろいろな花柄
届くころには、なにもかも、すこしは良くなっているといい

 

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はじめて行ってみた花屋さんで、勿忘草を見つけた
切り花ではもう出ているのね

小さなはかない花の青に、
まだ遠そうな春を思う

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先月三週目以来の、まる一日の休み

大量のマグカップ、大量のティータオルに続き
大量の一輪挿しと格闘することになった今週
へとへとで、寝付きの悪いわたしも昨晩は電源が切れたように眠り
一晩じゅう目が覚めなかった

きょうは、ひさしぶりに開くセザンヌの書簡集と、
この冬二周目のアリ・スミス『冬』が、ゆるやかな時間のお供
こうして、初読でないものが読みたい日もある

最近は、店に立つ仕事がない日でも、
気合いを入れるべく、朝いちばんにまず簡単にメイクをしていたから
まる一日メイクをしないのはひさしぶりだった
こういうのも、いいね、たまには

 

最近、たまたますこし似た名前の曲を知ったことで、
Glossというバンドの、Lonely in Parisという曲のことを思い出した
パリに行くといつも浮かんで、繰り返し聴いていた曲

 

 

Glossというバンドについて
わたしは、たしかリヴァプール発だということ以外、何も知らない
たぶん一枚しか出さなかったアルバムが、いつのものなのかも、
メンバーがどんな人たちなのかも、わからない

10年ほど前に偶然知った、それだけで
音だけがふわふわと宙に浮いている
自分の身体にうまく馴染まない、パリのイメージのままで


パリにも、もう3年近く行っていないわけで
その間、この曲のことを思い出すことがなかった
こんなに、遠くなってしまうものなのだな、と
なんだか心細くなった

乾いた空気と柔らかな空の色、美術館から眺める街並み
ホテルの窓のそとの喧騒とがさがさしたシーツ
そして、迷子になりそうな展示会の会場

そういう記憶の輪郭を
きょうは、なぞりながら眠る

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しばらく店内にむりやり立てておいた、平べったい大きな箱を
なんとか開け、検品作業をはじめる

開けたら最後
木曜までになんとか終わらせないと、お客さんが店に入れない
先週、マグカップが詰まった巨大な箱を必死に開けたところなのに、
今週もギリギリサバイバル

わたし自身が資本だからこそ
行けるところまで、パワフルに

 

京都もひたすらに状況が悪化しているこの頃は
とにかくわずかな心配の芽も摘まなくてはという気持ちで、
近くのカフェにも行けなくなってしまった

閉まってしまう店もますます増えていて、
好きな場所がなくなってしまったらと、不安だ
けれど、わたしも店を持っているからこそ
わたしに万一のことがあったとき、お客さんに迷惑をかけてしまうと思うと、
いよいよどこにも出られない

もう、とっくに諦めの境地に至っているといえばそうなのだけれど
まだまだ、しっかり悲しいよ
やり場のない、心に絡みついてじわじわと蝕んでいくような悲しみ

考えたくないけれど、この先もまだ年単位でこういうことが続いたりしたら、
こういう気持ちにすらもならなくなったりするんだろうか

 

深夜、眠るまえに肘掛け椅子に腰かけて
イヤホンをして好きな音を聴き、お茶にすこしずつお湯を足しながら
日記を書いて、編みものを数段だけ進め、しばらく本を読む
全部で一時間くらいだと思うんだけれど、
そのひとときが、いまの活力

どこへも行けない、そもそも空き時間もないときだからこそ
ちゃんと、ここだけはと区切る
親しんだ“いつもの時間”が、ぶれない芯になることを、
わたしは自分との付き合いのなかで、よくよく知っているから


すこしずつ、スイッチを切っていく
よく眠るために、たぶんやってくる明日のために

こんなに長く人間をやっているのに、
いつまで経ってもちっともうまくならない、と嘆いているわたしでも
ちょっとは上達しているのかしらね

 

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飾っていた版画を、クリップから外そうとして
ちょうどスノードロップスイセンだからと、そのままに

ごちゃごちゃしている自分のデスクだけれど
好きなものを、いつでも目に入るように置いておく空間、
そして、ときどきは季節を愛おしむところでもある


デスクの版画やプリントは
気軽に飾って楽しんだあと、傷んでしまわないうちに替えている
その後、きちんと額装して自宅へ
いつかは、どこかの壁を額でいっぱいにしたい

もちろん、すぐに額に入れたほうがいいに決まっていても
紙の質感や、ガラス越しでない色を、しばらくでも見ていたいのだった

 

こういう楽しみ方もできる作品を、ふるい紙ものとともに紹介する場所を
小さくてもいいから、作ってみたい
それは、自分の店など考えていなかった頃、もう10年も前からのわたしの希望で、
コロナの直前に、一歩を踏み出しかけていたことでもある

ポルトガルにある、目標のように思っている大好きなギャラリーに
せっかく、たくさんのことを教えてもらったのに、
まだ、ほとんどのことを実行できていない
単純に、作品を目で見て買うことができない状況になってしまったからだ

それでもいま始めるべきか、答えが出ないまま
気持ちをあたためて、そのときが来たら声をかけたい方を探している
形になるといいな、いつか、きっと

 

とはいえ、のんびりいつかの話をしている場合ではなく
きのうはオーストリアから、巨大な箱が届いたわけで
はやく開けて、検品しないといけないのだけれど、
場所も時間も、わたしの手もたりない

だけど、こんなことばかり言っていても
新しい取引先がうれしくてたまらなくて、うきうき
誠実にものを作っている人たちのことを紹介する、ということでは
わたしはあたためてきた思いを、もう叶えているのだな


自分ではどうにもならないことに振り回される日々
それでも、進んでいけば、見つけられるものがある

大変なときだけれど、
だからこそ、目が曇らないように、なるべく元気でいなくてはね

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朝からの仕事に区切りをつけ、掃除と片付けを終わらせたら、
イヤフォンをして、籠城

積みあがっていくやるべきことを
テトリスのように消しながら、休む隙を狙う
そういう感覚もどうかと思うけれど
次に来るものと全体を見なくちゃいけないわけで、
本当にけっこう似ているかもしれない


好きな服のメーカーが、セールをやっていて
この数日、迷いに迷っていたワンピース
今朝見たら、-30%の表記が-40%に変わっていたので
勢いで注文してしまった

服は、たぶん秋の、同じメーカーのブラウス以来の買い物
冬服、去年も綿ニット一枚しか買わなかったけれど
今年は一着も増やさなかったなあ
手持ちの服を、着方を変えたりして楽しんだ冬だった

まだまだ冬にここにいてほしいと思っているけれど、
ブラウスやワンピースを一枚で着られる日は待ち遠しい
いま編んでいる綿ニットは、
そうすると着られなくなっちゃうんだけどもね

あたたかくなる前に、編み上がるかしら
季節とわたしの勝負だ

 

今週は、さすがにわたしも困惑するくらい、
たくさんのものが店に届いた
ヴィンテージ品と、それから、大好きな作家さんのマグ
まだ、ぜんぜん開梱が終わっていない

この状況を受けて、またお客さんが減っている今
届く数と旅立っていく数が、まったく釣り合っていないけれど
去年にも、こういう時期は何度かあって、
それでも年末に棚卸をしたらちゃんと帳尻が合っていたので
これに関しては、楽観的にやることにした


来てくれる人たちのためにも、自分のためにも
たくさんのものを用意して、楽しく店に立つ所存

それはそれとして、あの荷物、
今週中に、全部開けられるのかしらね

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糸の組み合わせでどんな風にもできるのに、
どうしてこんなに大人しい色づかいにしてしまったのかしら、と
編みながら、うんざりしていた首巻き

今は、まあ、巻き方で表情が出るわりに使いやすくて
これはこれで、結構いいんじゃないかと思っている
相変わらずの自分だけれど
きっと、つまらないばかりでもないでしょう

 

近ごろ、夕方に
これまでほとんど行っていなかったカフェで、作業をするようになった
なぜこれまで入らなかったかというと、
広い店なのに、いつも朝から行列ができるほどに混んでいたからで
なぜ今月きゅうに通うようになったのかというと、
いまは、お客さんが誰もいないときもあるくらいに空いているからだ

きょうはついに、店員さんに、
いつもお越しいただいてありがとうございます、と声をかけられた
ほかのお客さんがいないのをいいことに長居しがちなことを謝ると
いえいえ、僕ら仕事がなくてボーッと立ってたりするんで助かります、と
マスク越しに笑ってくれた


京都、とくに街なかではなく周縁の地域は、
お正月を過ぎたころから、急激に人が減っている
もちろん、オミクロン株の拡大を受けてのことで、
こうして、いつも混んでいる場所にもぜんぜん人がいないし
わたしの店も、信じられないくらいに予約が入らない

この感覚というのは、旅行で訪れる方が多い土地、
それも遠方からのお客さんが多い店で働いているからというのが大きいので
店員さんとのささやかな会話に、ちょっとほっとしたな
もちろん安全第一だけれど、人がいなくて大変だよね、ほんとにね

 

いつまでこんなことが続くのか
この苦しさを、どうやって溶かせばいいのか
わからないまま、また次の波をかぶって、
むりやりに、前向きな言葉を自分に向かって投げる

それでも、すくなくともこうして仕事ができているのだから
わたしは幸運なのだ、きっと


あしたは、二週間ぶりに店に立つ
先週は仕事はしていたとはいえ、お客さんと会ってはいなかった
舞い上がらずにちゃんと喋れるのか、不安だ

なによりも、楽しい一日になるように
きょうは、よく眠らないとね

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あまり眠れず、目覚めた朝7時
ブラインドを上げ、こんもりとまるく雪が積もったベランダに驚く

昨日のニュースで、積雪は1センチ程度と言っていたはずが
ゆうに10センチは超えている
これは写真を撮ろうと、スマホを持って戻ると
近くの家の人も、ベランダに出てカメラを構えていた

そとの空気が勢いよく入ってきて、
置いている温度計の数字が、すこしずつ小さくなっていく
頬で受ける北風が、やたらうれしく心地いい

のどの奥まで冷たくなるような寒さに、なんともいえない親しみを感じるのは
ずっと、北の土地のことを思って暮らしてきたからか、
それとも、わたしは最初からそういう風にできているからだろうか

 

スウェーデンで使っていた、鋲つきのスノーブーツで
雪をざくざくと踏み、散歩
振り返った自分の足跡に、森で過ごした冬を思う

霞んだ遠くの山、あちこちで宝石のように凍る雫、
新しい雪の表面に、木々の隙間から斜めに差す光
目の前の風景と記憶が、白く溶けて混ざっていく
雪の朝には、そういう力があるのだった

 

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目立たなくなってしまったスノードロップ
カメラを持った人たちもみな素通りしていくのが、なんだか寂しくて
まわりの雪をすこしよけようかとも思ったけれど
せっかく、名前の通りのお天気だもの、と撫でてそのままにしておいた

留学生活の最後、わたしが暮らした小屋のそとにも
降り積もる雪のなか、たくさんスノードロップが咲いていた
あれは四月のことだったけれどもね

 

京都市のきょうの積雪は、14センチだったそう
今週はほんとうに、実店舗を閉めていてよかったな
ただでさえ遠くのお客さんが来られないのに、
この雪では、近くの方も大変だ

ここ数日は、たまっていたデスクワークをしたり、
家じゅうを片づけたり、なかなか進んでいなかった編み物をしたり、
ちょっと新しいことをやってみたりして過ごしている
つまり、ずっと忙しくてできなかったことをまとめてやっているだけなんだけれど
とにかく清々しい気持ち


先のことを考えると、不安ばかりがつのるものの
のまれないように、ゆったり構える

休みという非日常に浮かんで、
もうすこし、このまま