朝、窓を開けると
暗い空からぽてぽて無数に落ちてくる、みぞれ

あわてて予報を調べ、
きょうの商品撮影は諦めて、急遽あす行くはずだった病院へ
この天気では、予定を入れ替えなければどうしようもない


いつもの薬をもらいに行った病院は、
これまでに見たことがないくらいに空いていた
結果オーライという出来事が、こんな日にもある

できた時間で、確定申告の準備
なんだかなあとは思うけれど、まあ、自営業だから

 

 

病院の帰り道
スーパーに寄って、自室と店のための花を探す
あるスーパーの花が、とても元気で長持ちすることを知ったのは
花屋さんが臨時休業になってしまった4年前
以来、ときどきまとめて買ってきては、好き放題に生けている

きょうは明るい黄色のミモザを一枝
ミモザは、どの角度から見ても華やかで可愛らしくていい

 

ちょうど10年前の今ごろ
南フランス、カンヌ近郊のル・カネという町を訪れた
泊まっていたマルセイユから電車とバスを乗り継いで行ったのは、
ボナールの美術館が見たかったからだった

美術館は、もちろんすばらしかったんだけれど
それ以上に強く印象に残ったのが、
裏手の石段をずっと上っていった先で見下ろした町と
あちこちで明るくこんもりと咲いていたミモザだった
ボナールの描いた風景を、その色を、直に感じられた気がしたからだ


ボナールの歌うような、おおらかさとかなしさのある絵は、
ずっとわたしにとって特別な存在でありつづけている
だから、2月のミモザも、やっぱり特別

単純なんだけれど
愛するものはこうして、記憶とともに増えていく
心づよいことだと、この数年を経てあらためて思う

 

夏の、休暇をくっつけた出張のチケットを
ついさっき、予約した
また、めちゃくちゃな移動だらけになったけれど
仕事でもプライベートでも、いま絶対に見たいものはなにか、
自分に、問いかけに問いかけて組んだ旅程になった

いましかできない、かはわからないけれど
この旅も、ひっそりと守りたい灯りのような、
特別な記憶になればいい