出張後、最初の営業を終えて
ひと息ついた、きのう
異様に早い時間に、取引先からのメールが届いた

タイトルを見て、右手のカップを落としそうになる
慌ててメールを開けると、冒頭に
このお知らせをどう書くか、百万通りも考えたけれど、
簡潔な、理解しやすい説明が正解に感じた、とあって
もう画面が涙で滲んでしまう

廃業のお知らせ
昨年がどれほど厳しい状況だったかが、
メールには、たしかに簡潔に綴られていた


実は、先週にも、
別のブランドから終了の知らせを受け取ったばかり
そちらは、もともと権利関係が複雑になっていたために、
結局、なんだかんだで既存の商品は続けていく目処が立ったのだけれど
たった数日で、これだけのことが起こるのか

どちらも、わたしが学生だった頃にロンドンで見つけて
店のオープン当初から一緒にやってきたブランド
個人的にも10年来、愛しつづけてきたものたちだ


生産コストは大幅に上がり、売上もまったく読めず、
以前までの商品は、まったく利益が出ないのでもう作れないのに
新しくいいものを作る努力をしても伝わりにくく、売れにくい
この業界、とくに小さな会社の多くは
いま、そういう苦境にある

皆の努力に報いることができるように
とにもかくにもお客さんに商品を手に取ってもらい、
作り手の人たちを支えたいと思ってやってきた
だけど、それでも、わたしは非力で
この程度ではどうしようもないということばかり

悔しさに似た気持ちでいっぱい
きのうは苦しくて、眠ることができなかった

 

それでも、この業界が好きだから、
いつかは戻ってくる、という言葉を信じている
同じブランド名でということはもうないかもしれないけれど
また彼女がものを作るなら、支援がしたい

わたしも、いつか来るその時に
まだきちんと店を経営していられるように、
焦らずに、ひとつずつ手を打っていく
やれるはずのこともできないのが、いちばん嫌だ


いま、これを書いている最中、
また別の取引先からメールが届いた
差出人を見ただけでどきりとして、慌てて開いたら
これまで担当してくれていた方が産休に入るそうで、
新しい担当の方からの挨拶だった

よかったら電話で春夏の新作のことを話したいんだけれど、
来週月曜日はどう?とメールには書かれていて
変わらないことへの嬉しさと、安堵と、
廃業を決めた取引先との思い出とが一気にやってきて
目を閉じ、また、深呼吸をした


重すぎる気持ちに振り回されながら
こうしてやっていく
パワーのある店で、自分でありたいと思う

きょうこそは、ちゃんと眠る
きっと、明日はやってくる