朝、狭いホテルの部屋から出ると
曇り空と、ぬるく強い風
慣れない街の匂いに面食らう

通勤らしい足早な人たちの流れに逆らって
特有の心ぼそさをつかまえる
そう、パリへ来たのだった


昨日のストックホルムからの移動は、
当初予定していた直行便がキャンセルになり
コペンハーゲン経由の乗継便だった
そのうえ今度はコペンハーゲンからパリまでの便が大幅に遅れて
ホテルに辿り着いたら、もう深夜
それで、寝て起きても、まったく現実感のないままだったのだ

重たい身体を引きずるようにして、
あいかわらず馴染まないこの街を、歩きだす
いま、見ておきたいものが、
ここにはたくさんある

 

 

ストックホルムでの数日は、
慌ただしく、そして凍えそうな寒さだったけれど
とても充実したものになった

最終日には、長年通い続けている本屋にも寄った
ひとりの女性が、おすすめはあるかと店員さんに声をかけると
そこにいた皆が集まってきて、店員さんの言葉に耳を傾ける
この店のこういうところが好きなのだと、思った

ストックホルムは、わたしにとって
自分の現在地を確かめられる場所なんだろう
だから、来るたびに、視界がよくなるような感覚があるし
足もとがちょっと揺らいだり、自信を得たりする

こうして、いつまでも学びつづける
気が遠くなるけれど、それはそれでいいじゃない

 

ストックホルムでも、パリでも
今回は展示会へ足を運んだ
広い会場にひしめくものたちはどこまでも明るく、
情報過多で卒倒しそうなわたしのことも元気づけてくれた

とはいえ、この華やかな世界で
わたしには見つけたいタイプのものが明確にある
“泳いでいたい井戸がある”と以前に書いたことがあるけれど
まさに井の中の蛙上等、そこは頑固にやりたくて
そうすると、出会いはなかなか巡ってこない

それでも、ものを相対的に見られるというか、
自分の店を客観的に見られる、またとない機会
それには大きな意味がある、と、
あらためて思ったふたつの展示会だった


そんなわけで、とにかくへとへと
今夜はしっかりストレッチして、回復に努めなくては

学生だった頃みたいに
余韻に浸っている時間はない
短いこの町での滞在、全力で行くのみだ