会いたい人に会うために
小さな地方の町へ

バスを降りると、名前を呼ぶ声
緑のロングコートを羽織り、雪をかきわけて走ってきた友人と
思いっきりハグをする
なんといっても4年ぶりの再会だ


画家であり、デザイナーでもある彼女とは、
7年前のちょうど今ごろ、展示会で知り合った
広い会場の片隅、所狭しと作品が飾られた小さなブースで、
わたしは文字通り、恋に落ちたのだった

以来、彼女の絵を使ったトレーやコースターは
ずっとわたしの店のまんなかにある
作品が目に入るたび、お客さんが手に取ってくれるたび
本当に店をやっていて良かったなと思う
そういう存在


以前は、ストックホルムへ行くたびに会っていたのだけど
コロナでわたしの出張がストップし、
彼女は地方に引越して、お子さんが生まれた
しょっちゅう話はしているのに、会えなかった4年
顔を見ると、ふたりして、ちょっと感極まってしまった

元気でいてくれた愛猫と
1歳になったばかり、なんでも投げたい年頃の娘ちゃん
初めて訪れる家には、ストックホルム時代から変わったものと
変わらずあるものが共存していて
当然のことなのだけれど、なんだかとてもうれしかった

 

出会った頃、彼女のものを扱う店は、
ヨーロッパ中にたくさんあったけれど
あるときを境に、彼女は取引をすべてやめてしまった

どうしてもあなたの作品を扱い続けたい、と粘ったわたしに
彼女は、じゃああなたが欲しいと言うかぎりものを作る、と約束してくれた
あの日があるから、今がある

7年間、互いに苦しいことも多かったからこそ
いま、こうして並んで未来の話ができるのだ
仕事の相手として、あるいは友人として


町の気に入っている場所を、たくさん教えてくれたことも
庭で、鳥に餌をやったりしたことも
作品や、作業をしているところを惜しみなく見せてくれたことも
夕暮れの色に染まった雪道で見送ってくれた姿も
いつか、わたしが店をやめることになったら
きっと真っ先に思いだす

美しい一日の記憶を、そっと仕舞って
まずは、また、この先を歩いていく