関空から、北極の上を飛び
降り立ったミュンヘンは気温32度、真夏だった

展示会にヴィンテージの買い付けにと
予定がぎゅうぎゅうの夏出張がスタート
まずは、3年半ぶりのドイツだ


ミュンヘンへ来るのは実は3度目
毎度、いい街だなあと思うのだけれど
毎度、なんだかかみ合わない

今回もやっぱりそんな感じで
暑さに耐えてあちこちへ行っても、収穫なし
そのうえ、プライベートの日帰り移動で乗った電車が止まって
チケット変更などでとってもややこしいことになり、
あーあ

まあ、でも、こんなもので
だめなときはなにもかもがだめなのよ
これから、これから

 

夕方、全部の予定を終えて
カフェのテラス席で、アイスラテの氷を転がす
真夏の格好の人たちが、つぎつぎ、
颯爽と目の前を通り過ぎていく

目の前の書店で買ったばかりの本を開く
ベルリンの小さな出版社が出している、珊瑚の本

すこしずつ、陽が傾いてきて
珊瑚の図版に落ちる光に金色が混ざる
きょう一日は、この瞬間のためにあったのだ、と思う


どれだけうまくいかなくても、予定を詰め込んでいても
旅では毎日、そういう一瞬が、かならず巡ってくる
それを逃しさえしなければ、
報われない一日は、きっとない

だから、そう
今日も明日も、新しい気持ちで
自分のために、美しい瞬間を、
そして自分の店のために、美しいものを探すのだ