不穏な雲と、追ってくる蝉を横目に
あまりの暑さにぐらぐらしながら、事務所へ出かける

重い体を引きずって、片づけ
流しのまわりで乾かしていたグラスが床に落ち、
きらきらとした音がして粉々に砕けた

透明な破片をひとつひとつ拾い集め、
こんなに細かくなるのかと、ぼんやりと感心してしまう
なにかを割ってしまったのは、いったいいつ以来だろう


割れたのは、自分の店でも販売しているビストログラス
同じ葉っぱの模様のものをまたすぐに使うのは気が引けて、
B品の在庫を探り、星模様のものを新しく出した

“買い足しのできるアンティークデザイン”が欲しかった
このグラスを作ったふたりがそう言っていたことを思い出して
こういうことか、ありがたさを実感したな、としみじみ

悲しさは消えないけれど、それでも、
だってグラスは割ってしまうものでしょう、という言葉は
たしかにすこし、心を軽くしてくれるのだ

 

ちょっと休めるかも、というのはどこへやら
新しい企画をはじめることになり、
カタログを吟味してはアイデアを出しての数日

きっと、形になるのは半年以上先のことだし
するするとうまくいくともかぎらない
けれど、こういうことを一緒にやってみたいんだけど、どう?と
声をかけてもらえることがなにより嬉しいから、
こんなときには、できることは全部やろうと張り切る


ものを作る人ではないわたしができる範囲は
イデアを出すことと、相談に乗ること、
そして、ものを商品として成立させること
だから、邪魔をせず空気のようでいられたらとも思うけれど、
きっちり支えること、言葉を尽くすことはそれ以上に大事だ

信頼に応える、というのはどういうことなのか
もちろん相手によっても内容によっても違うけれど、いつも考えている
こういう機会をもらえる限り、毎度、
ちゃんと考え直したいと思う

とにかく、新しいワクワクがまたひとつ
冬中に目処がつくのか、春も過ぎるのかはわからないけれど、
お披露目できる日が、楽しみ