事務所にいる時間が短い営業日
眺めていたくて、花びんを連れて店へ

枯れてしまったお花や、元気のない葉っぱを取り
すこしボリュームがなくなったので、
フィンランドの青いガラスに入れ替える

なんども渡ったバルト海を思う
深い、青


祝日がないうえに雨も多い6月は
例年、店がいちばん空く月だ
今年もやっぱりそうで、とくに半ばに差し掛かった今週は、
秋や春の大混雑がうそのように静か

空いているというのは店としては喜ばしくはないんだろうけれど、
それでも、予約できたからとご近所の方々が来てくれたり
交わす会話もゆったりとしたものになったりして
混んでいるときとはまた別の充足感がある

店主の顔をしているようでいて、
変わらず、素のままの自分がここにあるのだと気がつく
無防備な季節

 

お世話になっている花屋さんに電話をかけて、
店に飾る、夏のお花をお願いした
スワッグと、あとテーブルになにか枝とか、
ある程度高さのある、緑のもの、という雑なオーダーを
いつものお兄さんは、丁寧に掘り下げてくれる

配達は、来週でも再来週でもいつでも大丈夫ですよ、と言うと
あ、僕再来週フランスなので、来週でもいいですか、という答え
こういう端々に、日常が戻ってきたことを感じて
ふっと気持ちがほころぶ


帰り道、半袖のカッターシャツを着た、
中学生の女の子とすれ違った
わたしもかつて着ていた制服
そういえば、6月1日が衣替えだったっけ

跳ねるような足取りと白のスニーカー
そういえば、まだ、
スニーカーは白と決められているんだろうか


大人として、ここにいることを
いまだに不思議に思うことがある
日本の大学に進学したときに、いったん京都を出て、
いくつかの町に住んで帰ってきたわけだから
無理もないのかもしれないけれど

もうすぐ夏至
ちょっとしたところから時空がほつれて、
過去にも未来にも行けそうな気がしてしまう
ぼんやりした遅い夕暮れ