夕方遅く、違う場所でデスクワークをしたくて、
仕事場の近くのカフェに出る

春になってからは、遅い時間に行くと
ほとんどデザートが売り切れになっているその店
よく会う店員さんに、これはまだあります?と訊くと
あ、たぶん、とちょっと砕けた感じで答えてくれた
コロナで空いていた頃からずっとそこにいる店員さん、
いつもの空間、好きなメニュー

水のなかにいると
ときどき水面に顔を出さなくてはいけないように、
必要な時間というのがある
そのために出かけるのは、けして遠くではなく
こういうなんでもない近くの場所だ

 

慌ただしい一週間を終えたら、
さらに慌ただしい一週間がやってきた

予想をはるかに超える忙しさをきわめているところに
イレギュラーな仕事が次々降ってきて、てんてこ舞い
てんてこ舞いってひさしぶりに使ったな、と思うけれど
まあ、うん、この単語がぴったり

とにもかくにも、詰め詰めで三日間働いて、
明日はすこしだけ余裕ができそう
午前にネイルを予約しているので、無事行けそうでほっとしている
いや、ほんと、こうなるとは思わなかったんだよ

 

片袖の終わりを目前にした姪のセーターを前に
どの段で中断してたっけ、と、目を数える

スピーカーから流れてきた曲に、ふと手を止めた
ボブ・ディランの“Don't Think Twice, It's All Right”
サシャル・ヴァサンダーニのヴォーカルに
ロメイン・コリンがピアノを重ねたカヴァーだ

 

 

“And it ain’t no use in turning on your light, babe
The light I never knowed
An’ it ain’t no use in turning on your light, babe
I’m on the dark side of the road”

この部分の歌詞がいちばん好き
そこだけ一緒になって口ずさみながら、
いかにもわたしの好みだなと苦笑する

わたしのこういうところは、本当に変わらないけれど
それでも、結構いろんな在り方ができるものだ
Don't Think Twice, It's All Right


この三日、身体も使ってへとへとだけれど
今夜は、仕事じゃなく夜更かしして
濃く淹れたお茶を、薄めながらゆっくり飲もう

眠くなるまでのこの時間は、
どこまでもわたしだけのものなのだから