ゴールデンウィーク、祝日の谷間
やっと行けたネイリストさんのところで、
爪を春らしい緑に変えてもらった

わたしの本名は、翡翠に由来している
子どもの頃は堅く感じていやだったけれど、
留学中、何人もの中国から来ていた子たちに美しい字だと褒められ
名前のみならず、こういう色まで好きになってしまった

青は、未だ遠くに感じる憧れの色
緑は、そばにあると安らぐ色

 

出張から帰ってきたはいいものの
とにもかくにも、時間がない
イギリス、スウェーデン、そして日本で増えた本が、
崩すに崩せず、塔のような状態になっている

とはいえ、好きで仕事を詰めているわけだし
ゴールデンウィークが終われば、否が応でも時間はできる
いまは、気持ちに栄養をやりながら、全力を尽くすのみだ


新しく事務所を構えるなら、
もっともっと頑張らなければいけないと、焦っていたけれど
恋人に、事務所ができたからって直接売上が上がるわけないんだから、
働きやすくなるならそれでもう成功なんだよ、と諭されて
コロッと、そうかも、と納得してしまった

目の前のことをきちんとひとつずつやる、というのは
わたしにとって、すべてに通じる攻略法みたいなものだけれど
その分、視野が狭くなってしまうということもある

遠い先のことも頭の片隅に置いて、ゆったり構えていこう
もしかしたらまだ、先は長いのだから

 

 

夕方、仕事のあと
光を浴びようと、散歩に出る

ひときわ美しい石楠花の前で
ひとりの女性が、お母さんの写真を撮ろうとしていた
どうしよう、シャッターが切れへんのよ、
いやきっとモデルが悪いんやわ、
そんなんやないけど、撮れへんの、と聞こえてくるので
よかったら見ましょうか、と声をかける

ああ、きっとここに触らはったからセルフタイマーになったんですね、と
説明し、あれこれお話して、結局並んだふたりの写真を撮った
石楠花の木は、ふたりよりもずっと大きくて、
薄いピンクの花が淡くやさしく、いっぱいに画面を包んでいた


藤の花が終わり、石楠花もそろそろ終盤
芍薬が咲きはじめ、薔薇も最初の何種かがもう咲いている

ついこの間まで枯れたようだった紫陽花も、
あっという間に茎を伸ばして、緑のかたまりになっていた
つやつやした葉を、そっと指でなでる
花が咲いてからももちろんいいけれど、
この時季のまだ薄い葉に水を蓄えているような紫陽花が、一等好き

眩しい晩春を吸い込む
夏までは、まだすこし時間があるはずだ