伊丹から羽田、ミュンヘンを経由し
24時間以上かけて、やっと、ロンドンにやってきた

アラスカ、クイーンエリザベス諸島、グリーンランド
眼下の風景が変わっていくのを眺めた
氷に感じる、畏怖と親しみ
2年7ヶ月ぶりの空港とフライトは、以前とは大きく変わっていたけれど
自分の根底に流れ続けるものは、変わらない


緊張して、前日も飛行機でもまったく眠れなかったし、
着くころには文字通りへろへろになっていたけれど
それはそれとして、せめて、
初めてのアラスカ回り航路は、目を開いていたかった
興味もあるけれど、ただでは起きないという意地もある

いつか、なにもかも、
あんな時もあったなあと、懐かしんで笑えればいいのにね

 

きのうは到着が深夜で、空港近くのホテルに泊まっていたので
きょうが、ロンドン初日
いつもの短期貸しアパートが営業していなかったから、
今回は、ずっとホテル泊だ

きょうから三泊するホテルは、
昔、大学の面接で来たときに泊まったところ
内装がすっかりモダンに生まれ変わっていたので驚いた

だけど、最初から洗面台にトラブル
そして窓もひとつが閉まらず、直してもらうことに
結局、解決しないまま時間が経ち、
不在のあいだになんとかしてもらうよう言い残して、外に出る

通っていた大学のカフェまで歩いていき
慣れ親しんだサンドイッチで、ようやくひと息
やれやれ、と思うけれど、
まあ、これでこそロンドン、という気もするのだった

 

 

二度目の大学時代を過ごし、
今の仕事をはじめてからも年四回、
毎年合わせてひと月以上を過ごしていたロンドン
それだけに、ブランクがあっても、
この街の空気は、驚くほどに馴染む

ほとんどの人が、もうマスクをしていなくて
ここに来られなくなった前の風景と、何も変わらない
なんだか、この三年間のことは、
全部悪い夢だったんじゃないかと思うくらい


だけど、通い詰めていた大好きな古本屋は、
ずいぶん本棚自体が減って、すっきりとしてしまっていた
ショックで呆然としながら、スーパーを歩いていると、
そこも、ずいぶん整然としていることに気がつく

ああ、そうか、
これがソーシャル・ディスタンスが生んだものなのだ、と
気がついて、涙が出た

認めたくないけれど、
わたしたちは、ほんとうに失ったのだ
それも、有形無形にかかわらず、数えきれないほど多くのものを

 

ちゃんと、平静に、ものを見られるだろうか
変化を受け容れ、新しいものを探せるだろうか

不安だけれど、まだ着いたばかり
一日、一日と過ごすうちに、
わたし自身もまた変わるに違いない

揺らぐ自信を、なんとか胸の真ん中に据えて、
今夜はしっかり眠って
あしたから、本格的に仕事だ