南へ向かう電車に乗り、
明るさを纏うブライトンへ


ブライトンは、大学の頃もよく遊びに来ていたし
仕事を始めてからも取引先が多いので、毎度必ず来る
イギリスでは、ロンドンの次に長い時間を過ごしている町

この街の闊達な雰囲気と、おおらかな海と、
ここでわたしを迎えてくれる朗らかな人たちが好きだ
ずっと、そう

仕事を終えて訪れた、海辺のピアからの風景は
三年前となにも、変わらなくて
自分にとって特別な場所があり続けてくれる幸せを、噛みしめた

 

ロンドンに着いてから、何日か経ったけれど
いまだにわたしは、変化を受け容れられていない
正直、これほどまでに店がなくなっていたり、
営業形態や置いているものが変わっているとは思わなかった

この三年の荒波は、
あまりにも、あまりにも高かった
場所は違えど店を経営する者として、それがよくわかるだけに
ほんとうにやりきれない

変わっていくのはあたりまえのことで、
前に進むのみ、というのはそうに違いないのだけれど
それでも、いまのこの自分の気持ちは大事にしたい
これからを歩いていくために

 

以前より仕入れが大変になった、ヴィンテージ品を
大切に抱えて、ロンドンへ帰る電車に乗る

生まれたばかりの姪へのブランケットを編み進めながら
思い出したのは、きのう地下鉄で見た、ジョン・ダンの詩の一節

“No man is an island entire of itself;
every man is a piece of the continent, a part of the main”

隣の席の、本を読んでいる女性の膝では、
犬が気持ちよさそうに眠っていた


明日を、きっと、迎えに行かなくてはいけないけれど
いまだけは、目を瞑って