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何百時間の積み重ねの
結晶みたいな、仕事

ほかのことを、些末だなんて思わないけれど
ほんのすこし新しいことを考えている時間は、
やっぱり特別なのだ


夕方、銀行に用事があって、仕事場を離れる
強い南風に押されるように、どんどん歩いていって
川べりを、目を細めながら進む

アカツメクサの季節が終わりかけ、
木々はすっかり夏の色になっている
木陰に入ると、セキレイらしい黒い背の鳥が
小走りで足下を通っていった

季節の変化は、鮮やかで
自分から遠いところで起こっているとも感じるけれど
花や葉、水や光のゆらめく色に、
わたしはいつも、現実に引き戻してもらっている気がする


銀行に行くのを忘れていたことに、
ずいぶん経ってから、気がついた
もう、あんまりにもあんまりで笑ってしまうけれど
こういう日もあるでしょう

最近、本当に天気がよくなかったから
陽の光に我を忘れたのだな、きっと

 

この仕事は、本来、
ベルリンでやっていたはずだ
そう言ってもどうしようもないとわかっているし、
むしろ、遠隔地でもこうして話が進められてありがたい
それでも、噛み砕けず、飲み下せず、
気持ちがじわじわと染みだしてしまう

仕事がずっとこんな状況だから、ただ必死で
プライベートで出かけたいという思いも、
誰かに会いたいという思いも、乾涸びてしまった
なにもかも、後回しにしたいわけではないのに

 

 

Emilíana Torriniの新しい曲が出ていることに気がついて
歩きながら、かけてみる

Ég berst einn í þessu stríði
この戦争をひとりで闘っている、という歌いだしに
息を呑んで涙を堪えた


歌声と詞が、胸の奥に溶ける
こんな風に、孤独を、もっと静かに眺められたら

どうするのが、ほんとうはいいのかなんて
ぜんぜんわからないまま
燃え尽きるように、五月が終わっていく