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パーカーのペンを使いはじめたのは
もう、10年以上も前のこと


特定の店を特別に愛する、ということを
雑貨に関しては、あまりしてこなかったわたしだけれど
唯一、大きな影響を受けた店が、東京にある
海外の美しい文具を持つことの愉しみを、
わたしは、その店から教わった

東京でインテリアの仕事をしていたころ
たまたま、その店の店長さんや、母体の会社の経営陣の方々と
集まって、お酒を飲む機会があった
わたしの上司が企画した、同業他社の交流会みたいなもので
そこに座っていた中では飛び抜けて若く、経験がなかったわたしは
あまりに場違いで、ガチガチだったことを覚えている

そのとき、おすすめのペンはありますか、という不躾な質問に
パーカーです、絶対だまにならないですよ、と
店長さんに答えていただいて
以来、ずっと、わたしはパーカーのペンを使っている
いまは、仕事で黒インクのペンが必要なので、
間違わないよう、黒はカランダッシュ、青はパーカー、と使い分けているけれど
留学時代は青インクがあればよかったので、これしか使っていなかった

とにかく書きやすい、というのもある
だけどそれ以上に、お守りのようなものなのだ、きっと
“自分”を手に入れたかった当時のわたしと、
今のわたしをつなぐ、願いのようなものでもあるかもしれない


こんなエピソードを、いま書こうと思ったのは
その店、実店舗が、閉じてしまうという話を聞いたからだ

長い、長い間、同じ場所にありつづけてくれた店
なくなってしまうなんて、考えなかった
考えたくなかっただけかもしれないけれど


いまの状況がこの閉店に関係あるのかは、わからない
けれど、わたし自身も苦境にあるいま、
輸入販売という業種の苦しさは、わかる

この業界だけの話ではない
わたしにとっての、あの店や、このペンのような
誰かにとっての無二のものが、いったいどれほど失われてしまうのか

ふつふつとわいてくる怒りと、
行き場のない、悲しさ

 

きょうで、4月が終わる
店を一時的に閉めてから、もうひと月以上が経った

こんな日々が来るなんて、さすがに想像していなくて
長かった、、、と言いたいところだけれど
正直なところ、振り返ってしまえばあっという間だ
店を開けていなくても、毎日けっこうな量の仕事があるし、
だいたいわたしは、“やるべきこと”をがっちり作るタイプなので
それをこなしていたら、だいたい一日が終わっている


どうやら、5月もこういう状況が続きそうで
なんとも心細くはある
まあでも、どうにもならないものはどうにもならないわけで、
よくよく考えて、小さなことを積み上げていくしかない

見通しが甘いと、命取りになる
でも、そもそもこの先へ行こうとする気持ちが持てなければ、
ひとりでちいさな事業などやっていられないのだ


ゴールデンウィーク
葵祭も、出張もない5月

これまでよりすこし、勇ましく
なにより、無事に、毎日を過ごせますように