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ストックホルム初日
2月にも行った、イラストレーターさんのアパートへ


彼女の部屋は、もう何度も訪れているけれど
そのたびに、クリップボードや冷蔵庫はもちろん、壁のフレームにも
違う作品がかかっていて、驚く
自分やほかの人の作品を、気分に合わせて飾ることを、
彼女はほんとうに楽しんでいるように見える

いまは、インディゴ染めと刺し子にハマっているらしく
イデアスケッチもたくさん貼られていた
日本の藍染のこと、わたしもスウェーデンでインディゴ染めをしたこと
彼女のつくったもののこと、染料の取れる植物を育てていること
スケッチを前に、話は尽きない

それにしても
こんな風に、部屋に自分を映すことができるというのは
いったいどんな感覚なのだろう

 

そのイラストレーターさんにはじめて会ったのは、
わたしが店を持っていなかった頃
凍える1月のスウェーデン、展示会の片隅だった

若手デザイナーとして、小さな場所をもらっていた彼女は
テーブルをひとつ置き、作品を並べていただけだったけれど
どこか静けさのある、美しい作品群は、
わたしには、大げさでもなく、光を放って見えた

あのときの感激は、
彼女と、半分友だちのように接するようになった今でも
ずっとわたしを動かしているし
今でも作品を見るたび、ぐっと胸にくる
わたしは、ほんとうに
彼女の描く世界が好きなのだ


あの頃は、スウェーデン国内やオランダ、フランスに数店舗、
中国にも1店舗、取引先があったけれど
その後、イラスト以外の実務を担っていた幼馴染が別の仕事で多忙になり
彼女はひとりで、すべてのことをこなさなければならなくなった
でも、雑誌や絵本の仕事が忙しく、
ものを作るのに手間がかけられないわけで
もう、ほかの会社とは、取引をしなくなってしまった

けれど、わたしはきっと、群を抜いてしつこかったんだろう
あなたが欲しがってくれるなら、ものを作りつづけるよ、と
彼女は笑って言ってくれた


どういう風にできるか、ずっと模索していたのだけど
トレーやコースターは、わたしが注文する分だけ、
直接、白樺製品を担当している会社にお願いをして
そのまま京都に送ってもらえることになった
彼女にとって大変なのは、余剰在庫を持つことと、発送で
それを両方クリアできたのは、大きい

クッションカバーや、紙製品は
彼女もウェブショップ用に、たくさん在庫を持つので
そこから分けてもらうということに
それほど重くないので、わたしが都度、こうして取りに行く

これで、なんとかしばらくは続けていけそうで
本当にほっとしている
こうしてまとまった数を買う人間がいなくなれば、
もう作れないというものがあるわけで
わたしにとってそれは、お金の話ではない大きな損失なのだ

すこしでも、彼女の仕事の助けになるなら
そして、美しいものを作りつづけてくれるなら
わたしの仕事にも意味があるから、
一緒に、道を探していけたらいい

 

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出たばかりの絵本を
彼女はニコニコと見せてくれ、サインを入れて一冊贈ってくれた

2月に、描いている最中の原画を見ていたので
最高の形になったことが、うれしい


彼女の、人見知りの猫が、
足もとにすり寄ってきたかと思うと、テーブルに飛び乗り
絵本と商品のうえをのんびり歩く
ダメダメ言いながらも携帯を構えて写真を撮っていたら
振り返ってポーズを決めたので、笑ってしまった

人が好きじゃないんじゃなかったの、と声をかけて
猫を抱きあげる
すっかり慣れたよねえ、最初は何度呼んでも来てくれなかったのに、と
顔を見合わせて、また、笑う


ほのぼのとあたたかい時間が
ゆっくりと、流れる

ずっと、彼女とこんな風に仕事をしていけるように
しっかりやっていかないとな、と
強く思った、夜