f:id:lumi31:20190807015046j:plain

 

日傘の影
百日紅の花
い草とコーヒーの匂い

見慣れた住宅街を満たす、
逃げ場のない蝉の声


遊ぶ子のいない公園が
なんとなく寂しくて、足早に横切る
歩きながら本を読む、学校帰りの女の子とすれ違い
そうして何度も転んだかつての自分を、思う

覆いかぶさってくる夏の
じっとりとした、なつかしさ

 

たいして休めないまま
目の前の仕事を、こなしている

9月の自分と、綱引き
わたしはひとりしかいないので、この量の仕事を回すには
未来と相談しないといけない


7月中には荷物を出すと言っていたのに
まったく音沙汰がない、取引先
担当者にメールを送ったら、
夏休みで、戻りは12日だと、自動メールが飛んできた

いつでも、何かに追われている自分が
フッと、情けなく、可笑しくなって
まあいいか、いつかは入荷するんだし、と
よく言えば肩の力が抜け、悪く言えば諦めの境地

でもほんとうは、これくらいが
丁度いいのかもしれないね

 

窓の隙間からも入り込む、蝉の声
冷蔵庫から、ひやしあめを取りだし、
勢いよくコップに注ぐ

蝉のいない世界
どこにもひやしあめのない世界を
ちょっと、想像してみる


とどまるところを知らない
終わりの見えない夏

うんざりはするけれど
悪くないと思う瞬間も、ある