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夕暮れをゆく列車

スペインの色彩は、ほかのどことも違っていて
絵具を塗り重ねたようなその厚みに、
何度でもはっとする


この国を旅するのは
これで、おそらく6度目
バルセロナマドリード近郊はもちろん、アンダルシアからバスクまで
これまで、本当に、たくさんの町を訪れてきた

豊かな情緒、美味しい料理
土の匂いと、勢いよく転がるような言語
スペインはいつだって、とくべつな旅先だ

 

今回は、取引先を訪問したかったのと
何人か、会ってみたい方もいて
はじめて、仕事でくることになった

シエスタの長さに惑わされながら
きのうはバルセロナ、きょうはマドリードを歩いた
普段は感じられないものを、たっぷりと感じた
この色彩も、そう 

 

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仕事で、言葉がまったくわからない国に来るのは
あまりないことで、緊張する
けれど、もともとスペインの商品というのは
うちの店にとっては、異質なものなわけで
“外部から来た”という感覚をくっきりと保っておけるのは、
これはこれで、良いのかもしれない

エネルギー溢れる人たちに会って、さまざまな話をした
会った人たちがそうだったからなんだろうけれど
バルセロナも、マドリードも、
以前よりもスタイリッシュな印象に、変わった

何度も訪れている町だったとしても
見方が変わり、たとえ少しだけでも、新しいことを知れる
これだから、出張はおもしろい

 

実はバルセロナは、前回来たのは
ルンドでの留学中、6年前の冬だった

いよいよ追い詰められていた頃
授業がすべて休みになった1週間、
大学寮に、ルンドにいるのが、たまらなく辛かった
地中海が見たい、と、いくつかの行先を探し
いちばん安かったバルセロナに飛んできたのだった


バルセロナ、シッチェス、ジローナ、フィゲラス
訪れた町々は、どこも自分からは距離があり、でも温かくて
1月のカタルーニャは、濃く、明るく、
沈んだ心のうえに、あざやかな色をのせてくれた

ルンドに戻ってからも、それは消えることなく
ようやく、秋からの積み重ねが実ったこともあって
2月以降、わたしはすこしずつ大学が楽しくなった
スウェーデン語が以前よりも聞こえてくるようになり、
3時間のディスカッションにも、5時間の試験にも
つらいつらいと言いながらも、怯まなくなった


すべてがあの旅のおかげというわけではなくても
この場所には、ほんとうに感謝している

旅というのは、こんなにも、
気持ちを塗り替えてくれるものなのだと
わたしは、カタルーニャで知ったんだよ

 

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今回は、バルセロナで昼間に時間があいたので
電車で30分のシッチェスも、訪れた

地中海と小さなシッチェスの街は、
あの頃となんにも変わっていなくて
なつかしいような気もしたし、
ずっとこの場所を心の隅っこで見ていたような気もした


相変わらず、わたしは
強くいられないこともあるけれど

こうして時間がたって、仕事を持って
お礼参りのような気持ちで、また訪れる場所があることに
ちょっとだけ、胸を張りたいと思うんだ