今年二度目のロンドンは
初日の仕事が、なくなってしまって
強制休みでのスタート
あまりに幸先がよろしくないので
さすがにちょっと落ち込むけれど、しかたない
どのみち、あとは明後日以外は、
ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールなのだ
時差ぼけで、5時ごろには爽やかに目覚め
開店と同時に近所のカフェで朝ごはんを食べながら
どこへ行こうか、考える
雲ひとつない青空を見上げ
こうでもないと、なかなか行けないところ、と
すっきりと心を決めた
大学生だった頃は
年間パスを持っていた、キュー・ガーデン
あちこちの国の、あちこちの植物園、
そしてあちこちの温室を制覇し
考えごとをしたいときには温室、というわたしだけれど
ここは特別のなかの特別だ
伸びやかな植物の、濃い匂い
優雅だけれど鬱蒼とした、整うこととは無縁の空間
螺旋階段を上って
茂る葉を、そのさまざまな形を、眺める
木と同じ高さのそこは、下よりもさらに濃く、
夏の雨のあとのような葉の匂いがする
どうして、温室を特別に思っているのか
言葉にするのは本当にむつかしいけれど
この匂いと、水を含んだ空気、重なる緑らしい緑の植物は、
静かに呼吸をして眠る大きな生き物のようで
優しく、でも、有無を言わさぬ迫力があって
わたしはそのことに、いつもなんとなく安心するのだった
あれこれを、すこしだけ
分解して、収めるところに収められたような気がする
春というより初夏の、明るい陽を浴びながら
あしたからのことを、思った
美しい数時間だった