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陽が傾きはじめ
青い青い海が
すこしずつ、その色を変える

海岸から、ほんのすこし
高いところへ、上る
ニースの街の、かたちを
静かにたしかめる


あまりに美しく、特別で
そのまま網膜にはりつけて、連れて行きたいと
願う風景というのがある

この海岸も
わたしにとって、そういうもの

 

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6年前
夕暮れ時、ここに座り込んで泣きながら
“帰らない”ということを、本気で考えた

あの頃、どれほどしんどかったのか
もう、思い出として美化されてしまって、
ぼんやりとしか記憶にないけれど

ともあれ、わたしは、
立ち上がって、帰ったのだな、と
いまさらながらに、驚く
“帰らなければ”という気持ちが勝ったというだけの話だろうけれど
それでも、ともかく、帰ったのだ


あの日のわたしにも、そしてきょうのわたしにも
あるのは、目の前の明日だけ
失うもののことばかり考えるから、忘れているけれど
きょう日常へ、帰るのも、帰らないのも
ほんとうは、自由

いつだって、選んで
そして繋がっていく

わたしが、帰ることを
これからも選びつづけるかは、わからないけれど
あの日から、“帰らない”と思ったことは
まだ、一度もない

 

コート・ダジュールのきらめく明るさを
薄く身にまとって

明日からは、きっと
もっと、つやつやした気持ちでがんばれる


無理やりスケジュールにねじ込んだ、休みだったけれど
やっぱり、ここまで来てよかったな

たった2日
それでも、旅らしい、旅だった