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朝からあちこちを回り
肩がちぎれそうな荷物を下げ、歩く

何十回も日帰りで来ている、コペンハーゲン
いちばん好きな場所は、変わらず、川だ

きょうは、ここは凍ってはいなかったけれど
翳って、淡く淋しい、ひんやりとした色だった

かえって情緒があって、離れがたく
岸を歩いて、すこしだけ遠まわり

 

夕方になり
バスに乗って、街の中心部から離れる
取引をしているガラス作家さんが、
アトリエに招いてくれたのだった

作っているところを、見せてもらい
淹れてもらったお茶を啜りながら、話をじっくりと聞く
作品のこと、アトリエのこと、ものづくりのこと
こういう時間は、自分の仕事のなかでも、
やっぱり、特別だ、と思う


彼女のアトリエの棚は、
ランプの制作に使う細かなもので、いっぱいだった
前は箱に入れて仕舞っていたんだけど、よくないの、
こうして全部見渡せたほうが色々なことを考えて試せる、と
ひとつひとつのものを見せてくれながら、言っていた

蚤の市で買ったフィギュリンやお皿、壊れた地球儀、
自動車のパーツ、形の不揃いな金属の円盤、謎のコイル
そういうものを、廃棄ボトルを伸ばして磨いたガラスのパーツと組み合わせて
彼女は、美しいランプに変身させてしまう

こういうものを買う人って、そうそういないでしょう、
だからかんたんに手に入るのよ、と
彼女は笑って言うけれど
その底には、ものを捨てたくない、
そして、“リサイクル”という言葉以上の美しいものを作りたい、という
強い強い、思いがある

美しさと
一点一点が無二であること、に徹底的にこだわる彼女は
展示に出すランプを作っていても、
うちで扱えるような、ちいさな花瓶を作っていても
いつだって凛としたアーティストで
わたしはこの人のこういうところが本当に好きだなあ、
それはこうして会って、長くお喋りしても全然変わらないなあ、と
ほんとうに、うれしかった


バス停まで送ってくれながら
アトリエのある建物のオーナーが最近変わったのだと
彼女は、話していた
新しく入居する人たちの家賃は、以前と比べものにならないほど高く
いま入居している人たちの家賃も年3パーセントずつ上がっていくらしい

家賃の安い郊外に、アーティストたちが集まった地区ができると
今度はそこの家賃が上がっていく
都会でものづくりをする人共通の悩みだ

だけどいいこともあってね、屋上にテラスを作ってくれたの、
きょうは寒すぎるけどコペンハーゲンが見渡せて最高よ、
今度は夏にまた来てね、と
凍える夜道で、さわやかに次の約束


この仕事をする意味
わたしなりに信じて、支えていきたいものを思う
最高の、初日だった