天気予報を裏切って
降りだした、雨

通気口から
ぱらぱらぱらと、ばらけた音
ちょっと手をとめて、
透明な糸のような雨を、眺める

ちょうどお客さんがいないのを、いいことに
給湯室でお湯を沸かし、紅茶を淹れた
お隣さんのケーキは、りんごとシナモン

いよいよ秋だ、と
きのうも思ったことを、また



夜、出張へ持っていく文庫本を
すこしずつ揃えはじめる

文庫本は、2週間ちょっとの出張なら
たいてい、5冊持っていく
行きの飛行機で2冊は読み終わってしまうけれど
現地でも本は買うので、基本的にはそれで十分


旅に連れていく本は
いつも以上に、吟味する
考えることだらけで、どれだけバタバタしても
これは譲らない

最近は、移動中に編み物もするようになったけれど
本の地位は、やっぱり変わらないものだ



いまは、時間のことを
両側から迫ってくる壁のように、感じる
新しい場所へ、向かわなくてはいけないことを
それなりに苦しく思っているんだろう

ずっと、今週が終わらなければいい
ずっと9月のままがいい、と
吹き飛ばされることがわかっている願いを唱えて
ぼんやりと、煌々とした月を眺める

感傷にひたる暇もないように
あしたもあさっても、忙しくなればいい