Tシャツのまま家を出て
ちょっと考え、上着を取りに戻る

いつか、ストックホルムのフリマで買った上着
何の変哲もないデザインなうえ、結構ボロボロなんだけれど、
やっぱり好きで、結局ずっと持っている

うす暗い仕事場が、ますます暗くなり
雨が降りはじめた
いつのまに、こんなに寒くなったのか
いよいよ、秋が来るのかもしれない



実家で、片付けをしていたら
高校の成績表などが、うっかり出てきてしまった
けして成績が良くなかったというのは、覚えていたけれど
それにしても、あらためて見ると、
なかなかの破壊力だった

いまさら驚いたのは
英語が本当に、全然ダメだったということ
この成績表を見た人に、
この子は後にイギリスの大学へ行くことになるし
外国語を使った仕事をするようになるよと言っても
笑われるだけにちがいない


わたしは、考え方が硬すぎると自分でも思うくらい
たとえば理想のことも、あるいは才能のようなものも、
もっと言えば、方法論も、そして他のひとのやり方も
つまり、自分の現実を飛び越えていくなにかを、
ことごとく、信じていない

時間をかけること、
目の前の小さなものを、端から片付けていくこと
わたしが信じているのは、結局そういうことだけで
楽しみながらやろうとはしているけれど
まあ、突き詰めれば日々は鍛錬、
とくに、こういう技能なんかを得るためには
ひたすらにトレーニングが必要だと思っている


その根底には、留学に憧れた高校時代がある
当時は、アメリカのある大学に憧れていて
だけど、学校の英語の成績はよく言っても普通
海外にはいちども行ったことがなく、
あきらめと劣等感ばかりが、膨らんだ
わたしの高校時代は、本当に楽しいものだったけれど
これは、苦い苦い経験

随分あとになって
なんとかできる範囲のことは、
自分の頑張りの上乗せでなんとかできると、思えるようになって
それで、こんな人生になったわけだけれど
だから、きちんと何かを始めるということと、
それを続けることが、どれほど大切か
いつも考えるようになったんだろうな


ぺらぺらの成績表を、眺めながら
そんなことを、思った
これも、戒めにはいいのかもしれない
いや、本当は今すぐに捨てたいんだけど

この頃は想像もしなかった、わたしの旅は
ちいさな日々を、ひたすらに重ねて
まだまだ、続くんだ