秋田県にある、祖父母の家

よく庭いじりをしていた祖父が亡くなって、13年
そして、祖母が亡くなって、1年半
主がいなくなっても、
庭にはまだ、昔の面影がある

柿の木は、今年もちゃんと実をつけ
地面には、育てていた名残か、ホオズキが這っていた

随分前に、埋めてしまった池に立って
染まりはじめている紅葉に、手をのばす
遠い日の記憶は、もう泡のようだ



昨日から、この家に来て
祖母の遺した荷物を、片づけている

これが、祖母にこう言うのも何なんだけれど
彼女はほんとうに、片づけのできない人だったので
もう、めちゃくちゃ大変なのだ
広い家のなかに、色々な箱やケース、引き出しがあって
ありとあらゆるものが、とにかく雑多に入っている

わたしがいちばん持って帰りたいのは、古い紙類
つまり昔の写真や書類なのだけれど
家系図や、曾祖父母の写真や手紙、高祖母の小作米代金精算書、
果ては、はるか昔病床にあった祖父が書いた遺言書まで
チラシや空の封筒、茶道関係のもろもろの間から出てくるので
膨大な量の紙を、全部確認して、仕分けないといけない


ぶつぶつ恨み言を口にしながら
祖母のことを、思う
家が第一だと言いつづけていた祖母だったけれど、
祖父とは違って、こういう紙類を大事に扱うことはなく、
わたし達に、ご先祖さまの話をすることもなかった

祖母が、大切にしていたものは
いったい、なんだったのだろう


はあ、それにしても、
もうちょっと片づけておいてくれてもさ、と
ため息をつきながら、すこし可笑しくなった

皮肉といえば、皮肉だけれど
こんな風に、家に興味を持つ日が来るなんて
二年前のわたしは、思わなかったな