ロンドン時代から、大切にしている
Florine Stettheimerの詩集

彼女の作品に出会ったのは
ニューヨーク、メトロポリタン美術館だった
そこにあった4枚の絵画が、どれもすばらしくて
名前を覚えて調べ、彼女が詩人でもあることを知った

そして手に入れた、この本の中に
10月13日、という、詩がある



“黒い蝶が
長い、黒い影とともに
そこに居た
灯りをつけたとき
部屋の真ん中で
銅の色をしたカーペットに
しっかりととまっていた
そのまま永遠に
動かずにいるようで
わたしは恐怖におののいた
灰色の壁が
つめたさを増し
日本の版画は
切腹をしている
うすら寒い恐怖のなかで
わたしは誓った、
部屋を、白と金に染めることを
そして、壁に描くのだ
鮮やかな花を
蜜蜂を
白い蝶を
鳥たちの歌を
明るい陽の光を!”



わたしは、秋のニューヨークに行ったことがない
けれど、この時季になると、この詩を思いだして、
つめたい風の吹くセントラル・パークや、
寒々とした部屋を想像する


彼女の詩は、夢みる少女のようで
オーラのように漂う、豊かな感情と、独特の拙さがある
そのなかに、フッと現れる影に
わたしは、揺らぎのあるやさしい瞳を感じる

彼女は、ほんとうに
壁に描いたのだろうか
ロマンチックで、伸びやかな、彼女らしい絵を


そんなことを、秋田の寒空に思う
10月13日の、夜