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長くしぶとく咲いていた三椏の花が、ついに終わり
勢いよく垂直に、葉っぱが出はじめた

強くきらめく水面に、思わず目を細める
もう初夏の光だ


つい最近までちょこんと小さかったチューリップは、
あっという間に伸びて咲き揃い、そして開ききってしまった

毎年ゴールデンウィークに盛りの石楠花も
今年はもう、ずいぶん咲いていて
あまりの気の早さに、とまどう

今年はずっと、もう咲いてる、と驚いてばかりだけれど
このまま、全部が前倒しになっていって
いつか、今の感覚は過去のものになるんだろうか

 

花の盛りは短く、青空もつづかない
笑顔でカメラを向けていた人たちは、
あっという間にいなくなってしまう

そのことを、切なく思ったりもしていたけれど、
日々変わっていく葉や枝も、暗い日に滴る雨雫も
単に、わたしが好きで、見ていたいというだけなのだと
最近は思うようになった

多くの人はきっと、わたしよりもずっと
たくさんのほかのものを取り込んで、違う焦点で生きている
きっとそれだけのこと


忘れられても
また咲くと、人が集まる

そう思うと、また同じ季節が巡ってくる、というのは
なんて安心なんだろう

 

4月の前半までは
あれこれ〆切があったりで、とにかく忙しい日が続く

ほとんど毎日、すこしの時間でも見にでかける植物と、
作業をしているいつものカフェの静けさが、今のわたしの支えだ


きょうお会計のとき、カフェの店主さんに
いつも長居してすみません、
ここへ来ると集中できて本当に助かっています、と伝えた
それだけでも、わたしには勇気の要ることで
いえいえそんな、とマスクの下で笑ってもらえたことが、嬉しかった

うちに来てくれるお客さんも、何人かにひとり、
ありがとう楽しかったです、また来ます、と声をかけてくれたりする
皆が皆、わたしみたいにいちいち緊張する性格ではないだろうけれど、
それでもすごいことだと、あらためて思う


伝えようとする瞬間、伝えてくれようとする瞬間を
暗い部屋のほのかな灯のように、そっと大切に思っていたい

こんな今だから
ふと、消えてしまわないように