しとしとしとしと
雨が降りつづく、一日

そういえば、営業日に
こんなに天気がよくないのは、ひさしぶりだ


夕方近くになって
最近にしては、めずらしく
ぽっかりと、時間があいた

二日間ためてしまっていた、仕事関係のメールを
一通、一通、返していく
近ごろは、ほんとうにあっという間に、
返信を書くべきメールが積み上がってしまう

コーヒーを淹れて、ミルクをたっぷり加え、
事務所側の電気をしばらく消して、
お隣のごまクッキーを、もそもそ食べる
仕事の日の、こんな風に静かな夕暮れは、
いったいいつ以来だろう



全部手近な仕事が終わっても、まだ、時間があって
すっかりうれしくなり、友だちに、メールを書いた
ずっと書きたいと思っていて、
でも、これだけは落ち着いた気持ちのときに、と思っていたもの

デスクの横の、大きな窓に
つぎつぎ、雨粒が流れていく
通気口から、ぱらぱらぱらと、
どこまでも雨らしい音がする

彼女なら、きっと、
この雨のうつくしさ、機微を、わかってくれる
メールを書きながら、そう、思った


去年、店がオープンした日
彼女は駆けつけてくれて、そして、手紙をくれた
わたしは、その手紙を
いまでも大切に、デスクのレターラックに立てていて
折にふれて、読み返している

店が、幸せな場所になるように
わたしは、自分の立ち方を、いつも考えすぎてしまうけれど
肩肘をはらなくても、自然にそこにいて出来ることというのは、
案外多いのかもしれないと
そう思わせてくれる言葉が、並んでいる手紙



メールを書き終わったころ
ちょうど、お客さんがいらっしゃって
すっと、仕事に戻る

うんとクリアな気持ちになって、息を吸う
あかるい、雨の夜