あちらこちらをひっくり返し
店内のディスプレイを変える、午後
イギリスから箱がひとつ、届く

開けてみると
種類ごとにわかりやすく束にされ、
整然と並べられた、グリーティング・カード
思わず、わあ、とひとり声をあげて
写真まで撮ってしまう

そういえば、このカードは注文品なのに
ここまで、ひと月もかかっていない
手のかかる取引先が多いからか、
きっちり並ぶカードを眺め、うーんと感心してしまった



このカードを作っている女性に会ったのは
展示会の会場、奥の奥にある小さなブースだった
ゆったりとして、でもどこか儚げな彼女のまわりに
繊細なカードがたくさんかかっていて、さらに儚く
近づいてもいいものか、躊躇うほどだった

ハロー、荷物重そうね、もうだいたいまわったの?と
彼女は笑って、やさしいまなざしをこちらに向けてくれた
ほとんどまわって、今あなたを探してた、
実はリバティであなたの美しいカードを見つけたの、と言うと
笑顔がぱっと大きくなって、
なんだかとても、得難いものを得たような気がした


それから、何度メールのやりとりをしても
彼女の印象は、変わらない
カードの印象そのまま、繊細で、ふわりとあたたかい

きょうの小包には、手書きのカードと
あなたに小さなギフト、と書き添えられた、
注文していないグリーティング・カードが入っていた
そういう心づかいすべてが、カードを作る人として完璧で、
何よりそのことが、とてもうれしかった


わたしは、必ずしも
ものに気持ちが乗る必要は、ないと思っている
それが、ものと誰かのあいだを仲介するわたしの気持ちなら、尚更
軽やかにものと付き合うことが、
個人的な理想だからかもしれないけれど

けれど、とくにこういうものなら
作っている誰かが、いるわけで
会話のなかで、ただ仲介をするだけのわたしの気持ちも、動く
そういうときは、どこまでも純粋に
この仕事をはじめてよかったと、思うのだ



明日、お店に
届いたカードを並べるのが、本当に楽しみ

特別な人に贈ったり、自分のために飾ったり
わたしもこのカードをそんな風に使えたら、いいな