連休明けの雑務を、あれこれ終わらせて
とりあえず、ネイルへ

ネイリストさんが、伸びきった爪を見て
伸びるのが早すぎると、笑う
お客さんの中でも、一、二を争う早さだとか

やっぱり手先使うからかなあ、と、しみじみと言いながら
彼女は、手をとって、爪を整えはじめる
この、スッと仕事に入っていく瞬間が、好きだ


最初に出した、オレンジ色のダリアの案を
ふたりでいろいろ考えた末、捨てる
結局、シンプルに配色だけを取り入れて、初秋らしさを出すことに

ネイリストさんは、“よいものにならない”と判断すると
こうだから、やめたほうがいいと思う、とキッパリ言ってくれて
そのうえで、提案をいくつかしてくれながら
わたしの第二案、第三案を待ってくれる
色も、彼女の感覚とわたしの意見でバランスを取りながら
一色一色、すこしずつ混ぜて調整してくれて
わたしの手や、雰囲気、人となりから浮くと判断すると
躊躇なく、やり直す

プロだなと思うし、
それ以上に、細やかな、誠実な仕事だなと思う
わたしは、そんな彼女をほんとうに尊敬しているし、
見習いたいと、いつも、思っている



何度も行って、話をするうち
ネイリストさんは、わたしにとって
恋人以外で唯一、仕事のこと、理想のことなんかを
ざっくばらんに話せる人になった

彼女の人柄が好きで、信頼しているというのもあるけれど
職業柄なのか、聞き上手ということもあるし
親しい友人というわけではないという、距離感もあるし
彼女が、ひとりで仕事をする先輩だということもある
ネイルのときのわたしは、
実は、ほかの誰といるときよりも、饒舌だ

彼女と会うのは、ひと月に、3時間ほどだけれど
一週間分ほどは喋ったという気持ちで
いつも、帰り道は、心がクリアになった気がする


そして、きょうも
帰りは、足取りが軽く

秋色になった爪を眺めて
ほんのりと、明日が色づいたような
あたたかな気持ちになるのだった