友だちと、鞍馬へ

昨夜遅くから、途切れながら降りつづいていた雨は
寝坊した友だちがやってくる頃には、上がっていた


いつ以来かわからない、秋の鞍馬山
濡れた紅葉と、けむりのように薄く広がった霧
ほのかに明るく、どこか非現実的な風景のなかに
自分の足で、道をつくるような

結局、貴船まで
山のなかを、えんえん、歩いた
運動不足が祟って、すぐに息が切れてしまったけれど
やっぱり、歩くのは好きだ


時間、というのは
些細なあれこれに宿って、感じるものだ
たとえば、葉や空の色、光の強さと影の長さ、
雨のあとの匂い、空気の温度と手触り

森のなかには
いたるところに、時間がある
直視できないくらいに
時間しかない、と、思うこともある


歩きながら、そんなことを考えていたら
友だちが、すこし似たことを話して
去年の秋は印象に残ってることは色々あるけど
外じゃなかったから、記憶に色がない、などというので
なんだか、どきりとしてしまった

相変わらず
すっと刺さって抜けないような言葉を発するひとだ



帰りのローカル電車
車内の電気が消え、紅葉が浮かびあがる

紅葉、そのものもだけれど
人びとの影と、声が、なにより美しかった


もしかしたら、わたし達は木々を見ることに
そんなに懸命にならなくても、いいのかもしれないけれど

それでも、あちこちにこうして溢れる
季節や美しいものに対しての気持ち、無邪気さを
いいものだと、つくづく、思う