思いのほか暑い、午後
木陰で、ふと目線を上げると
すっかり秋の色

この数年、この季節を日本で過ごしていなかったので
金木犀の香りがのった風が、なつかしい


たしか、小学校三年生か、四年生の頃
金木犀の香水を、作ろうとしたことがある
なにかの物語で、花の香水の作りかたを読んで、
自分でもやってみようとしたのだった

大好きな金木犀の小さな花を、袋に摘んで持ち帰り
沸かしたお湯に、入れてみた
一瞬たちのぼった香りは、花よりも青く
にせものらしく舞って、すぐに散っていってしまった

こういう、せつない出来事こそ
長く、忘れずにいるものだ


そんなことを、思って
あたりを見回し、橙色の小さな花を探したけれど
きょうは結局、見つけることができなかった



明日からは、東京
父の代理での用事があるからで
まだ身体も全快とはいかないので、めずらしく緊張している
住んでいたこともある街なのに

東京にも、
もう秋は来ているんだろうか