やり場のない気持ちを持て余していた、深夜
Moddiの新しいアルバムが出ていることに、気がつく

さっそくかけてみて、すぐに、歌詞に違和感を覚えた
けれど、そのまま動くこともできず
時折、涙をこらえながら、数曲をそのまま聴いた




“WHAT MAKES A SONG BANNED?
Through history, thousands of musicians have faced censorship,
persecution and violent suppression.
Often, their stories remain untold.
Who were they? Who are they? And what can we learn from their stories?”

Unsongs: Forbidden Stories


これが、このUnsongsというアルバムの、端的なコンセプトだ
つまり、どこかの国で禁じられた歌ばかりを集めた、
カヴァー・アルバムということ


わたしは、強い思いの乗った音楽が、あまり好きじゃない
耳から引っぱられて、
ずるずると戻れないところまで連れていかれそうだからだ
その熱量が、怖い

逆に言えば、その力を信じているということなのだろうけれど
わたしにとって、音楽は、寄り添ってくれる友人でもあり
背景になってくれるだけの、エキストラでもあり
簡単についていってはいけない、得体の知れない人でもある
だから、出会うときは、警戒心を大事にしているのだった


だけど、それでも
Moddiの繊細な声が、音にのせて、なぞっていく言葉には
つい耳を傾けてしまう、不思議な軽やかさがあった
なにかに立ち向かおうとした誰かの、重たい箱をそっと開けて、
煙のようななにかを、静かに紡ぎ直すような
温度の低さが、心地よい

カヴァーというのは、きっと、どうオリジナルに向かっても
ある程度、無責任なものなんだろう
でも、そうして薄まることで、
曲が生きながらえる、ということもあるのかもしれない



やっぱり、わたしは
このアルバムを頻繁に聴くことは、しないと思う
扱っているテーマが、相当難しいものであることは明白で、
かつ、彼の実直さが伝わる作品になっているだけに
意図、意志を、深いところまで下りていって汲んでしまうと
音楽とわたし自身の関係の一角が、崩れるからだ

それでも、今夜わたしが聴いたものは、美しかったし
誰かの思いが解放されて、のぼっていくところを見た、という
たしかな感覚があった




それはそれとして、
歴史の授業を受けるような心持ちで、特設ページは隅々まで読んだ
とても、丁寧に作られている

すこしだけ離れたところまで、来てみた気もするけれど
こういう土曜の夜も、悪くない