最寄りのスーパーやカフェから、歩いて45分
家へ、帰る


舗装された道路もあるけれど
わたしは、細い細い道を縫って帰るのが好きだ
どうせ同じだけ歩くのなら、
車道のきわよりも、土のうえを歩くのがいい



駅前から離れ、馬のいる家の前をいくつか通ったりして
開けたあぜ道を歩いていると、線路にぶつかる
踏切どころか、人の歩く場所さえも作られていないので
線路をそのままひょいひょいと超えて、森へ入っていく

そこから25分は、森のなか
家も、ほとんど見当たらない
背の高い木々のなかを、ときどき、ぽっかりと空いた場所を
倒木を超えたりしながら、歩く
ずっと上り坂なので、息があがる

森に入ってからは、イヤホンは仕舞ってしまうことにしている
鳥の声や、木の葉が擦れる音、
そういうざわめきを聞いていたいからだ




いつも、線路のところへ来ると、イヤホンを外す
電車の音をきちんと聞かないと、危ない
それなりに遠くに聞こえても、電車はあっという間にやってくる



そういえば、雪でも降ったら、この辺りは歩けなくなるんだろうか
舗装された道路には、除雪車が来てくれるんだろうけれど


見えるもの、聞こえるものを
ひとつひとつ、染み込ませて

そうして静かに歩く、この時間を
いまは、大事にしたいと思っている