あちこち歩き回って
それでも収穫のなかった一日の、終わり
好きな本屋に、立ち寄った

新刊、詩集、エッセイ、純文学
いつものように、棚に目を通す
また、読んでみたい本が増えている

この書店に来ると
自分の代謝を、感じられる
ここで、新しい思いを抱くことができるかぎり
わたしは、たぶん健康なんだろう



外国語の本を読むことで得られるいいことって何ですか?と
昨日、食事をしていたとき、元上司に訊かれた
新鮮だったというか、かなり面食らったし、
そうして驚いた自分に、驚いた

外国語で本を読みたい、という気持ちは
わたしにとっては、子どもの頃からあったものだ
だから、きちんと英語を勉強しはじめて、すぐに
英語で読書を始めたのは、自然なことだったし
フィンランド語を始めたのも、スウェーデン語を始めたのも
本を読めなかったことが、とても悲しかったからだった

わたしには、なにかを読みたい、というのも
それから、外国語でそれをやってみたい、というのも
当たり前のこととしてずっと肯定してきた、欲求で
なにが得られるか、メリットは何か、ということは
ほんとうに考えたこともなかったのだと、知った

元上司らしい言い回しと、質問
問いを投げてくれて、ありがたい


美しさか、存在の価値か
どこまでも広がる世界への、期待か

そのどれか、あるいは全部を、わたしは信じているとして
それを誰かに説明したり
誰かと分け合ったりすることは、できるのかしら

本屋を出て、夕暮れの街を歩きながら
そういう、フワッとしたことを考えたりして



一昨年、この街で過ごした
どこまでも内向きな二ヶ月を、思いだした
去年の今ごろ、やっぱり考えごとをしながら
日が沈もうとするセーデルマルムを散歩したことも

冬のストックホルムでの時間は
なんでか、いつも、そんな風で
でも、これはこれでわるくないと、思うのだ