夏が終わる前にと
パヴェーゼ『美しい夏』を、今年も

最初にこれを読んだのは、マドリード
挟んでいる、ソフィア王妃芸術センターの半券に
なつかしさを覚える

印字された日付は、2014/6/21
遠くも近くもない、あの夏の日


一昨日、暮れかけた琵琶湖のほとりを車で走っているとき
唐突に、田んぼのあいだに、焚き火が現れた
ゆるやかにつづく黒い稜線のうえに、くっきりと月が浮かんでいて
まるで一枚の絵のようだった

月と篝火っていう小説があってね、パヴェーゼの、と
思わず、口に出していた
その光景は、小説とはまた違うものだったけれど、それでも

『月と篝火』を
そのまえに『美しい夏』を、今年も読みたいな、と
思った、瞬間



パヴェーゼは、思い入れのある作家だ
特別多くの作品を残したわけでも、訳されているわけでもなくて
それでも、今あるものを、繰り返し読んでしまう

ふとしたときに、目の前に印象が立ち上がってきて、
読むまで、気がすまない
わたしにとって数少ない、そういう作家

パヴェーゼの小説を読んでいると
決定的に横たわる、儚さと虚しさに
心を吸われるような感覚がある
ぴったりとくっついて離れない、かなしさ


わたしは、イタリアへ行ったことがない
だから、どれくらいその機微が理解できているかはわからないけれど
それでも、パヴェーゼも、ブッツァーティも、
カルヴィーノも、タブッキも、ギンズブルグも好きだ
須賀敦子の影響が、もちろん大きいわけだけど)

いつか、彼らの描いた風景を追う旅にでかけたい
きっと、いつか



さて、それはそうと
現実のわたしは明後日から、イタリアではなくノルウェーです
オスロの予想最高気温は18度、
さすがに、風邪をひきそうで怖い

もちろん仕事で行くので、圧迫感もあるけれど
オスロに中二日というのは、四度目の訪問にして最長(!)で
楽しみでも、ある

まずは明日、仕事をかたづけて
さて、また新しいものをさがす、旅へ