先生の自宅に、招いてもらった
湖のほとりの小さな村の、小さな家


こう言ってはなんだけれど、
先生の家は、スウェーデンの一般的な家に比べると、とても狭かった
一階には、ダイニングキッチンと、4畳半もないリビング
二階は、小さな部屋が4つあり、そのうち2つが子供部屋
階段横のちょっとしたスペースに机が置かれ、仕事場所になっていた

けれど、とても居心地がよくて、無駄がない
先生が、わたしにはちょうどいい大きさの家なの、と言っていたけれど
本当にそうなんだろう

やさしい色の壁紙
使いやすそうに整えられた、古いオーブンのあるキッチン
リビングの窓からは、花をつけたリンゴの木が見え
庭には、作業をするための小屋がたっていた

きびしくてやさしい、先生らしい
芯がある、血のかよった家



お茶とお菓子をいただいたあと、
皆で、近所にある古着屋へ連れていってもらった
これまで見たなかで、いちばん大きく、
いちばん美しい古着屋だった

もう明々後日出発なのに、とさんざん悩んで
結局、70年代のワンピースを一枚買った
どうにもこうにも、柄ものに弱い


これまでは、自分が洋服が好きだなんて、思わなかった
理由は単純で、わたしよりたとえば妹のほうが、
ずっと服を愛していると思うからだ
そして、わたしはいわゆるモードに、ぜんぜん興味がない

だけど、ここでの友だちに、着ているものを褒めてもらったり
服が好きなんだね、と言われる機会が、とても多くて
たしかにわたしは服が好きかもしれない、と思うようになった
そして、ここへ来てから
以前よりずっと自由に、なにかを着るようになった気がする
楽しく、着たいものを、そしてできれば似合うものを、と

裾の長いワンピースは、腰のベルトで適当にとめて
紳士物のセーターは、袖をぐるぐる折り返して着る
しっくりこない服は自分で直してしまう

そういうのもいいな、と思えるようになったのは
ここで出会った人たちの、おかげかも



ものの価値って、いったいなんだろうな、と
もう何百回も考えたことを、また、考えた

自分が大切にしたいことを
この場所を去っても、忘れずにいたい